Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

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ダンジーブログ

ピロリ

2006-01-27 | 想い・雑感

 昨年のノーベル医学生理学賞は、胃炎や胃かいようの原因となる「ピロリ菌」の2人の発見者に授与されました。

 それより以前にも微生物が胃内いる可能性を報告したものはあったようですが、胃という強酸の環境下に微生物は存在しないとしたいわゆる権威者の言で、「胃の中には細菌はいない」ということが通説となっていました。 この2人は苦労してこの細菌培養に成功するとともに、実際にこの細菌が病気を引き起こすかどうか自分で飲んで実証したという逸話があります(飲んだのは若い方)。

 日本でも、1980年代後半にはピロリ菌を研究する人が随分出てきました。そして胃炎や胃潰瘍の原因となるピロリ菌が、さらには胃癌発症にも関与しうることを見いだしてきた中心は日本人研究者たちのようです。

 記憶は定かでないのですが、以前サンプラザ中野が「ピロリ菌のうた」を作っていたと思います。どんな歌かは覚えていませんが、消化器疾患に関わる医師以外はほとんどその名前を知らない時代に、どうしてサンプラザ中野さんは知り得たのでしょうか?それにしてもどんな歌だったのかなあ?

 ちなみに、ピロリ菌の学名はヘリコバクター・ピロリ。胃の出口側をpylorus(幽門)と言いますが、名前はこの菌がその幽門で見つかったことに由来しているそうです。この細菌は、胃でタンパク質が分解されてできる尿素を酵素で分解してアンモニアを作り出すため、強い酸性の胃液の中でも自分の周りを中和し身を守っているとのこと。このアンモニアによる刺激や、最近の出す毒素が発ガンの引き金と言われています。さらにこの毒素が遺伝子にも影響しうるとの研究から、胃以外の臓器にも影響しうる可能性も指摘されており、今後の研究が待たれます。

 日本はピロリ菌に感染している人が半数、70歳以降では7割とも言われています。日本は胃癌大国ですが、ピロリ菌の感染を押さえることが出来れば、かなりの胃癌発生を抑制できるのではないかと期待されています。完全に除菌できれば、発生は1/3以下にまで抑えられるのではとの報告もあります。生涯感染することがなければ、さらに発生は抑えられるのかもしれません。