WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

つつじ満開の徳仙丈山2022

2022年05月14日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 580◎
Bill Charlap Trio
'S Wonderful
 昨日の雨が上がったので、家族で午後から徳仙丈山に登った。徳仙丈山は、私が住む気仙沼市のつつじの名所である。山麓・中腹は満開で、本当に美しい光景を目にすることができた。GWに一度登ったおかげで、今回は胸が苦しくなったりすることなく、スムーズに登ることができた。家族の様子を見る心の余裕もあり、帰りは脇道にも入るなどプチ冒険しながら下山した。

 第一展望台から見たつつじが原と、つつじ街道の様子である。

 山頂付近はつぼみが目立つものの、すでに咲いているものも多かった。来週あたりには、山頂も満開になるかもしれない。天気が良ければ、昨年同様、急登を含む気仙沼口~本吉口の縦断トレッキングに挑戦したいと思った。

  山頂からの眺めはやはり素晴らしい。旧式のi phoneで撮影した写真では小さくしか見えないが、気仙沼湾横断橋や気仙沼大島大橋が大きくはっきりと見えた。山頂の、徳仙丈の神様にお参りして下山した。

 今日の一枚は、ビル・チャーラップ・トリオの2002年作品、'S Wonderfulである。『スウィング・ジャーナル』誌がこのアルバムの宣伝攻勢を行っていたのが昨日のことのようだが、もう20年も前のことだということに改めて驚く。いつもながらの、ビル・チャーラップの寛いだ感じのピアノが好ましい。このピアニストの高音のタッチが好きだ。美しいオルゴールのようだ。

徳仙丈なう2022①

2022年05月04日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 579◎
Bill Evans
You Must Believe In Spring

 思い立って、つつじの名所、徳仙丈に登った。今、山頂である。
 昨年入院してからすっかり体力が落ちてしまった。退院して以降、冬だということもあり、トレッキングはサボっていた。もうそろそろトレーニングを開始しようと思い立ち、軽めのコースということで登って来たのである。
 予想通り、まだつつじは咲いておらず、山麓、中腹のツツジはこんな感じだ。後2週間程度で咲く感じだろうか。


 第一展望台からの「つつじが原」の眺めは、こんな感じである。最盛期にはつつじの絨毯となる。
 
 
 山頂からの眺め(上:本吉側と下:気仙沼側)である。太平洋と気仙沼湾が見える。

 やはり、ブランクは大きく、途中、胸が痛くなったりしたが、休み休み登り、何とか山頂まで辿り着いた。ハードなコースにチャレンジするためには、もう少しトレーニングが必要のようだ。今、山頂付近に横になって休みながらこの記事を書いている。
 さて、下山するか。(14:30)

 帰宅した。追記したい。下山は、膝と太ももに負担がかかり、ちょっとしんどかった。明日、傷みだすかもしれない。市街地から気仙沼側登山口までのアクセス道が整備され、昨年に比べてずっと行きやすくなった。最盛期ないにもかかわらず、駐車場には車が10台程度止まっていた。

 今日の一枚は、ビル・エヴァンスの『ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング』である。録音は1977年、リリースはエヴァンスの死の翌年1981年である。エヴァンスの作品の内、五指、あるいは三指に入るほど好きな作品である。山歩きをしている間、なぜだか無性にJazzが聴きたかった。Bluetoothスピーカーを持参しなかったのを悔やんだほどだ。
 帰宅してこのアルバムを聴いている。なぜエヴァンスの、このような《暗い》作品を選んだのか、自分でもよくわからない。帰りの車の中で、このアルバムを聴きたいと、頭に浮かんだのである。たった一人の山歩きの中で、いい年をして内省的になったからかもしれない。

古いアコースティックギター

2022年05月04日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 578◎
Live Adventures of 
Mike Bloomfield & Al Kooper
 古いアコースティック・ギターがある。アコースティック・ギターというよりフォーク・ギターという感じかもしれない。最近のアコギと比べると、ちょっと大型のようだ。おそらくヤマハのFGシリーズだと思うが、ラベルがないので型番はわからない。高価なものではない。恐らくは当時2万円程度のものではなかったかと思う。高校生の頃、「天国への階段」を演奏するために買ったのだ。その後、弾くのはエレキギターばかりだったので、大人になり、酔っぱらったときにたまに手にするぐらいだった。最近、ダイナミック・ギター(→こちら)やエレガット(→こちら)などアコースティックギターを弾くことが多くなり、このフォーク・ギターにも手を入れてみようと思った。ただ、スチール弦のギターにはそんなに興味はない。新しいものを購入しようという気はおきない。
 とりあえず、ピンとサドルを交換してみた。ピンを真鍮製のものに交換し、サドルーを牛骨のものにした。牛骨サドルは紙やすりで削ってフィットさせたが、実際に弦を張ってみると、ちょっと弦高が高い気がする。まあいい。この次に弦を交換するときに調整しよう。音は凄く響くようになった。ただ。、ちょっと響きすぎである。サスティンが長すぎて、不自然に感じる。音もキラキラしている。私が最近ナイロン弦のギターに興味を感じるのは、柔らかな音色とともに、今にも消え入りそうな響きにあるのだ。
 とはいえ、せっかく手を入れたのだ。たまには手に取って弾いてみようと思う。
 今日の一枚は、アル・クーパー&マイク・ブルームフィールドの1969年作品、『フィルモアの軌跡』である。いいギターだ。ああ、最高だ。興奮している。過剰なディストーションをかけず、原音に近いトーンで奏でられるブルースフレージングに魅了される。
 恥ずかしながら、このマイク・ブルームフィールドというギタリストをこれまで聴いたことがなかった。最近アル・クーパーを聴き(→こちら)、彼の他の作品をapple music で聴いているうちに出会ったのだ。渋谷洋一『ロック~ベスト・アルバム・セレクション』によると、このアルバムは、『クリームの素晴しき世界』とともに、60年代のインプロビゼーション主体のブルースロックの記念碑的作品、なのだそうだ。知らなかった。私はクリームももちろん好きだが、このアルバムを聴いてこっちの方に共感を感じている。渋谷陽一の評価は過大なものではないと思う。
 もっと若い頃に聴いていたらどうだっただろうか。マイク・ブルームフィールドというギタリストに熱中しただろうか。そうなったような気もするが、今の年代だからこのシブいギタリストを正当に評価できるという気もする。

