10月26日(土)。『おもしろ科学教室』を開催。参加者は2年生一人。科学に興味があるT君です。2時間で二つも完成させました。風車が回転するしくみも理解でき,思うように工作できたことで十分充実感を味わったようです。
事前に工夫を試みていて思ったことがあります。 それについて書いておきます。
科学工作のネタを収集するために,いくつかのマニュアル本を活用しています。なかなか,おもしろいネタが入手できて,参考になる場合が多いので助かっています。ただ,必要な説明が抜けている,あるいは肝心要のポイントが書かれていない,そんな例もときにはあります。今回もその例の一つです。
風車を回すためには,熱エネルギーが運動エネルギーに変わり,そのうえで,一定の質量を持つ回転体(風車)を静止させている摩擦力に打ち勝たなくてはなりません。回転体の質量と摩擦力の総和に打ち勝つには,ロウソクの熱エネルギーが小さ過ぎるのです。そのために摩擦力を極力小さくすることが,成否のポイントになります。以上のことは,試作段階でうまくいかずにあれこれ考え,市販されているキャンドル・スペルの回転を調べていてわかった点です。
このおもちゃとは,下写真のものです。きちんとしたデザインでもあり,回って当たり前のはずなのに,ちっとも回転しないのです。三年前に買ったときは,確かに回った印象が残っています。「おかしいな」と思い,ちょっと指で加速してみました。しかし,間もなく止まるのです。何度やっても同じ。
ロウソクで熱せられた空気は,しっかり上昇してきているというのに。これはしくみに根本的な問題が潜んでいるはず。ひょっとしたら中心の回転部分,つまり支柱との接点の摩擦が大き過ぎるのかもと思い,針を付けて,その上に回転体を載せたところ,まことにスムーズに回転し始めました。これで一気に納得,です。おもちゃで使われている針金は太くて,その先は丸く仕上げられていたのです。不良品か,ほんものを真似た,いい加減なコピー商品なのでしょう。
今回参考にしたマニュアル本は複数の教師による共同執筆本です。この項の執筆者は,支柱材料に針金か金串を使うことを勧めています。しかし,わたしの苦労話につながる問題についてはまったく触れていません。不親切だという印象が拭いきれません。針金を使うのなら,先をきれいに磨いて一点にするのがポイントになります。そして,それはヤスリがあれば簡単にできるのです。どうしてその記述が抜けているのでしょうか。支柱に竹串や竹ひごを使って,先に虫ピン・針などを取り付ければ効率よく作業が進められます。金串を購入するまでもありません。
さらに二つ。まず,一点で支えるために回転の中心をうまく見つけなくてはなりません。これがなかなかたいへん。バランスがとれないと,工作としてはさっぱりです。次に,アルミ製の回転体を使うので加熱されることへの配慮がいります。ときには素手だと危険な場合があります。今回,わたしもヒヤッとしたことがありました。工作は安全にできることが前提です。「気をつけよう」ぐらいの記述はほしいと思います。
こうした,誰にでもすぐに理解できてすぐ応用がきくポイント,さらには留意しておきたい製作上のポイントを欠くのは解説書としていかがでしょうか。ほんとうに,いろいろ試した上でこのマニュアルをお書きになったのだろうか,そんな疑問さえ浮かんできます。編者にも注文したいですね。「マニュアル本は初心者にやさしく!」が原則です。