WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ブラザーズ・イン・アームス

2010年04月25日 | 今日の一枚(C-D)

●今日の一枚 262●

Dire Straits

Brothers In Arms

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 朝、起きてみたら青空が広がっていた。いい天気だ。この青空からなぜだか一枚の1980年代のロックアルバムのジャケットを連想した。

 イギリスのロックバンド、ダイアー・ストレイツの1985年作品『ブラザーズ・イン・アームス』である。このアルバムを同時代に聴いたわけではない。1980年代には私はジャズにシフトし、もうロックは聴かなくなっていた。ただ、友人からマーク・ノップラーというすごい才能が現れたことを聞き、その関係でジャケットだけは記憶していたのである。中古CDでたまたまそのジャケットを見かけ、とりあえず購入したのは10年程前だっただろうか。けれど、そのCDはきちんと聴かれることもなく、CD棚に放置されていた。

 今日ほとんど初めてちゃんと聴いてみた。もう2回聴いている。さすが、全米・全英で大きなヒットとなった作品だけあり、よくできている。MTVを皮肉ったという② Money For Nothing は、なかなかに渋いサウンドに仕上がっている。ギターのリフが印象的だ。④ Your Latest Tric (愛のトリック)の哀愁のサックスは誰だ。マイケル・ブレッカーだろうか。まだ、十分に味読していないが各曲の詩も何か意味ありげだ。検討に値するものかもしれない。

 wikipediaはダイアー・ストレイツについて次のように書き記している。

「1970年代末から90年代初頭にかけて、ポップシーンにありながらも流行とは一線を画した音楽で世界的な人気を誇ったグループである。」

 ただ、バンドのコンセプトをマーク・ノップラーひとりに負っている傾向もあるようで、「バンドのアイデンティティのほぼすべてを、フロントマンのノップラーに負っており、彼が書いた楽曲以外の曲はアルバムでもステージでもほとんど取り上げられていない。」とも記している。


アメリカンバンド

2010年04月24日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 261●

Grand Funk

We're An American Band

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 楽天イーグルスが勝った。3-0。気分がいい。岩隈とダルビッシュのエース対決。本当に息づまるような投手戦だった。夜からは次男につきあってスイミングクラブで泳いだ。先週リタイアした反省を生かして、力をセーブして泳いだ。結構しんどかったが、今日は最後まで泳ぎきった。泳いだ後、次男と回転寿司でおなかを満たし、帰宅。それにしても、夕方聴いたグランドファンクのサウンドが耳から離れない。だめだ。やはり、もっと聴かねばなるまい。

     *     *     *     *     *

  グランド・のファンク1973年作品、『アメリカン・バンド』である。このアルバムから、3人編成だったグランド・ファンク・レイルロードにグレイク・フロスト(key) が加わり、バンド名もグランド・ファンクに変わった。プロデューサーがかわったためなのだろう。初期の荒削りな部分は消し去られ、ポップで洗練されたサウンドになっている。ただし、エネルギッシュさはまったくそのままだ。マーク・ファーナーのギターも快調である。A-①~③の流れが大好きだ。特に、③ Creepin' は身体にしみるものがある。「Open eyes, but you're sleepin',You best wake up 'fore tomorrow comes creepin' in.」というところが何ともいえずいい。いつも口ずさんでしまう。今も口ずさんでいる。

 ところで、もう若い人はほとんど誰も知らないが(もちろん、知る必要もないだろうが)、1971年のグランドファンクの来日コンサートは、日本のロック史上のひとつの伝説となっている。このコンサートにもいったという渋谷陽一氏は、次のように書き記している(『ロック~ベスト・アルバム・セレクション』新潮文庫)。

「後楽園球場のコンサートは歴史に残るコンサートで、前座が終わると雷鳴をともなった大夕立がやってきて、聴衆のほとんどはズブ濡れになって彼らの演奏を聴いていた。聴衆はここで乗らなければもう乗れないといった調子で騒ぎ、3万人の聴衆が「ハートブレイカー」を合唱するという異様な光景が展開された。」


ハートブレイカー

2010年04月24日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 260●

Grand Funk Railroad

On Time

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 押入れで他の探し物をしていて、たまたまあったカセットテープ入れにグランド・ファンクのテープを発見、ちょっと聴いてみると、心はウキウキ、ドキドキだ。もうだめだ。耳から離れない。古いロック、ロックがロックであった時代のロックだ。

 グランド・ファンク・レイルロードの1969年作品『グランド・ファンク・レイルロード登場』、グランドファンクのデビューアルバムである。このアルバムはLPでもっていたはずだが見当たらない。カセットテープもLPからの録音だが、肝心のLPが見つからない。誰かに貸して返ってこなかったのかも知れない。そういうことが何度かあった。学校の卒業か何かでなかなかあえなくなってしまったことが原因だ。実は私も、借りたままのLPがある。いつか返さねばとずっと思っている。