さようならK先生

2022年05月01日 | 今日の一枚(U-V)
◎今日の一枚 577◎
上田知華+KARYOBIN
上田知華+KARYOBIN[3]
 上田知華さんの訃報に接した数日前、かつて同僚だったK先生が亡くなった。退職して10年程である。早すぎる死だ。先月、末期のすい臓がんが発見されたが、延命治療を望まず、自宅で療養していたとのことだった。
 彼とは2校で同僚となり、教科は違うが学ぶことの多い先生だった。退職して数年間はいくつかの学校の非常勤講師を務めた。底辺校の国語の授業での作文指導を楽しそうに語っていた。その後は、中国人など海外から来た生徒の学習支援のために、無料の学習塾を運営したりしていたようだ。
 私が30代前半の頃、赴任したばかりの進学校で彼のクラスの副担任を務めた。卒業式後の最後のHRに驚愕した。生徒が自ら企画運営し、それぞれの生徒が挙手して次々に発言していった。生徒たちは、自分の思いを吐露し、人前では言いにくい自分の醜い部分について話す生徒も多かった。HRは長時間に及んだが、担任のK先生はほとんどしゃべらず、笑顔で話を聴いていた。ずっとだ。すごいクラスだと思った。自分にこのようなクラスが作れるだろうかと自問自答した。
 彼の死を知ったのはやはり元同僚の先輩教師からの電話だったが、火葬・葬儀は近親者のみで済まされており、その日に「お別れ」のみ行われるという。供物・香典も固辞するとのことだった。「お別れ」に行くと、彼の置手紙をもらった。「お別れ」に来てくれた人への手紙だった。死と向かい合い、それを受け入れながら書かれた、いい文章だった。彼らしいと思った。

 今日の一枚は、上田知華+KARYOBINの1980年作品、『上田知華+KARYOBIN[3]』である。apple music でしばらくぶりに聴いている。前作よりソフィスティケートされた作品であり、完成度も高い。ヒットした④パープルモンスーンはもちろんいい曲だ。女性が自分を解放して自己表現し、元気になりはじめた、80年代初頭の雰囲気をよく表しているように見える。けれども、私は②ベンチウォーマーを聴きたいと思う。この時代の、内気な女性の内面の葛藤をよく表しており、共感を禁じ得ない。

 同時期に、同じすい臓がんで亡くなったからだろうか。何の関係もないはずの上田知華とK先生とがダブってイメージされてしまう。
 さようなら、K先生。
 
 

上田知華さんの訃報に接した

2022年05月01日 | 今日の一枚(U-V)
◎今日の一枚 576◎
上田知華+karyobin
上田知華+karyobin[2]
 上田知華さんの訃報に接した。昨年9月にすい臓がんで亡くなっていたとのことだ。64歳だったらしい。
 上田知華をフォローしてきたわけではない。彼女の作品を聴き続けてきたわけでもない。70年代末か80年代の初頭、巷間で流れる上田知華+karyobinというグループの斬新な編成が何となく気になり、三軒茶屋の貸しレコード屋で作品を借りた。悪くない、と思った。その時、ダビングしたカセットテープを今でも持っている。持っているのは『上田知華+karyobin[2]と『上田知華+karyobin[3]のみだが、結構聴いたと思う。apple musicにあったので、しばらくぶりに聴いている。悪くない。

 今日の一枚は、上田知華+karyobinの1979年作品、『上田知華+karyobin[2]』である。ずっと以前に記したことだが(→こちら)、このアルバムの中の②サンセットという曲が好きだ。学生時代に、図書館の第二閲覧室の窓から眺めた、夕暮れのキャンパスの風景が甦ってくるようだ。
 15年程前に書いたその記事には、こんな文章があった。
 上田知華+KARYOBINは、ピアノ+弦楽四重奏というめずらしい編成でポップスを演奏したグループで'78年夏にデビューしている。上田知華+KARYOBIN[2]というアルバムについては、データがないのではっきりしたことはわからないが、状況から1979年の作品ではないかと推察される。全体的に素人っぽさが感じられ、楽曲や歌詞、サウンドには破綻も多いが、既成のポップスに対して新しい何かを持ち込もうとする清新な気概は感じられる。また、素人っぽいだけに、70年代末の内気で控えめな、あるいはおきゃんでいたずらっぽい女の子の心象風景がリアルに表現されているようにも思う。 
 ちょっと評論家めいた嫌な書き方だが、今日聴いて大体同じような感想をもった。