自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

黒・白・赤で装ったホタルガ

2013-10-17 | 昆虫

昆虫を採集するとか,分類していくとかといった,いわば博物的な目で,虫の目に立つことに,わたしはほとんど関心がありません。標本が教えてくれる“知”に感謝していますが,自身がそれをたのしむ姿は,どう考えてもピンと来ません。

それよりわたしがこよなく好むのは,昆虫の生活環を変化・動きを柱にして見届けることです。行動学的は視点を大事にするということです。変化・動きは次のステージに移る変態をはじめとして,捕食,食餌,威嚇,防御,産卵,排泄,……,そんなものです。結果,一つひとつの昆虫をくわしく見つめていくことになり,いろんな昆虫に目が向くということは起こりえないわけです。

ただ,「ほほうっ! これは珍しい」とか「きれいだ」といった感じあれば,必然的に目を奪われます。下のホタルガもその例です。

畑に行くと,ネギの葉に付いていました。黒装束に赤い頭がちょこんと載っています。頭もよく見ると,眼の部分が真っ黒。翅には大胆な白帯が斜めに走っています。i色がホタルを連想させます。実際,ホタルに擬態して身を守っているようで,そこから命名されたようです。

触覚もまことに立派。形状からオスと思われます。かたちの見事さは,もちろん感覚器官として欠かせない機能を受け持っているからこそのことです。では,いったいなにを探知するのでしょう。メスから出されるフェロモンメッセージを受けとるのでしょうか。 

幼虫の食樹はサカキやヒサカキで,幼虫は毒を持っているらしく,人間にとって厄介者になっているという一面があります。ネットで検索していると,退治の方法を教えてほしいという記載がいくつかあります。

それはともかく,この名とこの昆虫との相関,一度耳にしたら忘れないでしょう。この日以降何度か,自宅脇をヒラヒラと飛ぶホタルガを目にしました。

 


ジャコウアゲハ観察記(その284)

2013-10-17 | ジャコウアゲハ

ヒガンバナの季節はとっくに過ぎました。思い出したように,この花を訪れたジャコウゲハの吸蜜行動について書きとどめておきます。

9月,我が家のスダチの木の根元に咲くヒガンバナをジャコウアゲハが一頭飛来して吸蜜をしていました。ヒガンバナはたった一本。なぜかそこに生えています。偶然そこを通りかかったとき,アゲハがいたのです。ゆっくり翅をパタ付かせながら,口吻を伸ばしていました。

ヒガンバナとクロアゲハ,またナミアゲハの組み合わせは写真でも紹介されていますし,わたしも撮影した経験があります。しかし,ジャコウアゲハとの組み合わせは初めて見ました。棲息地にたくさん咲いている場合は,比較的容易に吸蜜風景を観察できるのでしょうが,わたしの身近な場所ではそういうところはありません。

大慌てでカメラを取り出して準備していると,パッと舞い上がりました。「もう一度,来てほしい」と祈っていると,来てくれました。しかし,わたしの方はまた慌ててしまい,ほんとうにピンボケの写真が一枚撮れただけでした。惜しいことをしました。

日本に自生しているヒガンバナは不稔性です。それでも,蜜源にすこしは蜜があるのでしょうか。もしたくさんの蜜があれば,もっともっとアゲハたちが訪れるはずです。先祖を忘れない程度の蜜量が滲み出ているのかも,です。