 渋谷陽一氏が記すように(『ロック~ベスト・アルバム・セレクション』)、初期のグランド・ファンク・レイルロードは、「単純な肉体派ハードロックバンドとバカにされてきた」バンドであり、「日本のジャーナリズムでもいろいろとイモバンドだとか、バカバンドとか叩かれた」バンドである。しかし、その人気は圧倒的で、来日時には後楽園球場を満員にし、暴動まで起こした。伝説の「嵐の後楽園コンサート」である。

 世間の酷評にもかかわらず、私は大好きだった。とにかく気持ちいいのだ。先の渋谷氏も前掲書でこう述べる。「私はこのクループが大好きで、なんで皆グランドファンクの事を馬鹿にするのか不思議でならなかった。私は決して彼らの事を上手とは思わない。どちらかといえば下手な部類だろう。しかしそれはそれでいいではないか。」そのとおり、演奏の上手下手と好き嫌いはイコールではないのだ。

 今でも聴けば身体が熱を帯びる。荒削りだが、エネルギッシュで正統的でストレートなサウンドだ。ああ、最高だ。たった3人でこの迫力の音を作り出しているのはすごい。B-② Heartbreaker 、いい曲だ。ギター少年だった私の教科書のひとつだった。ロックギターをおぼえたての私は、マーク・ファーナーのこのストレートなギターを必死にコピーしたものだった。今でも、年に数回、酔っ払ってギターに触れると、このHeartbreaker で指ならしをする。もうほとんど弾かないギターだが、不思議とこの曲に関しては指がおぼえている。


エラ & ルイ

2010年04月23日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 259●

Ella Fitzgerald & Louis Armstrong

Ella & Louis

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 今日はしばらくぶりに早い時間に帰宅した。楽天イーグルスもどうやら大量リードしているようだ。ゆっくり音楽でも聴くかと自室に篭城し、久々に取り出したのがこの一枚である。

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 エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングの共演作、1956年録音作品の有名盤『エラ & ルイ』である。バックをつとめるオスカー・ピーターソン・トリオの好演も見逃せない。

 いやあ、楽しい。本当に楽しい。本当にいいアルバムだ。こういうアルバムに対して批評めいたことを書くのが恥ずかしくなってしまう。エラフィッツもサッチモもリラックスしつつ本当に音楽を楽しんでいるようだ。その楽しさがダイレクトに伝わってくる気がする。これ以上、何をつけくわえればいいのだろう。⑧「アラバマに星落ちて」、いいなあ、好きだなあこの曲、心がとろけそうになる。⑩「ニアネス・オブ・ユー」、アルバム帯の日本語タイトルが「あなたのそばに」となっている。なるほど、これは「ニアネス・オブ・ユー」じゃなくて、「あなたのそばに」だ。

 我々の人生には、こういう音楽が絶対に必要だ。


WONSAPONATIME

2010年04月23日 | 今日の一枚(I-J)

●今日の一枚 258●

John Lennon

Wonsaponatime

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 あまり聴くことのないこのアルバムをなぜ取り出したのか、自分でもよくわからない。たまたま目についたのだが、なぜ素通りしなかったのかよくわからない。ジョン・レノン、秘蔵の未発表音源と銘打ったアルバム『ウォンサポナタイム』。ジョンのホームレコーディングやスタジオレコーディングのアウトテイク、ライブレコーディングなど94トラックを集めた4枚組『ジョン・レノン・アンソロジー』のダイジェスト盤である。

 この手のアルバムにしては、今聴くとなかなか面白い。⑮ 「愛の不毛」などはなかなかに感動的だ。かつて熱狂的なファンだった私だか、今は結構冷静に聴ける気がする。興味深く、改めて考えさせられることも多い。けれど、何かが変だ。この違和感は何だろう。それは恐らく、この作品の成り立ち、あるいはこの作品の発売の意図と関係があるように思う。

 帯の宣伝文句には、「ここにいるのは私の知っているジョンです。その想い出をあなたたちと分かち合いたいのです。」というヨーコ・オノさんの言葉が記されている。ヨーコ・オノさんはライナーノーツでもこう記す。

     *     *     *

「みなさんがこのディスクを楽しんで聴いてくだされば幸いです。これが私の知っているジョンです。みなさんがマスコミやレコードや映画をとおして知っているジョンではありません。あえてこう言いましょう。これが私のジョンです。ジョンはずば抜けて頭のいい人でした。ジョンは幸せでした。ジョンは怒っていました。ジョンは悲しんでしました。そしてなによりも、ジョンは世の中に自分のもつ最高のものを送り出そうといつも努力をおしまない、天才でした。私はジョンを愛していました。ジョンのような人が私たちと同じ世代に、私たちの住む20世紀に、そして同じ人間としてこの世に確かに存在してくれたことをうれしく思います。そんなジョンと人生をともにできたことは、私にとってこのうえなく光栄なことです。」

