「1、2、3!」リューゴの声とお父さんの声がぴったりとかぶさりました。思い切り押すと、リューゴは天を仰ぎました。
青い空。日差しを遮る木々の枝が来い影になってそよいでいます。
(そよいでる?)
そうです。『ゆるぎ岩』のてんっぺんを見ると、陰になった枝の動きと一緒になって待っています。
おや?どうやら風がでてきたのか、枝の揺れが少し激しくなりました。いや、違います。風で枝が揺れているにしてはちょっぴり変です。木の枝は青い空に描かれて動いていないのに気づきました。すると……?
「リューゴ、見てみろよ。揺れてるぞ!揺れているんだ、『ゆるぎ岩』が……!」
「うん、揺れてる。『ゆるぎ岩』が揺れているよ、お父さん」
リューゴはもう大感激です。嬉しくて目が潤みます。目の前がぼやけて、『ゆるぎ岩』のてっぺんがよく見えなくなりました。
「おう!リューゴ、お前、いまお前ひとりで『ゆるぎ岩』を揺すっているじゃないか。すごいぞ!」
「え?」
リューゴはお父さんの声にびっくりしてキョロキョロ見回しました。でも、お父さんは消えてしまいました。
「お父さん……!」
心細くなって声もちいさくなりました。
「リューゴ、お前のすぐ後ろにいるぞ。お前の腰を支えているんだ」
そうです。誰かがしっかりとリューゴの腰を支えてくれています。それはお父さんだったんです。それじゃあ、いま『ゆるぎ岩』を揺らせているのは本当にリューゴひとりの力なのです。でも、でも……慌ててリューゴは上を見上げて確かめました。
『ゆるぎ岩』はちゃんと揺れていました。夢でもまぼろしでもありません。リューゴはみるみる嬉しさに包まれました。
「えい、えい、えーい!」
リューゴは調子に乗って何度も何度も押し続けました。
お父さんはゆっくりと急な坂になった山道を歩いて下りました。山道はのぼるより下りる方が大変です。それに、お父さんの大きい背中には、おんぶされたリューゴがスヤスヤと眠っています。起こさないように、危なくないようにと、自然に慎重な足取りになります。
「おい、リューゴ」
ソーッと名前を呼んでみましたが返事はありません。背中越しに可愛いイビキが伝わってきます。
(ふふふ。よっぽど疲れちゃったんだな)
『ゆるぎ岩』が揺れたのが、よほど嬉しかったのでしよう。リューゴはクタクタになるまで懸命に岩肌を押し続けたのです。山を下りはじめると眠気に襲われてフラフラとし始めたので、お父さんはおんぶしてやりました。
「……お父さん……」
「ん?」
「……ゆれたよ、ほら揺れたよ……」
リューゴの寝言でした。
「…ぼく…ぼく、いい子だね。……」
「ああ、最高にいい子だよ。『ゆるぎ岩』だって認めて句たろう、リューゴはいい子だって」
お父さんは顔を輝かせて、グィと空を見上げました。爽やかな風が優しくお父さんの顔を撫でて流れていきます。 (完結)
青い空。日差しを遮る木々の枝が来い影になってそよいでいます。
(そよいでる?)
そうです。『ゆるぎ岩』のてんっぺんを見ると、陰になった枝の動きと一緒になって待っています。
おや?どうやら風がでてきたのか、枝の揺れが少し激しくなりました。いや、違います。風で枝が揺れているにしてはちょっぴり変です。木の枝は青い空に描かれて動いていないのに気づきました。すると……?
「リューゴ、見てみろよ。揺れてるぞ!揺れているんだ、『ゆるぎ岩』が……!」
「うん、揺れてる。『ゆるぎ岩』が揺れているよ、お父さん」
リューゴはもう大感激です。嬉しくて目が潤みます。目の前がぼやけて、『ゆるぎ岩』のてっぺんがよく見えなくなりました。
「おう!リューゴ、お前、いまお前ひとりで『ゆるぎ岩』を揺すっているじゃないか。すごいぞ!」
「え?」
リューゴはお父さんの声にびっくりしてキョロキョロ見回しました。でも、お父さんは消えてしまいました。
「お父さん……!」
心細くなって声もちいさくなりました。
「リューゴ、お前のすぐ後ろにいるぞ。お前の腰を支えているんだ」
そうです。誰かがしっかりとリューゴの腰を支えてくれています。それはお父さんだったんです。それじゃあ、いま『ゆるぎ岩』を揺らせているのは本当にリューゴひとりの力なのです。でも、でも……慌ててリューゴは上を見上げて確かめました。
『ゆるぎ岩』はちゃんと揺れていました。夢でもまぼろしでもありません。リューゴはみるみる嬉しさに包まれました。
「えい、えい、えーい!」
リューゴは調子に乗って何度も何度も押し続けました。
お父さんはゆっくりと急な坂になった山道を歩いて下りました。山道はのぼるより下りる方が大変です。それに、お父さんの大きい背中には、おんぶされたリューゴがスヤスヤと眠っています。起こさないように、危なくないようにと、自然に慎重な足取りになります。
「おい、リューゴ」
ソーッと名前を呼んでみましたが返事はありません。背中越しに可愛いイビキが伝わってきます。
(ふふふ。よっぽど疲れちゃったんだな)
『ゆるぎ岩』が揺れたのが、よほど嬉しかったのでしよう。リューゴはクタクタになるまで懸命に岩肌を押し続けたのです。山を下りはじめると眠気に襲われてフラフラとし始めたので、お父さんはおんぶしてやりました。
「……お父さん……」
「ん?」
「……ゆれたよ、ほら揺れたよ……」
リューゴの寝言でした。
「…ぼく…ぼく、いい子だね。……」
「ああ、最高にいい子だよ。『ゆるぎ岩』だって認めて句たろう、リューゴはいい子だって」
お父さんは顔を輝かせて、グィと空を見上げました。爽やかな風が優しくお父さんの顔を撫でて流れていきます。 (完結)
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