明け方の贈り物
夕方から明け方にかけての深夜勤務についてから、子どもたちとすれ違いの生活が始まった。出勤するときには子どもたちは遊びに出ているか、まだ学校だったりするし、帰宅したときは夢の中なのだからしかたない。
その日も明け方、眠い目をこすりながら帰宅した私が玄関を開けると、なんと玄関先に子ども三人と妻が揃ってお出迎えである。
「お帰りなさい!」
「お仕事ご苦労さま、おとうさん」
正直驚いた。それにくすぐったい。
「なんだい、お前ら、おどかすなよ。それにまだ眠たいやろが」
照れ隠しに質問の連発だ。
「お風呂、いい湯加減に沸かしといたから、すぐ入ったらええ」
と小六の長男が進める。
「お前、沸かしてくれたんか?」
「うん」
さっそく風呂に入った。本当にいい湯加減で気分はもう最高。
「はよ、上がって来てや」
妻がそっと風呂場をのぞいて言った。
「どないしたんや?」
さっきから気になってしかたがないので、今朝の家族の対応の理由をたずねた。
「もう、きのうはあなたの誕生日やんか。そやから、子どもらがお父さんにプレゼントするんや言うて、張り切ってはよ起きて待ってたんやで、みんな」
そうだ。きのうは私の四十八回目の誕生日だった。すっかり忘れていた、自分のことなのに。
「奈津実がちゃんと覚えてたんや」
中一の長女が覚えていてくれたとは。しかもみんな眠いのを我慢して起きて帰りを迎えてくれたなんて、もう最高に観劇だ。
そして、子どもたち三人が相談して考えたと言うバースディ・プレゼントは、アイマスクと耳栓。昼の明るいときに眠らなければならない、私の苦労をよく知っていたのだ。
その日は手製のボール紙を黒く塗りつぶしたアイマスクと、綿を丸めた耳栓を使ってグッスリと眠った。幸せいっぱいの暗闇の中で、心地よいイビキをかいたのである。
(母の友1996年12月号掲載)
夕方から明け方にかけての深夜勤務についてから、子どもたちとすれ違いの生活が始まった。出勤するときには子どもたちは遊びに出ているか、まだ学校だったりするし、帰宅したときは夢の中なのだからしかたない。
その日も明け方、眠い目をこすりながら帰宅した私が玄関を開けると、なんと玄関先に子ども三人と妻が揃ってお出迎えである。
「お帰りなさい!」
「お仕事ご苦労さま、おとうさん」
正直驚いた。それにくすぐったい。
「なんだい、お前ら、おどかすなよ。それにまだ眠たいやろが」
照れ隠しに質問の連発だ。
「お風呂、いい湯加減に沸かしといたから、すぐ入ったらええ」
と小六の長男が進める。
「お前、沸かしてくれたんか?」
「うん」
さっそく風呂に入った。本当にいい湯加減で気分はもう最高。
「はよ、上がって来てや」
妻がそっと風呂場をのぞいて言った。
「どないしたんや?」
さっきから気になってしかたがないので、今朝の家族の対応の理由をたずねた。
「もう、きのうはあなたの誕生日やんか。そやから、子どもらがお父さんにプレゼントするんや言うて、張り切ってはよ起きて待ってたんやで、みんな」
そうだ。きのうは私の四十八回目の誕生日だった。すっかり忘れていた、自分のことなのに。
「奈津実がちゃんと覚えてたんや」
中一の長女が覚えていてくれたとは。しかもみんな眠いのを我慢して起きて帰りを迎えてくれたなんて、もう最高に観劇だ。
そして、子どもたち三人が相談して考えたと言うバースディ・プレゼントは、アイマスクと耳栓。昼の明るいときに眠らなければならない、私の苦労をよく知っていたのだ。
その日は手製のボール紙を黒く塗りつぶしたアイマスクと、綿を丸めた耳栓を使ってグッスリと眠った。幸せいっぱいの暗闇の中で、心地よいイビキをかいたのである。
(母の友1996年12月号掲載)
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