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 ある種の宗教的なものを感じる。偶像化である。「私の知っているジョン」を特権化することによって、ジョン・レノン自体が偶像化されている。なぜこのようなことを書くのだろうか。ジョン・レノンのような、音楽のみならず文化的ムーブメント全体に影響を与えたアーティストには、「偶像化」がつきまとう。しかし、そもそもジョン・レノンは、例えば本アルバムにも収録されている③ God(神)においてそうだったように、すべての偶像崇拝を否定しようとしたのではなかったか。もしかしたら、ヨーコ・オノさんも「私の知っているジョン」をひきあいにだすことで、ひとりの人間としてのジョン・レノンを強調し、偶像化を拒否しようとしたのかも知れない。しかし、例えば先のライナーノーツの文章は、現実には逆の効果をもたらしているように思う。「ジョンのような人が私たちと同じ世代に、私たちの住む20世紀に、そして同じ人間としてこの世に確かに存在してくれたことをうれしく思います。」とは、明らかに言いすぎである。「私の知っているジョン」を排除しても、ジョン・レノンは十分に刺激的で魅惑的なミュージシャンであり、ロックンローラーなのだと思う。素晴らしいロックンローラーのひとり。それで十分ではないか。ジョン・レノンも本当はそれをのぞんでいたのだと、私は思う。

 そう考えなければ、ジョン・レノンを「楽しんで聴く」ことなどできないのだ。

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[ジョン・レノン関係記事]

ジョン・レノンのイマジン

ジョン・レノン死亡記事とコメント


統合へ ~JBLとbjリーグ~

2010年04月22日 | 籠球

 日本バスケットボール協会は21日、協会傘下の日本リーグ(JBL)と国内男子プロのbjリーグを統合した2013年度の新リーグ設立に向け、東京都内で両リーグの代表と覚書の調印式を行った。3者は今後、「次世代型トップリーグ創設準備組織」を設置し、新リーグの運営方法など統合に向けた話し合いを進める。
 調印式では、日本協会の麻生太郎会長とbjの河内敏光コミッショナー、JBLの伊藤善文理事長それぞれが調印を交わした。覚書には、今後は13~14年シーズンを目標とした新リーグ設立に向けて積極的に協力し合うことや、両リーグの加盟チームが新リーグに参加できるよう、日本協会とともに真摯(しんし)に対応することなどが盛り込まれている。
 05年11月に発足したbjとJBLは分裂状態が続いていたが、日本協会は08年11月に国内リーグのあり方に関する検討委員会を設置し、統合の道を模索。今年3月の理事会で、bjのチーム、所属選手の日本協会への登録を今年度から認めることを決めていた。

      *     *     *     *     *

 bjリーグは、日本協会から脱退した2チームが中心となって発足したプロリーグのため、両者は断絶状態にあり、その確執は激しいものがあった。とくにJBLのbjリーグに対する意地悪には目を覆うものがあり、例えば、wikipediaは次のような記事を載せている。

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 「トヨタ、アイシンなどJBLチームの一部は、bjの選手と一切接触してはいけないという規律もある。またトップ選手の一部は、例えそれまで付き合いがあったとしても、一切の交流を断絶し、手紙やメールへの返信はおろか、年賀状すら受け取りを拒否して送り返すという行動もとっている。さらに青山学院大など一部名門大学ではbjリーグのトライアウトを受けた選手に除籍処分を下す方針も打ち出している。」

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 今度こそちゃんと話をつけてほしい。注目されるのは、ただ統合するのではなく、プロチームのあり方をどのように構想するかである。現在のJBLのように実業団チーム主流では、日本のバスケットボールの発展はあるまい。それにしても「偉大なる言いだしっぺ」と呼ばれるbjリーグのコミッショナー河内敏光氏はなかなかやる男だ。プロ化をもたもたするJBLを飛び出し、日本協会から陰湿ないじめを受けつつもbjリーグを創設して夢を実現した。現在の統合への動きもbjリーグの成功に刺激された部分が大きいことは明白である。その意味でも、河内氏が日本のバスケプロ化の推進役として大きな功績があることは否定すべくもない。賛否もあろうが、大した男だと思う。彼には、プロリーグ統合のために、もうひと働きしてほしい。

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[追記]

