黒松内といえば天然記念物にも指定されている歌才ブナ林が有名ですが、本数は少なくとも、歌才以外にもブナは点在しています。
ニシン漁や戦争の影響でたくさんのブナが伐採されてしまいましたが、その危機から逃れ、今もなお力強く生きているブナの中で、No.1の大きさを誇るものが添別にあり、そしてNo.3が丸山地区に。
そしてNo.2が今回私たちが見てきた角十地区にあるブナの木なのです。
このブナを見つけたときにはとても感動的なドラマがあったそう。
これは今から約10年近く前のはなし。
角十地区に住む、あるおじちゃんが「あそこの山には巨大なブナがあるんだ」
そのような話をしていたそうです。
そしてその話を聞いた前教育長のUさんが立ち上がり、ブナセンターの学芸員Sさんと一緒に巨大ブナを探しに行きました。
もしかしたらそのおじいちゃんの話は「あるわけないよ」と受け流された可能性もあるわけです。しかしUさんはその話を信じてブナを探しに行きました!
おじいちゃんが言っていたヒントは
「そのブナの近くには大きな岩が見える」
といったものでした。
これだけを頼りに山を歩いたそうです。
そして、歩き回った結果、やっとの思いで巨大ブナを見つけることだできたのです!
「本当に巨大なブナの木はあったぞ!」とおじいちゃんに報告できました。
こんなように、とても簡単に文章にまとめてしまいましたが、このような感動的な実話がありました。
話は戻り、、、
今回はそのようなブナを、角十地区の地域の方にも見てもらいたいとUさんが企画し、ツアーを行うことになりました。
当日は地域から6名参加しました。
まずは山歩きには欠かせないかんじきを装着。
もちろん使用するのは渋谷式かんじきです。
渋谷式かんじきとは、故 渋谷吉尾さんという方が作ったものです。この方は「生まれ故郷である黒松内町のために何か恩返しをしたい」と、かんじきを作って町の人たちに配ることを始め、それを生涯やり続けました。亡くなるまでに作ったかんじきは約4000個といわれています。
→公益社団法人 社会貢献支援財団
https://www.fesco.or.jp/winner/h12/09.php
かんじきは装着するとこのようになります。
今やたくさんのアウトドアメーカーからスノーシューが発売されていますが、渋谷式かんじきは軽くて後ずさりもしやすいなど、スノーシューに劣らない使い勝手の良さがあります!
皆さんこれを装着し、さっそくNo.2のブナに向かって歩き始めます。
ツアーガイドをしてくださったのはブナセンターのSさんで、歩きながら植物の話をしてくださいました。
シカの食痕を観察したり、
これはニワトコの冬芽だそうで、参加者の方から
「体に良いからうちのおばちゃんがよくお茶にして飲んでいたんだよ」
という話がありました。
地域の方からこのような話が聞けるのはとても興味深いです!
現代ではこういった昔の暮らしに触れる機会はなかなかないので、私もとてもわくわくしながら聞いていました。
行きはなだらかな登りが続きます。
冬の山登りに慣れていない方もいたので、休憩を取りつつ、少しづつブナに向かって歩いていきます。
そして2時間ほど登り進めたころでしょうか、
木と木の間から、枝の密度の濃い木が見えてきました
「もしや・・・?」
そう、やっとたどり着きました巨木ブナ!
枯れている枝はほとんどなく、とても生命力を感じる枝ぶりでした!
女性3人で手をつないで幹を囲んでもまだ囲み切れないくらいの太さです!
樹齢何年なのかがとても気になりますね。
「角十地区をこれからも見守っていてください」
そのような願いを込めながら全員でブナの木とご挨拶を交わしました。
なんだか目には見えない不思議な力で気持ちが引き締まるような感じがします!
普段なかなか見に行くことのできないブナなので、その場でゆっくり時間を過ごしました。
そして帰路につきます。帰りは尻滑りができるところを探しながら歩き、
全員で尻滑りをしながら歩きました!
「みんな子どもにかえったみたいだったね」
と、言いながら、その表情はとってもとっても楽しそうでした!
こうして今回のブナツアーは終了。
改めて、地元の方たちが、地元にあるブナに誇りを持ち、会いに行くということはとても素晴らしいことだなと思います。
Uさん曰く、角十のブナを一目見たいという地域の方はもっといるのだけれど、「自分は体力に自信がないので迷惑はかけられない」と遠慮している方もいるのだそう。
なので、何度もこの取り組みをして、「私も行けたんだから〇〇さんも行けるよ」という会話が地域中に広まればいいなと考えて、これからも定期的にブナに会いにいくイベントを続けていくそうです。
自分たちの住む地域を歩いていると、「昔はよく○○したものだよ」「家にこんな機械があったんだよ、今も倉庫に眠ってるけどね」といった話題が自然と挙がってきます。
こういう会話は暮らしが変容してきている今となってはとても貴重で、このようなことを話せる機会、聞く機会を協力隊の私としても増やしていきたいと思いました。
地域おこし協力隊 まりっぺ こと 阿部真理
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