昨日、書店で石井進著作集①の本郷和人による「解説」を立ち読みした。
感動した。あの石井進が東大の中では孤独で、黙々と学際研究を続けていたことがよくわかった。学際研究に歩みだした石井の授業について、文献史学の基礎的授業をもとめる多くの東大の学生が否定的であり、離れていったこと。新しく赴任し、国文学の成果を駆使した五味文彦に学生たちが集まったこと。そのような中で、石井があの学際研究を続けていったこと。そして圧巻は、後年、自分たちが石井を見捨ててしまったとの自戒を語る筆者本郷に対して、某編集者が君たちが石井先生を見捨てたのじゃない、石井先生が君たちを見限ったのだ、と語ったくだり。
私は、石井先生の本に大きな影響を受けてきた。学生時代、ある先生がこういったのを忘れられない。
君たちは、理論的には永原さんや大山さんや河音さんの方が優れていると思っているでしょう。冗談じゃない。中世史の世界で本当にすごいのは、石井進ただひとりです。彼は考えていること、やっている仕事の100分の1もしゃべらない。
私が石井進を本当にすごい人だとわかったのは、ずっと後のことだ。
石井先生がなくなってから数年立つが、私はいまでもショックから立ち直れないでいる。