この記事については、いくつかの事柄についての私の誤解・思い違いを指摘するコメントが寄せられています。たいへん論理的で公平な視点からのコメントなので紹介いたします。→ここをクリック


春の如く

2010年04月20日 | 今日の一枚(I-J)

●今日の一枚 257●

Ike Quebec

It Might As Well Be Spring

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 わが東北地方は今日は寒かったのだが、庭の梅は満開で、芝桜も咲き始めた。ふきのとうも大きくなり、ハナミズキやハナカイドウもつぼみがでてきた。確実に春ではある。という訳で、私の頭の中に《春の如く》という言葉が浮かび、CD棚からとりあえず目についた一枚を取り出してみた。

 アイク・ケベックの1961年録音作品、『春の如く』である。オルガン・トリオを従えた、ワンホーン作品である。アイク・ケベックは、1940年代に活躍したテナーマンだが、途中、長いブランクがあり、薬におぼれたり、ブルーノートのスカウトをやったりしていたようだ。バド・パウエルやセロニアス・モンクも実はブルーノートのスカウトだった頃の彼が発掘したアーティストらしい。1950年代末に復活して、ブルーノートに録音を残しているが、1963年肺ガンのためなくなった。

 いい音色だ。ブルージーでソウルフルだが、同時にふくよかで包み込むようなソフトな音色だ。フレージングもなめらかでよどみがない。フレディー・ローチのオルガンが突然、奇抜な音色でいたるところに登場するのがやや耳ざわりだが、これがよいという人もいるのだろう。それを差し引いても、良いアルバムだと思う。

 彼の名はある程度コアなジャズファンには知られているだろうが、一般には決して有名ではあるまい。彼のような聴きやすい、しかも正統派の音楽に一般の人々がたやすく到達できないのは残念である。しかし、ある種の「修行」ののち、理解が深まりのめり込んでいくJAZZという音楽にあっては、それは宿命なのかも知れない。


テンダネス~マイ・バラード

2010年04月19日 | 今日の一枚(K-L)

●今日の一枚 256●

木住野佳子

Tenderness

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 日本のジャズピアニスト木住野佳子の2000年録音作品『テンダネス~マイ・バラード』である。タイトルがいけない。大甘タイトルである。CDの帯の宣伝文句もこうだ。「泣きだしたいくらい、いいアルバムです。せつない涙も、暖かい涙も、みんなここにあります。澄んだ音色のジャズ・ピアノが歌う、初のバラード集。」危険である。要注意盤だ。宣伝文句からきれい系ジャズであることは明白である。なぜ購入したのだろう。よくおぼえていない。きっと癒されたかったのかも知れない。ただ、私は批判的なことをいいつつも、実はこういう宣伝文句に弱いのだ。

 悪いアルバムではない。しかしやはり、きれい系ジャズだ。購入後、数回聴いたきりでずっとCD棚に置き去りにしていた。数年ぶりに聴いてみた。癒されたかったのかも知れない。演奏の速度がいい。ゆっくりとした速度だ。心臓の鼓動、あるいは細胞のリズムに合致する。しかし、なぜかのめりこめない。BGMとしては気分の良いアルバムなのかもしれないが、のめりこめないのである。ピアノの音色に深さがないように感じる。録音がきれい過ぎるのかも知れない。人間は、あるいは人間の心は、そんなにきれいなだけのものではないのだ。もう少し生々しさがほしい。心に突き刺さる、あるいは細胞にしみこんでいく、生々しさが欲しい。しかし、繰り返し言うが、悪いアルバムではない。

 もう少し生々しさが欲しいというのは、何でもエコー処理すれば解決するという世情への反発心かも知れない。やはり何が足りない。何かとは何だろう。それがわかれば、私もジャズを卒業できるかもしれない。


ブロンド・オン・ブロンド

2010年04月18日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 255●

Bob DyLan

Blonde On Blonde

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 昨夜は、次男に付き合いスイミングクラブに入会してプール泳いだ。中学生になった次男がこれまでのようにスイミングクラブに通えず、夜間のコースになったため、その送迎のついでに自分も泳いでみようかと思い立ったのである。水泳は得意だった。小学生の頃は、市内水泳大会で優勝したものだ。地元の島までの遠泳大会で完泳したこともある。だから、自信があった。次男と競争する勢いで得意になって泳いだ。15分ほど泳いで足がおかしくなった。心肺系は全然平気なのに、太ももが固まってしまって動かないのだ。無念のリタイア、ちょっとだけプールサイドで休憩することにした。休憩してもなかなか足は回復しない。休憩しているうち、心肺系もおかしくなり、吐き気がしてきた。結局、レッスン中、泳ぎには復帰できなかった。今朝、早起きした。だいぶ回復したが、まだ心臓のあたりがドキドキしている感じがある。悔しい。負けたくない(誰に?)。来週もがんばろう。今日は、午前中に会長をつとめている地区の「手をつなぐ育成会」の総会がある。午後からはHCを務めている高校女子バスケットボール部の練習に付き合わなければならない。大丈夫だろうか。

