Tくん(小1):
前回やった、バーナムの「さか立ちの練習」がお気に入りです。
「『さか立ち』、またやりたい!」
「いいよ。やってみて」
『さか立ち』というのは、音階を弾く予備練習の課題です。
3つの短いフレーズがセットになっていて、それぞれのフレーズには短い言葉が添えられています。
ドレミファソラー(もう少し!)
ドレミファソラシー(もう一息!)
ドレミファソラシドー(できた!)
最後まで弾くと、ハ長調の音階を弾くことが出来る仕掛けです。
ポイントは「ファ」の音を、前もってくぐらせた1の指で弾くこと。
Tくんがすごく楽しんで、何度も「さか立ち」を弾いているので、先生は言いました。
「ねえ、裏ワザ教えてあげようか?」
「うん!何?!」
「あのね、こうやって『ドレミファソラシドー』まで弾くでしょ。その時に、最後の『ド』を5の指で終わらせないで、そこでまた1の指でドを弾いちゃうの。そしたら、ほら、また振り出しになるじゃない?また、ドレミファソラシドってひけるでしょ。そうしたらまた、ドを1にする。そしたらどこまででも弾けて、ピアノの端から端までだって弾けるんだよ!」
「うわあ!」
Tくんの目が輝きました。そしてさっそく、音階を弾き始めます。
「こっちからこっちから!」
先生が、一番低いドの音(ピアノの左端)へ誘います。
「ドレミファソラシー、でドで終わらずにぃ、ドレミファソラシー、で終わらずにぃ…」と掛け声をかけながら応援して、ついに一番高いドまで到達したTくん、エベレスト登頂したみたいに大喜びです。
「やったー\(^o^)/」
「やったねー\(^o^)/」
これ、別に裏ワザでも何でもなく、ただ音階の指づかいを伝授しただけなんですけどね。
1年生のTくんにとっては、裏ワザを使って、ピアノの端から端まで弾いちゃった、というのはすごい偉業を成し遂げたような喜びだったようです。
まだまだ、長いスケールの音階を習う段階ではないのですが、せっかく興味を持ったので、この機会を利用しようと思い
「来週までに、こうやって端から端まで、スピードで弾けるようにやっておいでよ」ということにしました。
Tくん、やってくるかなあ。
何しろ、一歩外に出たら宿題なんか忘れちゃうTくんだからなあ。