ヨチヨチ孫に母はため息を
1歳になる息子がヨチヨチ歩きはじめた。これには家族みんなが「ばんざ~い!」とやったが、七十五歳になる私の母は、可愛い孫に目を細め、抱きしめながらも、「フーッ!」と大きなため息をついた。
上の7歳と6歳の子どもの面倒を一切見てくれた母だが、今回は寄る年波に勝てなくて、たまにしかタッチできなかったのが悔しかったのかも知れない。ポソッとつぶやいた母。
「かわりに、わしの足が動かんようになったわい」
顔は笑っていたが、実感がこもって寂しそうだ。それでも翌日から、何回となく顔を見せて、「天気がええさかい、外にも連れて行ってやろうかい。子どもは外で遊ばせるんが一番いいんじゃ」と、連れだして、杖を頼りにヨタヨタと一緒に歩いてくれる。
私ら子どもとその孫たちが、この母の年を食ってしまったのだと、感慨しきりで、母を見つめた。
(讀賣・1990年2月26日掲載)
1歳になる息子がヨチヨチ歩きはじめた。これには家族みんなが「ばんざ~い!」とやったが、七十五歳になる私の母は、可愛い孫に目を細め、抱きしめながらも、「フーッ!」と大きなため息をついた。
上の7歳と6歳の子どもの面倒を一切見てくれた母だが、今回は寄る年波に勝てなくて、たまにしかタッチできなかったのが悔しかったのかも知れない。ポソッとつぶやいた母。
「かわりに、わしの足が動かんようになったわい」
顔は笑っていたが、実感がこもって寂しそうだ。それでも翌日から、何回となく顔を見せて、「天気がええさかい、外にも連れて行ってやろうかい。子どもは外で遊ばせるんが一番いいんじゃ」と、連れだして、杖を頼りにヨタヨタと一緒に歩いてくれる。
私ら子どもとその孫たちが、この母の年を食ってしまったのだと、感慨しきりで、母を見つめた。
(讀賣・1990年2月26日掲載)
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