☆今日の一枚 336☆
Grover Washington Jr.
Winelight
今日も、”僕らの時代のBGM” グローヴァー・ワシントンJrだ。1980年作品の『ワインライト』、よくできたアルバムである。というか、かつてよほどよく聴いたのだろう。どの曲も身体的にフィットして、現在でもまったく違和感がない。①Winelight、②Let it flow、③In the name of love と続くA面の流れは本当にすばらしい。穏やかかつエモーショナルな曲④Take me thereから、大ヒット曲⑤Jast the two of us への流れもなかなかなよい。そして、エリック・ゲイルの穏やかなギターからはじまる最後の⑥Make me a memoryの寂寥感がたまらない。
今日もカセットテープで聴いているのだが、私のテープラックにはTDKのADに録音されたものと、AXIAのSD-Masterに録音されたものの2つがあり、このことからも相当聴きこんでいたアルバムであることがわかる。音はやはりクロームテープ(Cro2)の方がいいようだ。このアルバムについてはやはりCDを買っておこうかという気持ちもなくはないのだが、一方で同じ時代をともに生きたこのカセットテープのままで不足ないような気もする。ただ、もう一度LPレコードで聴いてみたいという思いはある。
音楽的なクオリティーはもちろん素晴らしいものがあるが、都会的なお洒落さを感じるAOR的なテイストもなかなかいい。女の子と素敵な時間を過ごすツール、”恋のBGM”として重宝な作品だったわけだ。1980年代の前半、女の子とのデートで、ドライブのBGMとしてこのアルバムを使えば、女の子もメロメロ、イチコロだった。そうだったに違いない、と私は夢想するのだが、貧乏学生の私には、もちろんクルマなどなく、それどころか運転免許すらなく、まったく実現不可能だったのが口惜しい。
⑤Jast the two of us のお洒落な邦訳タイトル「クリスタルの恋人たち」は、やはり田中康夫の『なんとなく、クリスタル』から売れ線をねらってつけられたものなのだろうか。確かに、歌詞の中にI see the crystal raindrops fall. とか、I hear the crystal raindrops fall. とか、「クリスタル」という言葉は登場するが、「クリスタルの恋人たち」というタイトルはいかにも唐突だ。お洒落なタイトルではあるが、はっきりいって何が何だかわからない。アルバム『ワインライト』が発表されたのは1980年だが、田中康夫『なんとなく、クリスタル』の発表が1981年1月で(雑誌「文藝」に掲載されたのは1980年12月だったようだ)、Jast the two of usがシングルカットされたのが1981年?月であることを考えると『なんとなく、クリスタル』が下敷きになっていた可能性は十分にある。ただ、曲そのもののイメージからいうと、Jast the two of usをそのまま使った方がよかったのではないか、と今は思う。