     *     *     *     *     *

 ボブ・ディランの1966年作品『ブロンド・オン・ブロンド』である。LP時代には2枚組みだったが、CDでは一枚となった。ボブ・ディランの最高傑作、あるいは少なくとも60年代ディランの最高傑作といわれることの多い作品である。例えば、CDの帯は、「詩人とロックンローラーとしての二面性が見事に結晶した完成度の高い作品で彼の最高傑作とも言われています。様々な人間関係にインスパイアされて生まれた詩の数々は時に複雑で難解ながらも深みのある豊かな出来になりました。ラブ・ソングと断定できる歌についてもウィットや奥深い意味をもち格言ともいえる内容に仕上がっており、ディランがいかに同時代のアーティストの中で抜きん出ていたかが計り知れます。」と賛辞を述べ、たまたま手元にある渋谷陽一『ロック~ベスト・アルバム・コレクション』(新潮文庫)も「詞がシュールリアリスティックなイメージ溢れるものになり、ナッシュヴィルの一流ミュージシャンとアル・クーパーらが作り出した豊かなサウンドと暗喩に満ちたイメージ豊かな詞の世界はディラン芸術の頂点を感じさせるものだ。」と最大限の評価を与えている。

 わからないではない。多分、私も高校生の頃はそんなことを考えながら聴いていたのかもしれない。けれど、今は生活のBGMである。家族が寝静まった深夜に、仕事をしながら、あるいは酒を飲みながら音量を絞って聴く。音量を絞って聴くディランもいいものだ。難しいことはまったく考えない。もう訳詩もほとんど読まない。ただただノリがよく、気分がいいのである。私が考えるのは、いいなあ、やっぱりボブ・ディランは好きだなあ、たまに聴きたくなるんだよなあ、ということだけである。「ローランドの悲しい目の乙女」、いいんだよなあ。


失恋魔術師……青春の太田裕美⑳

2010年04月17日 | 青春の太田裕美

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 1978年に発表された『背中あわせのランデブー』収録の「失恋魔術師」である。アルバム発売から約一ヵ月後にシングルカットされている。作詞は松本隆、作曲はなんと吉田拓郎だ。 

 実に無邪気な、イノセントな曲である。若い女性の日常の断片を切り取っただけの詩である。「あなたの街」の「珈琲ハウス」で待ち合わせをしているものの、相手が本当に来てくれるか心配している女性。その不安な心を描いた詩だ。しかし、心の葛藤を「失恋魔術師」という存在に投影して表現しているところがすごい。恋愛をしている女性の純真さがみごとに表現されている。不安な心の葛藤をシリアスなものとして表現するのではなく、「失恋魔術師」を登場させることによってお茶目な物語仕立てにしているところが新しい。さすがに松本隆である。このお茶目な詩を吉田拓郎の軽快でリズミカルな曲がひきたて、太田裕美の舌足らずで乙女チックな声が絶妙な味付けをしている。太田裕美でなければ表現できないと思わせるような曲である。 

 この女性は、10代の少女かもしれないし、ちょっと大人の20代の女性かもしれない。わからない。しかし、いずれにしてもそれが敢えて明示されないということは、女性というものが年齢にかかわらずもっているそのようなある種の純真さを表現したかったのであろうし、少なくとも、男の(作詞者の松本隆の)そうあって欲しいという願望が表出されたものとはいえよう。 

 1970年代の内向的な女性のあり方を、「失恋魔術師」というツールによって相対化させようという試みが興味深い。不安や葛藤をかかえて自分に閉じこもるのではなく、それを相対化して不毛な苦悩から逃れようするひとつのスキルが現れているのではなかろうか。1970年代から80年代にかけての女性の変化、すなわち内向から開放への過程についてを考えさせられる曲である。

     *     *     *     *     * 

バスは今 ひまわり畑を
横切って あなたの街へ
隣から だぶだぶ背広の
知らぬ人 声かけるのよ
お嬢さん 何処ゆくんだね
待ち人は来やしないのに
いえいえ 聞こえぬ振りをして
知らん顔して 無視してるのよ
その人の名は アー 失恋
失恋魔術師 失恋魔術師

バスを降り 夕映えの町
人波に足を速める
追いて来る 足なが伯父さん
ステッキを招くよに振る
お嬢さん 逃げても無駄さ
不幸とは追うものだから
いえいえ 後ろを向いちゃだめ
恋を失くすと 見かけるという
その人の名は アー 失恋
失恋魔術師 失恋魔術師

