めったにないことなのですが,時として,幼虫が宙吊りになる場合があります。脚を踏み外すとか,風雨に煽られるとか,そんな非常事態が生じたときと考えてよいでしょう。
そのために,絹糸を吐いて歩いているときがあります。たとえば,横に倒れた細い茎から突然落ちたときを目撃したことがあります。そのとき,糸のお蔭で宙吊りになり,その後,時間をかけて元の位置に上がっていったのでした。ちょうど,それは命綱の役を果たしていたのです。
元に戻ればいいのですが,そうはいかない例もあります。宙吊りになったまま,死を迎えるほかありません。脱皮の最中に落下しそうになり,そのままいのちを失った個体を見たことがあります。
今回は,幼虫が葉からぶら下がった状態で,力を使い果たした例です。多少の力が残っていましたが,もう,どうしようもありません。
幼虫が無事に大きくなるまでには,災難がいくらでも待ち受けています。98%のいのちを奪う厳しい掟といっていいでしょう。一切の感傷を拒む,小さな世界の掟です。