HIBARIピアノ教室レッスン日記♪

ピアノのレッスン日記、その他ヒバリ先生が見聞きした音楽関係・芸術関係etcの日記。

ブルクミュラー「進歩」は2匹の子猫・ヒバリの思い出

2010年01月27日 | ブルクミュラー
Y子ちゃん(小4):
ブルクミュラーの「進歩」が、大分上手になりました。

ブルクミュラー曲集の例にもれず、このタイトルも わかったようなわからないような。
曲に合ってるようなそうでもないような。

両手3度違い(オクターブの開きがあるので、厳密には10度だけど)で、音階がダダダーッと駆け上がります。
この「進歩」、ブルクミュラーの中では、子どもの不人気上位にランクインしてる曲らしいです。
私も好きじゃなかったな・・・
音階練習全開で、力いっぱいで。かわいくも楽しくもない、まじめ一直線の、いかにも「練習曲ですっ」といったオーラに満ち満ちた体育会系の曲、という印象でした。
タイトルからして「進歩」だなんて、不まじめだった私は、それだけで「つまらん」と思っていたものです。

そういえば、この「進歩」という曲で、いきなり思い出したことがあります。

私がこの曲を練習していたのは小学校低学年の頃だったのですが、当時 近所にT子ちゃんという同い年の子がいて、同じピアノの先生に通っていました。
不思議なことに、私はなぜか、ブルクミュラーの「進歩」というと、反射的にT子ちゃんを思い出してしまうのです。大人になってもずーっと。

自分でもなぜだかわかりませんが、多分、彼女がとてもまじめながんばり屋さんだったので、この「進歩」という曲が 彼女を連想させたのかな・・・と、今では思ったりします。
このワケわかんなくてつまんない「進歩」をさー、よくまじめに、練習できるよねー。
・・・チビ時代の私は そんな風に、思っていたんでしょう。
「T子ちゃんは毎日、勉強もピアノもきちんと1時間ずつやってるそうよ。その上親の言うことをよく聞き、お手伝いをよくし・・・」と よく親から引き合いに出されていた私は、「けっ、はた迷惑なやつだブー」と 何の罪もないT子ちゃんを 内心ちょっぴりウザく思っていました。
親は重ねて言いました。
「T子ちゃんはね、ピアノのレッスンに行って 自信があった曲が合格しなかったら、家に帰っても玄関を入らず、ドアの外でくやし泣きしてるんだって」 
ちぇっ、重ね重ね迷惑な行動をブー 大体、生徒のくせに自分で合格レベル決めていくなんてゴーマンじゃん・・・と私は思いました。
もちろん低学年ですから、「傲慢」などという単語が浮かんだわけではないのですが、子ども心にも「力まかせにバリバリ弾きゃいいってもんじゃない」ということが言いたかったのさ。(ほんとだよ)

今 大人になって(先生になって)、あの頃の ナマケモノで身勝手な私の気持ちを 百歩譲って代弁するとすれば(『ドロボウにも三分の理』ですから)、
「ピアノは『根性論』で解決するもんじゃない」ということだったと思います。
「がむしゃらに訓練を繰り返し、速く・正確に・力強く指がまわっても、それは「音楽」とは別の次元のこと。もっと感動する曲なら、私だってがんばって弾いちゃうんだけどな~ ヘイヘイヘイ~」などと、都合のよいことを考えていました。

で、思い出話から一気に現在へとタイムスリップし、今はY子ちゃんが「進歩」を弾いています。
弾いてみると、そこまでつまらない曲でもないのです。スリリングなシンコペーションの掛け合いもあるし。
でも、タイトルが「進歩」じゃ、身もフタもない。色気もビジュアルもあったもんじゃない・・・

そのとき、私の頭に 電光のようにいきなりひらめいたビジュアルがありました。
「ねえ、これ、2匹の子猫が遊んでるみたいじゃない
私は Y子ちゃんに言いました。
「右手は、黒い子猫。そして左手は、白い子猫。 2匹は、ピッタリ並んで いっしょにオモチャをくわえたまま、すごい勢いでダダダダーッと駆け出していってるよ」
「それから、黒い子猫が白い子猫の方を向いて、『こんなことできるんだぞー』。そしたら、白い子猫も負けずに、『ボクだって!』と同じようにやってみせてる」
「それからまた、2匹いっしょにダダダダーッとダッシュ!」
「うん、そんな感じ!
Y子ちゃんも猫を飼っているので、子猫の遊び方も その情景も、よくわかります。
「前半の最後は、今度は2匹、逆の方向へ走って行った!」
「後半では、また、かわるがわるにどこかへ登ってみたり、それをまねしたり、珍しいものをさわってみたり、同じようにやってるね。それから、2匹の冒険は、もっとスリリングになって、代わる代わるのピッチも1小節交代→ついには半拍交代に。そしてまた、冒険に満足した子猫たちは、新しい遊びを見つけに、2匹いっしょにダダダーッと駆けだしていくのよ・・・ねっ、どう?この、子猫たちの冒険っていうの
「うん、よくわかる。」Y子ちゃんもニコニコして、いたずらな子猫たちの姿が 目の前に見えているかのようです。
「じゃ、これで仕上げてきてね!」
「はーい

よかったよかった。
突如として、この「黒い子猫と白い子猫」のイメージが 天使のように舞い降りてきてくれたおかげで、私はとうとう、世紀をこえてT子ちゃんとさよならできそうです。

T子ちゃんの名誉のために言っておきますが、彼女は決して「ぶりっこ」じゃなく、ひ弱な優等生、というわけでもなく、大らかで優しい、しっかりした女の子でしたよ。
今ごろ、どうしてるのかなあ・・・



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