こみあった 珈琲ハウスに
こわごわと あなたを探す
空の椅子 西陽が射す中
さよならを物語ってる
お嬢さん 言ったじゃないか
愛なんて虚ろな夢さ
いえいえ 電車の遅れだわ
あっちへ行って そばに来ないで
その人の名は アー 失恋
失恋魔術師 失恋魔術師

遅れたね ごめんごめんと
息をつき 駆け寄るあなた
お嬢さん 私の負けさ
また今度 迎えに来るよ
いえいえ 死ぬまで逢わないわ
おあいにくさま 恋は続くの
早く消えてね アー 失恋
失恋魔術師 失恋魔術師


ブルー・デューク

2010年04月17日 | 今日の一枚(C-D)

●今日の一枚 254●

Duke Jordan

Blue Duke

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 数年ぶりにこのアルバムを取り出した。80年代のデューク・ジョーダン。1983年録音作品『ブルー・デューク』である。何気なく聴いていたら、このサウンド何かに似ているなと思った。サウンドというより、録音のニュアンスだ。例のセンチメンタルなジャケットの1980年代のケニュー・ドリューの作品群の音と似ているのだ。調べてみると、1980年代のケニュー・ドリュー作品もやはりこのRVCレーベルだった。好き嫌いはあるだろうが、特徴のある音だ。ピアノは硬い感じがし、アコースティックベースはちょっと電気的な感じがする。ナチュラルな感じの音には聞こえないが、これはこれでいいんじゃないかという気もする。

 悪いアルバムではない。シンプルなジャケットも好きだ。ライナーノーツは、「円熟さの中に、独特の風格を生み出しているようだ。魅惑的な陰影感とコクのある語り口、光沢をもつタッチ、仄暗いロマンチシズム、躍動感に溢れた歌心、落ち着きのある情感など、若手には求められない味わいだ。」と賛辞の言葉を書き記すが、よくわからない。私はそんなことを考えてこのアルバムを聴いたことはなかったので、しばらくぶりにライナーノーツを読んでみてちょっとびっくりした。それほどだろうか、と思ってしまう。ただ、デューク・ジョーダンがかなり肩の力を抜いて、リラックスして演奏していることは確かなような気がする。リラックスして演奏しているから、リラックスして聴ける。代表曲がたくさん入っていることもあり、私にとっては日常生活の中で気軽に聞ける一枚でだった。日常生活の中で気軽に聞けるということは、考えてみれば、音楽の存在意義の中でも重要な要素ではないか。


Go ! BREX

2010年04月13日 | 籠球

 JBLファイナル。リンク栃木が3連勝で優勝した。信じられない。事前のチーム評価では、私も含め、多くがアイシン優勢と分析していたはずだ。リンク栃木には明らかに勢いがあった。しかし、それだけではない。マッチアップゾーンとそこからの速い展開、そして圧倒的なオフェンス能力でアイシンをねじ伏せてしまったという感じだ。

 第3戦は奇跡としかいいようのないゲームだった。第4Q残り15.7秒で55-52とアイシンがリードしており、残り13.1秒には57-52と5点差に広がっていたのだ。ところが、残り7.2秒には57-55で2点差となり、さらに6.3秒には58-55とまた3点差に広がった。しかし、試合終了直前、川村卓也の3ポイントシュートで58-58の同点に追いつき、オーバータイム(延長戦)となった。ブザーピーターだ。オーバータイムでは勢いに勝るリンク栃木が終始優勢に試合を展開し、結局71-63でリンク栃木ブレックスが日本一に輝いた。

 今年のリンク栃木は、ちょっと神懸っている感じがする。特に第3戦は私の同級生(同い年)のマイケル・ジョーダン君がいた時代のNBAを見ているようだった。川村卓也のオフェンス能力もさることながら、田臥勇太の圧倒的な統率力、スピード、トリッキーかつ正確無比なプレーは、コート上で明らかに群をぬいており、ただひとり別次元の異星人がいるようだった。

 リンク栃木の優勝は、日本のバスケットボールをいい意味で変えていくだろう。多くの企業チームの中で、クラブチームが日本一になった意味は大きい。白熱した応援がそれを物語っている。多くのファンを獲得し、バスケットボールに巻き込んでいくためには、リンク栃木的な地域に根ざしたクラブ化が不可欠だろう。バスケットボールが真にプロ化を目指すならば、ファンと一体となった試合展開が絶対に必要なのだ。その意味でも、今回のファイナルは日本のバスケットボールの今後を考える上でとても重要で示唆的なものだったと思うのだが、それが有料放送のsky A+でしか放送されなかったのは本当に残念である。多くの人にリンク栃木のミラクル勝利とファンたちの白熱した応援を見て欲しかった。

