Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

朝食

2006-02-18 | 想い・雑感
 長い人類の歴史の中では、現代のように食事を定期的に摂取できることの方が珍しいと思われ、体は飢餓に対応する仕組みが発達している。きちっと規則正しく食事を取らなければならないという人もいるけれど、そうするとどう良いのか、またその良さはどのように証明されたのかわからない面もある。

 特に朝食の重要性を解くときに、脳のエネルギー源がブドウ糖だから、朝は絶対に糖分を取るべきだと述べる人がいる。正しいような気もするのだが、血液中の血糖は空腹時でも80~100mg/dlに保たれているのだから、脳にもエネルギー源は供給されるはずである。

 一方朝食抜きダイエットを勧める人もいる。

 本当のところ、どうするのが最も望ましいのか、よく分からない。3食食べる人の方が、1食の人より長命であるなどと言う統計は、見たことがない。

 但し、肝硬変などで肝機能が弱っている人は、肝臓のエネルギー源がすぐに枯渇しやすいので、3食プラス夜食(炭水化物)というように、こまめに給油が必要らしい。

 朝食に限らず、栄養に関することはなかなか難しい。ある特定の栄養素の重要性が話題になると、やたらのその栄養素を取ろうとする人、それを売ろうとする人がわっと盛り上がる。栄養などというものは、3大栄養素をまずバランス良く取り、ビタミン、ミネラルを摂取し、線維を取り入れるというのが基本である。必要な栄養素を万遍なく取ることが必要なのだ。

 商業主義に踊らされて、特定の栄養素のみにこだわるのは愚かしい。役に立たないばかりか、かえって体を害することもあるようだ。

「電気用品安全法」…誰の安全?

2006-02-18 | 想い・雑感
 電気用品安全法なる法律が5年ほど前に決められ、今年の4月から施行になるとの報道を昨日聞きました。聞いている限り、メリットよりデメリットの方が遙かに多い、悪法としか考えられないのですがねえ。

 世の中の隅々まで電気用品が行き渡っている現代社会で、非常に影響が大きいと思われるこのような法律が、ほとんど誰も知らないままに施行されて良いのでしょうか。医療機器にも多くの電気機器があり、かなりの影響を受けるはずです。

 官僚の言として、5年間の周知期間を置き、20万部のパンフレットを配布してきたというのを紹介していました。1億数千万人の人口を有する国で、20万部ぽっきりのパンフレットを配布したからといって、周知したとは言えないことは誰の目にも明らかだと思うのですが、高級官僚の目からするとそう見えないのでしょうか。

 また法律化されたと言うことは、立法府である国会を通過したと言うことになると思います。これに賛成した議員にも、きちっと説明をして頂きたいものです。
 
 国民の負託を受けているというのは、議員にすべてお任せといっているわけではありません。医療の現場では、インフォームド・コンセントということが非常に重要になっています。きちっと説明を受け、理解し、治療方針に同意した上で、実際の治療に進むというわけです。政治もそうあって欲しいですよね。

 医療現場の、時間的余裕の無さを全く無視し、説明の時間を医療と認めるような保険体系を作らないまま、現場に説明ばかりを求める、厚生労働省や司法関係者の方々は、当然電気安全法のような法律の制定の仕方や施行過程には怒りをもって反対しますよね。

胃管

2006-02-18 | 医療・病気・いのち
 医療の分野では、以前ほどではないかもしれないが、経験則が幅をきかすことが多い。手術のやり方などは細かなところで、大学ごと、医局ごとの流儀なるものが存在した。情報社会の今では、その違いは少なくなってきたと思われ、標準化されてきたのは喜ばしいことだと思う。

 胃切除術の直後は、鼻を通して胃の中まで細いチューブが入れられている。目的は、手術後に吻合部や残った胃からの後出血が起こっていないかを確認すること、胃の中に溜まる胃液などを外に出し、吻合部に負担をかけないこと、術後の急性胃拡張を防ぐことなどである。

 このチューブを1週間近く入れておくことは以前は普通のことであった。しかし20年ほど前にお世話になった外科部長は、そんなに長く入れておく意義なしとの報告を見るや、翌日には抜く方針とした。駆け出しの私はそれが普通なのかと、他の病院に移ったとき、翌日に管を抜いていると見咎められたことがある。現在では、ほとんどの外科医が翌日には管を抜いていると思う。

 ただし、術後の栄養補給目的で入れている場合もある。その場合は、より細いチューブを入れ、その管からの栄養補給が不要となるまで入れておく。

ひと

2006-02-18 | 想い・雑感
 外科医として責任を持って仕事を行うには、手術の技量を磨くことは当然として、手術前、手術後の診断、管理に関しての知識と経験が求められる。

 例えば胃癌の手術を受ける方がおられれば、呼吸器系、循環器系、内分泌系、神経系など、胃以外に何らかの問題を抱えている方が多い。手術前にそのような異常の管理を行うとともに、胃癌自体の進行度もなるべく正確に診断をつけておく必要がある。

 手術の後には、様々な合併症が起こりうる。手術に伴う出血も少量で、縫合不全が無くても、肺炎や不整脈その他多くの合併症が起きる可能性がある。その合併症を極力予防するとともに、もし起こってもなるべく早期に診断し直ちに治療へ移行する必要がある。

 退院後も、手術に伴う障害を少しでも少なくするように、また再発がないかなどを定期的に見ていく必要がある。

 一人の方の治療を完遂するには、多くのことを考える必要がある。

 そのような知識と経験を積み重ねようと、いろいろ工夫をしてきた。でもそれでも良い医師にはなれない。治療を受ける「人」を、「心」見つめ無ければならない。道は遠いなぁ。