自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ろうそくで回る風車作り ~おもしろ科学教室~

2013-10-26 | 日記

10月26日(土)。『おもしろ科学教室』を開催。参加者は2年生一人。科学に興味があるT君です。2時間で二つも完成させました。風車が回転するしくみも理解でき,思うように工作できたことで十分充実感を味わったようです。

 

事前に工夫を試みていて思ったことがあります。 それについて書いておきます。

科学工作のネタを収集するために,いくつかのマニュアル本を活用しています。なかなか,おもしろいネタが入手できて,参考になる場合が多いので助かっています。ただ,必要な説明が抜けている,あるいは肝心要のポイントが書かれていない,そんな例もときにはあります。今回もその例の一つです。

風車を回すためには,熱エネルギーが運動エネルギーに変わり,そのうえで,一定の質量を持つ回転体(風車)を静止させている摩擦力に打ち勝たなくてはなりません。回転体の質量と摩擦力の総和に打ち勝つには,ロウソクの熱エネルギーが小さ過ぎるのです。そのために摩擦力を極力小さくすることが,成否のポイントになります。以上のことは,試作段階でうまくいかずにあれこれ考え,市販されているキャンドル・スペルの回転を調べていてわかった点です。

このおもちゃとは,下写真のものです。きちんとしたデザインでもあり,回って当たり前のはずなのに,ちっとも回転しないのです。三年前に買ったときは,確かに回った印象が残っています。「おかしいな」と思い,ちょっと指で加速してみました。しかし,間もなく止まるのです。何度やっても同じ。

 

ロウソクで熱せられた空気は,しっかり上昇してきているというのに。これはしくみに根本的な問題が潜んでいるはず。ひょっとしたら中心の回転部分,つまり支柱との接点の摩擦が大き過ぎるのかもと思い,針を付けて,その上に回転体を載せたところ,まことにスムーズに回転し始めました。これで一気に納得,です。おもちゃで使われている針金は太くて,その先は丸く仕上げられていたのです。不良品か,ほんものを真似た,いい加減なコピー商品なのでしょう。

今回参考にしたマニュアル本は複数の教師による共同執筆本です。この項の執筆者は,支柱材料に針金か金串を使うことを勧めています。しかし,わたしの苦労話につながる問題についてはまったく触れていません。不親切だという印象が拭いきれません。針金を使うのなら,先をきれいに磨いて一点にするのがポイントになります。そして,それはヤスリがあれば簡単にできるのです。どうしてその記述が抜けているのでしょうか。支柱に竹串や竹ひごを使って,先に虫ピン・針などを取り付ければ効率よく作業が進められます。金串を購入するまでもありません。

さらに二つ。まず,一点で支えるために回転の中心をうまく見つけなくてはなりません。これがなかなかたいへん。バランスがとれないと,工作としてはさっぱりです。次に,アルミ製の回転体を使うので加熱されることへの配慮がいります。ときには素手だと危険な場合があります。今回,わたしもヒヤッとしたことがありました。工作は安全にできることが前提です。「気をつけよう」ぐらいの記述はほしいと思います。

こうした,誰にでもすぐに理解できてすぐ応用がきくポイント,さらには留意しておきたい製作上のポイントを欠くのは解説書としていかがでしょうか。ほんとうに,いろいろ試した上でこのマニュアルをお書きになったのだろうか,そんな疑問さえ浮かんできます。編者にも注文したいですね。「マニュアル本は初心者にやさしく!」が原則です。

 


プラズマ撤退とプラズマディスプレイ研究者と

2013-10-26 | 随想

10月10日の朝刊を見ると,経済面第一記事の次の見出しが目に飛び込んできました。

「パナ,プラズマ撤退」「『テレビで利益』 厳しく」「液晶技術が向上 劣勢に」

見た途端,なんともいえない気持ちになりました。そして国際競争がどんなに熾烈なものか,その現実を垣間見た気がしました。

わたしのこころにある“プラズマ”は,その研究者である篠田傳さんと重なります。篠田さんは富士通に勤務されていたときに,プラズマの原理をカラーテレビに応用できないかと考え,苦難を乗り越えて実用化への道を開拓されてきた第一人者です。それで,“プラズマの生みの親”と呼ばれている方です。NHKの番組で,プロジェクトXや特集で取り上げられたことを思い出します。特集で紹介された超大画面薄型ディスプレイの迫力はスゴイものでした。

そんな経緯があって,当時富士通がプラズマ技術に関して得た基本特許はかなり多いはずです。

数年前,篠田さんの講演をお聴きできる機会がありました。県の理科研究会の講師としてお招きしたときです。わたしは当時,地区の理科世話係でしたから,よく覚えています。

わたしの印象は,細身で健康面で気遣わなくてはならないからだでありながら,困難を克服しようと全霊で会社組織や研究領域と対峙されてきたスゴサでした。これはまさに開拓者精神のかたまりだなあと思ったのです。

その後,篠田さんは元の勤務会社の協力を得て自分でベンチャー企業を立ち上げられました。もちろん,プラズマの可能性を追求し,製品を開発・製造・販売するために。大手企業には,国際競争が激化する中,そうした研究を進めるゆとりはなく,切り離すほかなかったのです。新しく出発した会社名は『篠田プラズマ株式会社』。

HPで会社概要を見ると,こんな文やことばが目に留まります。

 弊社は、世界のどの会社にも負けない大きな夢を持ち、その実現に向けて真摯にまい進する先端ディスプレイ技術をもつ会社です。この会社には次のような思いと目的があります。

  1. 超大画面ディスプレイを実現して、新しい産業と新しい映像文化を創る
  2. 若者へ、“企業家精神が夢を実現する”とメッセージをおくる
  3. 成功の暁には、若者の夢を援助する

ロマンと夢と愛に満ちた会社です。“チャレンジャーよ、来たれ”。 (以上,会長挨拶より)

また,『社是』にはこうあります。

  一 夢を育む

  二 成功を信じる

  三 ともかくやってみる

  四 考えて,考えて考え抜く

  五 決して諦めない

こんな社是を社是とする会社はそうないはず。次の『会社理念』にはこう書かれています。

近い将来,壁一面の表示装置を通してネットワーク通信を行う社会が生まれると期待される。それには超大画面で高精細な自発光型ディスプレイが不可欠となる。今まで育成してきたプラズマディスプレイ技術を応用し,新しい社会に貢献するとともに,社員の夢の実現を援助する。

若いエネルギーへの期待感で満ちています。経営者としてのこの感覚には,現場で叩き上げて来た研究心・自負心のようなものがくっきり見えます。この雰囲気なら,情熱をもって働く人には働き甲斐があるのではないでしょうか。

プラズマ撤退が篠田プラズマにどのような影響すを及ぼすのか,素人のわたしにはわかりませんが,国際環境が激変する中での新たな視点づくりと,競争力の向上は今後一層厳しさを増すでしょう。プラズマ方式のフィルムディスプレーを何枚もつないで大画面にするとか,曲面にするとか,いろいろ開発の方向があるとはいえ,あとを追いかけてくる海外勢にも勢いがあります。我が国の技術力・開発力に強く期待し続けたいですね。 篠田プラズマ,ファイト!

(注)写真は本文とは関係がありません。風景は,災害後のカワウの群れです。