昨日の選抜高校野球開会式での選手宣誓、21世紀枠出場の石巻工業、阿部主将の言葉がなかなか良かった。というか、年甲斐もなく涙が出てきた。あるいは資料的価値もあろうから一応全文をあげておく。
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「東日本大震災から1年、日本は復興の真っ最中です。被災をされた方々の中には苦しくて心の整理が付かず、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられず、悲しみに暮れている方がたくさんいます。人は誰でも答えのない悲しみを受け入れることは苦しくて、つらいことです。しかし、日本が一つになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして、笑顔。見せましょう、日本の底力、絆を。われわれ高校球児ができること、それは全力で戦い抜き、最後まであきらめないことです。今野球ができることに感謝し、全身全霊で正々堂々プレーすることを誓います」
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まず、「復興」「がんぱ゛ろう〇〇〇」をかけ声にした、いけいけどんどんの風潮の中で、まだ悲しみから抜け出られずにいる人が大勢いるのだということに触れてくれたことがなかなかいい。現実の被災地にはそういう人がたくさんいるし、一方「がんばろう」というバイタリティーにもうついていけないという人だってたくさんいるのだ。そういう人たちに、寄り添おうとするような言葉がいい。
それから、「日本中に届けます」というところがいい。最近、スポーツ選手や芸能人、ミュージシャンらが、自分たちのプレーや音楽で「元気を与えたい」などというのをよく耳にする。「お前、何様なんだ」と思ってしまう。単なるボキャブラリーの貧困ではあるまい。どこかでそう思っているのではないか。実際、被災地では、「支援してやっているんだ」というような高飛車な態度をとる「支援者」の人々に出会うことがよくある。「元気を与えたい」などというのは、東日本大震災後の自粛ムードの中で、自分たちの音楽やスポーツをやるための口実なのではないかと意地悪く考えてしまう。その意味からも、「日本中に届けます」というのは、やや抑制がきいていてよかった。
残念だが、石巻工業は、先ほど、神村学園に9-5で敗れたようだ。
[豆知識]地元では石巻工業を「いしこう」と呼ぶ。「せきこう」という場合は石巻高校を指す。