昆虫を採集するとか,分類していくとかといった,いわば博物的な目で,虫の目に立つことに,わたしはほとんど関心がありません。標本が教えてくれる“知”に感謝していますが,自身がそれをたのしむ姿は,どう考えてもピンと来ません。
それよりわたしがこよなく好むのは,昆虫の生活環を変化・動きを柱にして見届けることです。行動学的は視点を大事にするということです。変化・動きは次のステージに移る変態をはじめとして,捕食,食餌,威嚇,防御,産卵,排泄,……,そんなものです。結果,一つひとつの昆虫をくわしく見つめていくことになり,いろんな昆虫に目が向くということは起こりえないわけです。
ただ,「ほほうっ! これは珍しい」とか「きれいだ」といった感じあれば,必然的に目を奪われます。下のホタルガもその例です。
畑に行くと,ネギの葉に付いていました。黒装束に赤い頭がちょこんと載っています。頭もよく見ると,眼の部分が真っ黒。翅には大胆な白帯が斜めに走っています。i色がホタルを連想させます。実際,ホタルに擬態して身を守っているようで,そこから命名されたようです。
触覚もまことに立派。形状からオスと思われます。かたちの見事さは,もちろん感覚器官として欠かせない機能を受け持っているからこそのことです。では,いったいなにを探知するのでしょう。メスから出されるフェロモンメッセージを受けとるのでしょうか。
幼虫の食樹はサカキやヒサカキで,幼虫は毒を持っているらしく,人間にとって厄介者になっているという一面があります。ネットで検索していると,退治の方法を教えてほしいという記載がいくつかあります。
それはともかく,この名とこの昆虫との相関,一度耳にしたら忘れないでしょう。この日以降何度か,自宅脇をヒラヒラと飛ぶホタルガを目にしました。