WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

やっぱり、ゲッツが好きだ!

2013年09月25日 | 今日の一枚(S-T)

◎今日の一枚 343◎

Stan Getz

Voyage

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 3連休は久々に完全に休んだ。さらに夏にほとんど無休で働いた代休を3日ほどぶつけて、完全休業をきめこんでいる。いい身分だ。とはいっても、やらなければならない仕事があり、半日は職場に行っているのだけれど・・・・。 

 書斎の天窓をあけて、青い空と白い雲を見ながら音楽を聴いている。こんなにゆっくりできているのは何か月ぶりだろうか。みんなが働いているのにこんなにのんびりして、ちょっと後ろめたい気持ちもあるが、とりあえずは気分がいい。 

 さあて何を聴こうかと迷った挙句、やはり今日はこれだ、と選んだのが、Stan Getzの1986年録音作、『Voyage』である。LP時代、レコード会社の関係だろうか、早い時期に廃盤となり、幻の名盤と呼ばれていた作品である。ずっと若い頃、手に入れようと何度も探したのだが見つからず、そのうち忘れてしまった。それでもどこか頭の片隅にあったようだ。たまたまwebで見つけて、ハッとし、購入したのはほんの1か月ほど前のことだ。

 パーソネルは、

Stan Getz(ts), Kenny Barron(p), George Mraz(b),

Victor Lewis(ds), Babatunde(congas), の5人。

 何という穏やかさだろうか。青い空と白い雲にはベストマッチなジャズだ。白い雲とともに、時間がゆっくりと流れていくようだ。自分自身を取り戻したと感じるのはこんな瞬間だ。何か、自分の細胞と世界がフィットしたような気分になる。私は世界の一部として包まれている。ありきたりだけれど、人生のいろいろな「うまくいかないこと」が些細なことのように思えてくる。もちろん、それでいろいろな問題が解決するわけではないのだけれど・・・・。

 ゲッツのテナーは本当に穏やかな音色だ。決して深淵な音ではない。けれども、確実に人に安らぎを与えるような種類の柔らかで穏やかな音だ。私が好きなのは、④Dreamsと⑤Falling In Love。それから冒頭の①I Wanted To Sayもいい。ゲッツの柔らかで穏やかなテナーがふわふわした感じを与えず、サウンドに安定感をもたらしているのは、間違いなく、ジョージ・ムラーツのベースだ。柔らかな音色だけれど、しっかりとした芯のあるベースの音だ。ケニー・バロンのピアノも、もちろん瑞々しくて素晴らしい演奏だ。ただ、後の、例えば、『People Time』における演奏のような、ゲッツとの緊密な連動性はまだないように思う。しかし、そこに、そう『People Time』における演奏へと、間違いなく向かっている演奏だ。

 もう1時間もすれば、世界は薄暗くなり、日暮れとなるだろう。ちょっと残念だが、もうすこしだけ、この青い空と白い雲のもと、穏やかな気持ちでゲッツを聴いていたい。

 やっぱり、私はゲッツが好きだ。


考えごとをしながら聴く音楽

2013年09月16日 | 今日の一枚(G-H)

◎今日の一枚 342◎

 George Winston

 Autumn(20th Anniversary Edition)

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 懐かしいアルバムだ。「ウインダム・ヒル」。1980年代に一世を風靡したレーベルだ。このレーベルの作品も一時期よく聴いたものだ。今でも、カセットテープに録音したものを結構たくさん持っている。当時はこういうのをニューエイジ・ミュージックって呼んでいたんだっけ。 

 1980年リリースのジョージ・ウィンストン『オータム』は、ある意味でそんなニューエイジ・ミュージックを代表する作品だろう。20th anniversary edition盤のCDをたまたまwebで発見して懐かしくなり、カセットデッキが壊れたためテープを聴けなかったこともあって、衝動買いしてしまったのは1か月程前だったろうか。。 

 しかし、どういうだろう。心がまったく動かない。確かに懐かしいサウンドではあるし、耳になじんだメロディーたちなのだが、刺激の少ないつまらない音楽にしか聴こえない。何かすごくよそよそしく、ひどく外在的な感じがする。これはいったいどういうことだ。結局、このCDはしばらくの間、私の書斎の片隅に放置されることになってしまった。  