 一方、敗れたアイシンにとっては、いい経験になったかもしれない。かつて他のチームをお払い箱になったプレーヤーたちが団結していた、いわゆる「ファイブ」の頃は、ベンチプレーヤーも含めてチームが一体化し、勝つためにみんなが協力していた。しかし、常勝軍団となるにしたがって、ベンチでの応援はやや低調になり、なりふりかまわないひたむきなプレーは少なくなっていたように思う。今日の第3戦で、しばらくぶりにチームが一丸となって声をだして応援していた姿を、解説者が指摘したのは象徴的であった。

 いずれにせよ、今日は久々に(といっても、今回のセミファイナル・ファイナルは連日こうであるが)、記憶に残る素晴らしいバスケットボールを見させてもらった。


今日の一枚(201~)

2010年04月11日 | 今日の一枚INDEX

  → 今日の一枚(1~100)

  → 今日の一枚(101~200)

201 カーメン・マクレエ The Great American Songbook

202 ビル・エバンス The Bill Evans Album

203 イーグルス Long Load Out Of Eden

204 ジュリー・ロンドン Julie Is Her Name Vol.1

205 アート・ペッバー Art Pepper Quartet

206 キース・ジャレット Paris Concert

207 トム・ウェイツ Closing Time

208 ジョニー・グリフィン The Little Giant

209 ニーナ・シモン At The Village Gate

210 ロイ・ブキャナン Roading Zone

211 チャーリー・ヘイデン First Song

212 ジョバンニ・ミラバッシ Giovanni Mirabassi Trio Live

213 ロバート・ラカトシュ Never Let Me Go

214 マル・ウォルドロン The Quest

215 ライオネル・ハンプトン Stardust

216 チャーリー・ヘイデン & ハンク・ジョーンズ Steal Away

217 ハンプトン・ホーズ Vol.2 The Trio  

218 フィニアス・ニューボーン Jr. The Great Jazz Piano

219 アート・ペッバー Today

220 トム・ウエイツ The heart Of Saturday Night

221 ジョニ・ミッチェル Mingus

222 スティーブ・キューン Remembering Tomorrow

223 ウイングス Venus And Mars

224 セロニアス・モンク & ジェリー・マリガン Mulligan Meets Monk  

225 ジョージ・シアリング & メル・トーメ An Evening With George Shearing & Mel Torme'

226 ジミー・スコット But Beautiful

227 レッド・ツェッペリン House Of The Holy

228 ボブ・ディラン Blood On The Tracks

229 二ール・ヤング After The Gold Rush

230 チャールス・ロイド Forest Flower

231 板橋文夫 板橋文夫アンソロジー WATARASE

232 ジョバンニ・ミラバッシ AVANTI !

233 バド・パウエル Blues In The Closet

234 スタンリー・タレンタイン Straight Ahead

235 ラルフ・タウナー & ゲイリー・バートン Match Book

236 ケニー・ホイーラー Gnu High

237 エリック・ゲイル Island Breeze

238 エリック・ゲイル In The Shade Of Tree

239 エリック・ゲイル In A Jazz TradiTion

240 ケニー・バロン Landscape

241 大貫妙子 Pure Acoustic Plus

242 アート・ペッバー Goin' Home

243 エリック・クラプトン There's One In Every Crowd

244 テディ・ウィルソン For Quiet Lovers

245 ジョニー・ホッジス Blues-A-Plenty

246 ライ・クーダー Chickin Skin Music

247 バディ・デフランコ Autumn Leaves

248 サラ・ヴォーン Best Collection

249 バルネ・ウィラン SancTuary

250 バニー・ケッセル Pole Winners Ride Again !

251 ウェブスター・ヤング For Lady

252 エロル・ガーナー Contrasts   

253 パット・メセニー As Falls Wichita,So Falls Wichita Falls  

 

  

 

 


ウィチタ・フォールズ

2010年04月11日 | 今日の一枚(K-L)

●今日の一枚 253●

Pat Metheny & Lyle Mays

As Falls Wichita , So Falls Wichita Falls

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  寝不足である。昨日の深夜放送のJBL(バスケットボール)ファイナル第1戦・リンク栃木vsアイシンのゲームを見てしまったからだ。いいゲームだった。試合は終始アイシンのリードで進んだが、第4ピリオド、リンク栃木が田臥勇太を中心とした驚異的なオフェンスとゾーンディフェンス(解説では2-3ゾーンといっていたが、1-1-3のマッチアップゾーンだろう)で挑み、安定した実力をもつ王者アイシンを混乱させていった。アイシンという冷静なチームが少しずつかき乱されていく過程がありありとわかり、バスケットボールというスポーツの精神性という側面が顕在化したゲームだった。88-77でリンク栃木先勝。これでファイナルは面白くなった。もともと安定した実力を持つアイシンである。このまま終わることはなかろう。私はもともと、『ファイブ』のモデルともなったアイシンの創立以来のファンだが、今回ばかりはリンク栃木を応援している。JBLのHPによると、第2戦も80-72でリンク栃木が勝ったようだ。録画放送は今日の深夜である(sky A +)。明日は仕事だ。今夜はどうしようか。

