◎今日の一枚 343◎
Stan Getz
Voyage
3連休は久々に完全に休んだ。さらに夏にほとんど無休で働いた代休を3日ほどぶつけて、完全休業をきめこんでいる。いい身分だ。とはいっても、やらなければならない仕事があり、半日は職場に行っているのだけれど・・・・。
書斎の天窓をあけて、青い空と白い雲を見ながら音楽を聴いている。こんなにゆっくりできているのは何か月ぶりだろうか。みんなが働いているのにこんなにのんびりして、ちょっと後ろめたい気持ちもあるが、とりあえずは気分がいい。
さあて何を聴こうかと迷った挙句、やはり今日はこれだ、と選んだのが、Stan Getzの1986年録音作、『Voyage』である。LP時代、レコード会社の関係だろうか、早い時期に廃盤となり、幻の名盤と呼ばれていた作品である。ずっと若い頃、手に入れようと何度も探したのだが見つからず、そのうち忘れてしまった。それでもどこか頭の片隅にあったようだ。たまたまwebで見つけて、ハッとし、購入したのはほんの1か月ほど前のことだ。
パーソネルは、
Stan Getz(ts), Kenny Barron(p), George Mraz(b),
Victor Lewis(ds), Babatunde(congas), の5人。
何という穏やかさだろうか。青い空と白い雲にはベストマッチなジャズだ。白い雲とともに、時間がゆっくりと流れていくようだ。自分自身を取り戻したと感じるのはこんな瞬間だ。何か、自分の細胞と世界がフィットしたような気分になる。私は世界の一部として包まれている。ありきたりだけれど、人生のいろいろな「うまくいかないこと」が些細なことのように思えてくる。もちろん、それでいろいろな問題が解決するわけではないのだけれど・・・・。
ゲッツのテナーは本当に穏やかな音色だ。決して深淵な音ではない。けれども、確実に人に安らぎを与えるような種類の柔らかで穏やかな音だ。私が好きなのは、④Dreamsと⑤Falling In Love。それから冒頭の①I Wanted To Sayもいい。ゲッツの柔らかで穏やかなテナーがふわふわした感じを与えず、サウンドに安定感をもたらしているのは、間違いなく、ジョージ・ムラーツのベースだ。柔らかな音色だけれど、しっかりとした芯のあるベースの音だ。ケニー・バロンのピアノも、もちろん瑞々しくて素晴らしい演奏だ。ただ、後の、例えば、『People Time』における演奏のような、ゲッツとの緊密な連動性はまだないように思う。しかし、そこに、そう『People Time』における演奏へと、間違いなく向かっている演奏だ。
もう1時間もすれば、世界は薄暗くなり、日暮れとなるだろう。ちょっと残念だが、もうすこしだけ、この青い空と白い雲のもと、穏やかな気持ちでゲッツを聴いていたい。
やっぱり、私はゲッツが好きだ。