 今日、ちょっとした考えごとがあって、書斎でじっと考えていたのだが、たまたま机の端にあったこのCDを何気なくCDプレーヤーのトレイにのせた。まあ、煮詰まった時のBGMだ。えっ・・・・不思議だ。少しずつ心が溶けてゆく。まったく心が動かなかったサウンドの芯のようなものが、ゆっくりと心に届いてくるような気がする。 

 そうだった・・・・・。思い出した。ウインダム・ヒルを聴いていた大学生の頃、それらのサウンドは、ちょっと難解なことを考えるときのBGMだったのだ。中世史の論文を読む時、フーコーやドルーズやロラン・バルトを読む時、あるいはアパルトヘイトやアナール派について考える時、ウインダム・ヒルのサウンドは確かに私の傍らで流れていた。

 それが正しい聴き方かどうかはわからない。しかしどうやらウインダム・ヒルは、私にとって、考え事をしながら聴くサウンドであるようだ。通常、私は、音楽を聴くと気が散って、本を読んだり、仕事をしたりができない。そんな私には、ちょっと珍しいことだ。「ウインダム・ヒル」の一連の作品は、思考を邪魔しないのだ。

  たぶんそれも、音楽の力なのだろう。

そういえば、この『オータム』に入っていた有名曲の「愛/あこがれ」は、昔、三軒茶屋の名画座で見たポルノ映画で使われていたっけ。

あのポルノ映画のタイトルはなんだったのだろう。思い出せない。


おとな買いをしてみた!

2013年09月16日 | 今日の一枚(E-F)

◎今日の一枚 341◎

 Eagles

 The Studio Album 1972-1979

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 おとな買いっていうのだろうか。あまり懐かしくて買ってしまった。安かったからだ・・・。

 イーグルスの1972年のデビューアルバムから1979年の最後のアルバムまで、6枚で2100円也だ。BOXセット、「Eagles  The Studio Album 1972-1979」。もちろん輸入盤である。まあ中身はジャケットの中にCDが裸で入っているような代物だが、音質はそんなに悪くはないのではないかな。アコーステックギターの響きも鮮度があるし、左右チャンネルの分離加減もなかなかいい。6枚で2100円じゃなかったらきっと買わなかったと思うが、ちょうど「ホテルカリフォルニア」なんかをカーステレオで聴きたいなって思っていたところだったし、昔、ちきんと聴きこんでいなかったアルバムもあったし、お買い得だったんじゃないかな。

 BOXに入っているのは、1970年代のイーグルスの全スタジオ盤。

「Eagles(イーグルス・ファースト)」(1972)
「Desperado(ならず者)」(1973)
「On The Border(オン・ザ・ボーダー)」(1974)
「One Of These Night(呪われた夜)」(1975)
「Hotel California(ホテル・カリフォルニア)」(1976)
「The Long Run(ロング・ラン)」(1979)

の6作だ。

 こうやってみると、「ロング・ラン」以外は1年に1作のペースでアルバムを発表していたんだね。「ホテル・カリフォルニア」から「ロング・ラン」までが約2年半。やはり、よく言われるように、「ホテル・カリフォルニア」でウエストコーストロックの頂点を極めた後、周囲の期待に対する大きなプレッシャーがあったのだろうか。そのプレッシャーの中で、結果的に最期のアルバムとなった「ロング・ラン」は作られた、ということなのだろうか。

 というわけで、ここ2週間程、昔懐かしのイーグルスを中心に聴いている始末です。個々のアルバムについては、そのうち批評めいたことを書ければいいなと思っています。

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 上の写真はラップに貼ってあったシール。こんな宣伝文句が書かれていた。「モーレツからビューティフルへと時代が変わりつつあった70年代-アメリカンドリームに憧れ、ほろ苦い青春を送る僕らの傍らには、常に彼らの音楽があった。」

 ちょっと陳腐すぎる宣伝文句だ。けれど、陳腐だと思いながら、なんとなく感慨を感じてしまう私は、やはり、おじさんなのだろうか。