 午前中、眠さをこらえながら、ヘッドコーチを務める高校女子バスケットボール部の練習に付き合い、午後、楽天イーグルス対オリックスのゲームをテレビ観戦しているうちに眠ってしまった。目を覚ますと4時をまわっていた。どうやらイーグルスも勝利したようだ。戸外は陽気もよく、穏やかな夕暮れに向かっている。遠くで子どもたちが遊ぶ声がする。そんな静かな夕暮れへとむかう時間の中でまどろんでいるうちに、パット・メセニーのこのアルバムを思い出した。

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 パット・メセニー & ライル・メイズの1980年録音作品いわゆる『ウィチタ・フォールズ』である。私の、ずっと以前からの、そうほとんど発表以来からの愛聴盤である。パット・メセニー・グループも含めて、ライル・メイズとパット・メセニーの共作には、いつも映像的なイメージを感じさせられるのだが、この作品はとくにそうだ。印象的なアルバムジャケットが示唆するモノトーンのイメージが想像力を掻き立て、頭の中では次々に映像的な世界が現出する。

 このアルバムが思い浮かんだのは、③ As Falls Wichita,So Falls Wichita Falls の終りにでてくる子どもたちの声のためだろうか。それとも、ビル・エヴァンスに捧げた ③ September Fifteenth の穏やかで哀しみを湛えた美しい調べが、夕暮れ時をイメージさせるからだろうか。あるいは、⑤ Estupenda Graca の美しいヴォイスが、終わりにむかう何かを暗示しているように感じるからだろうか。


ミスティーのオリジナル演奏

2010年04月10日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 252●

Erroll Garner

Contrasts

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 JBL(バスケットボール)の2009-2010シーズンセミファイナル、パナソニックvsリンク栃木は歴史に残るほどの名勝負だった。試合は終始パナソニックリードで展開し、第4ピリオド残り5分20秒の段階で66-77と11点の差があった。しかし、ここからリンク栃木の怒涛の反撃がはじまる。田臥のワンマン速攻と物凄いストップジャンプからの3ポイントシュートで、残り2分42秒で79-74、さらに田臥の3ポイントで2分05秒には77-79、残り1分03秒には田臥のキラーパスから外国人選手⑫のダンクシュートでついに79-79と負いついた。そして最後は、残り39秒、田臥のパスから①川村卓也のミドルシュートで81-80となり、リンク栃木が勝利した(詳しい試合展開は→こちら)。

 ゲーム自体も面白かったが、地域をあげて応援しているようなリンク栃木のファンの盛り上がりもすばらしかった。ファンの応援の後押しが勝利の要因の1つであるといっても過言ではない。JBLはプレーの質は高いものの、地域に根づいたリーグとはなっておらず、その点bjリーグに一歩譲るのだが、リンク栃木のあり方はこれからのJBLを考えるにあたって一石を投じるものといえるように思う。今後、JBLとbjリーグは統合も含めて話し合いに入るというが、是非実現させて欲しいものである。

 しかしそれにしても、田臥のバスケットは面白い。単にうまいだけでなく、魅せるものがある。有料放送のskyA+だけでしか彼のプレーを見れないのは本当に残念だ。今日からはいよいよ、ファイナルだ。アイシンvsリンク栃木。王者・アイシンの方が優勢だろうが、リンク栃木が展開の速いバスケットでどう挑むか。本当に楽しみである。それにしても、JBLファイナルを深夜の録画放送でやるとはどういうことだ。生放送でみたい。

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 今日の一枚は、エロル・ガーナーの1954年録音作品『コントラスツ』。佳曲「ミスティー」のオリジナル演奏が収録されているアルバムである。いい曲だ、本当にいい曲だ。優美で美しい。しかし、この演奏は短すぎはしないか。うっとりしている間に曲は終わってしまう。感動の時間はあっという間だ。

 まったく独習でピアノをマスターし、読譜の知識もなかったといわれるエロル・ガーナーの演奏をうまいとは思わないが、やはり音楽的才能のある人だったのだろう。「ミスティー」は、ガーナーが飛行機で窓の外の深い霧を眺めていた時、ふとメロディが思い浮かび、ホテルに着くなりピアノの前に駆けつけ作曲したのだという。