●今日の一枚 211●
Charlie Haden
First Song
プログレッシブ・ロックグループ、イエスの名盤『危機』によく似たジャケットである。私自身、間違えて手に取ることがしばしばだ。チャーリー・ヘイデン、ビリー・ヒギンズ、エンリコ・ピエラヌンツィの1990年録音作品、『ファースト・ソング』。最近購入したアルバムである。パット・メセニーの『ミズリーの空高く』やスタン・ゲッツの『ピープル・タイム』で演奏された美しいアルバムタイトル曲を聴くためだ。う~ん、美しい、切ない、いい曲だ、と悦に入っていたのだが、聴いているうちに何か足りないような気がしてきた。
--「このピアニストに懐疑的だ。ヨーロッパ人にありがちだか、ジャズへの熱い乗りが感じられない。薄汚れたところもない。この作品はヘイデンの①のような物凄く旋律的なオリジナルを聴く一枚なのに、そうした美曲を弾くうれしさに乏しい。ヘイデンの何気ないベースの爪弾きがぐーんと沈む悦楽の一瞬を聴くべし。」(寺島靖国『辛口!JAZZ名盤1001』講談社+α文庫1993)--
物足りない何かの正体が私にはうまく説明できないのだが、寺島氏の意見もあながち的外れではないような気がする。やはり、エンリコは優等生過ぎるのだろうか。ただし、何かが足りないような気はするが、決して悪い作品ではない。録音はいいし、ピアノ、ベース、ドラムスの絡みもいい。バランスもいい。第一、曲がいい。しばらく、繰り返し聴いてみたい一枚ではある。