畑の手入れをしていると,ダイコンの葉にアカタテハが一頭。弱っているような,からだつきがふつうでないような。おかしいなと思って,それでもそっと近づいてみました。すると,左の翅がどうやら縮んだままのようです。メガネを掛けてもっとよく見ると,やはり変形しています。道理で飛べないはず。
いったい,どんなところでどんなふうに翅が災難を受けたのでしょう。翅が伸びない状態は,どうも羽化直後の異変を物語っているように見えます。
しかし,アカタテハの幼虫の食草はカラムシやイラクサなので,羽化時の災難なら,畑の近くに食餌植物が生えていなくてはならない理屈になります。ところが,そうした草はまったく見当たらないのです。
となると,こうなった経緯を推し量るのはますます困難です。無理に解釈すれば,この個体が鳥に襲われたぐらいが浮かんでくるだけです。その解釈にしても,翅の縮れとは簡単に合いいれそうもありません。
ところで,アカタテハは成虫越冬をします。もしこの成虫が飛べたなら吸蜜を繰り返してこのまま来春まで生き抜くのではないかと思われます。急に冷えてきましたから,間もなく霜が降ります。今から産卵を経て一代を繰り返すとはちょっと考えられません。かわいそうですが,ここでいのちのリレーは途切れるのでしょう。これも自然のありのままの姿です。