WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

やはり、明成が負けた!

2011年06月18日 | 籠球

 宮城県高校総体男子バスケ、昨年のIH準優勝校の明成高校が決勝で東北学院に敗れた。84-64、20点差である。新人戦でも敗れているので、「やはり」、というべきなのだろうか。今回の高校総体は震災の影響で一般のファンをシャットアウトして開催されたので生で観戦することは出来なかったが、幸いというべきか、You TubeにビデオがUPされており、ゲーム内容を知ることができた。

 驚きだ。明成の完敗である。ディフェンス、運動量、スピード、リバウンド、シュートの精度などほとんどすべての面において東北学院の方が明らかに勝っている。明成のゾーンディフェンスもほとんど機能しなかった。はっきりいって、もっと点差がついても不思議ではないゲーム内容だ。

 パンフレットのメンバー表には名前がなかったようだが、噂の中学日本代表のスーパー1年生たちはプレイしていたのだろうか。webの掲示板などをみると出ていたようである。まあ、スーパー1年生とはいっても、ついこの間までは中学生だったのだ。全中上位進出メンバーを中心に高校で鍛え上げられた東北学院には及ばなかったということだろうか。

 それにしても、このゲームの明成のバスケットは解せない。数年前までの目くるめくようなパッシングゲーム、モーションオフェンスは一体どこにいったのだろうか。多くの選手がパスをしたあと立ちどまり、パスの流れが悪い。ボール保有者が、立ちどまってレシーバーを探している場面さえ何度もみられた。また、インサイドを起点にした攻撃はほとんど見られず、逆サイドに展開する攻撃も少なかった。外を回して④藤井の遠距離シュートというパターンが目立ち、苦し紛れのシュートも少なからずあった。全体的な印象としては、④藤井の孤軍奮闘という感じだ。準決勝までのゲーム内容は不明であるが、聖和学園などによく勝ったなと思ってしまうほどだ。

 名将といわれる、佐藤久夫コーチのこと、スーパー1年生を鍛えてまた全国トップを狙うチームをつくってくるものと信じているが、昨年のチームもモーションオフェンスが有効に機能していなかった、というかやらなかったようにみえるのが気にかかる。モーションオフェンスは強靭な脚力が必要であり、確かに、これまでにも全国大会の上位戦で、終盤、足が止まってしまったり、パターンを読まれたりして、逆転を許してしまうケースがあったように思う。高いレベルで完成させるのは、本当に難しいということなのだろう。しかし、それが有効に機能したときの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。

 外国人の長身プレーヤーを有する有力校に対抗するためには、精度の高い外角シュートが必要なことはもちろんだが、変幻自在でタイトなディフェンスと、モーションオフェンスによるスピード感のあるバスケットが重要だと思う。もう一度、明成高校のスピード感のあるモーションオフェンスを見たい。


明成が負けた!~宮城県高校バスケ新人大会~

2011年01月19日 | 籠球

 先日行われた平成22年度宮城県高校バスケットボール新人大会において、全国的にも有名なあの明成高校(男子)が準決勝で聖和学園(男子)に敗れるという「波乱」があった。しかも、83対56(19-15, 19-10, 25-19, 20-12)の大差での敗戦である(大会結果は→「2011sinzin_keka.xls」をダウンロード )。残念ながら観戦できなかったので試合内容は不明であるが、スコアをみると、終始、聖和学園が優勢だったものと思われる。「波乱」と記したが、仙台地区予選でも聖和学園に1点差で辛勝したことを考えれば、「波乱」とはいえないのかもしれない。(仙台地区予選→「2010senen.xls」をダウンロード

 もちろん、聖和学園も強いチームだが、何かおかしい。ウインターカップにおいても、明成は2回戦で沼津中央に敗れた。結果的には、外国人留学生にやられたような印象であるが、ゲーム自体は明成が負けるような展開ではなかったように思う。事実、TVの解説者も、第3ピリオドまでは明成の勝利を当然のことと考えているようなニュアンスで発言していた。ところが、第4ピリオド、あれよあれよという間に逆転を許し、負けてしまった。試合巧者の明成にしては、まったく奇怪なゲームだった。当の外国人留学生のインサイドのプレーに対しても有効な対策を立てたようには見えなかったし、何よりお家芸のモーションオフェンスが十分に機能しなかった。というより、アウトサイドプレーヤーが立ち止っていることが多いように思えた。噂では、ウインターカップ県予選でも、明成高校の名将・佐藤久夫監督が、かつての教え子である仙台高校の監督と大ゲンカをしたと聞く。やはり、何か変だ。明成高校に、あるいは佐藤久夫監督に何があったのだろうか。私の思いすごしだろうか。

 新聞によれば、明成高校には今春、中学日本代表の選手が6人入学してくるとのことだ。中学日本代表とはU-16のことだろうか。それにしても6人とはすごい。すごすぎである。明成高校はきっとまた強くなるのだろう。せっかく追いついた東北学院や聖和学園は、勝てなくなるかもしれない。しかし、それにしてもである。つまらない。かつて佐藤監督は仙台高校を率いて、「普通の子」たちで日本一になった。彼らが本当に「普通の子」かどうかは議論があろうが、県内の選手中心で全国制覇したことは事実である。佐藤久夫監督のバスケットは大好きだが、勝てないから他県から有力選手をおおぜいつれてきたと考えてしまうと、ちょっと魅力半減だ。もちろん、時代はセネガルなど黒人の外国人留学生のオンパレードだ。勝つためには甘いことをいっていられないのはわかる。しかし、『普通の子たちが日本一になった!』(日本文化出版)を書いた名将・佐藤久夫監督だからこそ、一念発起、本当に「普通の子たち」で、もう一度日本一になってほしい。

 なお、大会は、東北学院が延長戦の末、87-83で聖和学園を破り優勝した。

     *     *     *

2011宮城県高校総体については → 「やはり、明成が負けた!」


ウインターカップ2010雑感(男子)

2010年12月30日 | 籠球

 北陸が初優勝をとげた。万年ベスト4の印象が強かったが、優勝できて良かったですね。正直いって、以前から北陸はあまり好きなチームではなかった。長身の中国人留学生を中心とするオフェンスパターンのためだろうか、人もボールもあまり動きがなく、スタティックな印象を受けてしまうのである。また、奇抜でやや大きめのチームジャージやユニホームのせいだろうか、選手たちが全体的にだらしなく感じてしまうのだ。ただ、キャプテンの優勝インタビュー談話はしっかりしたものだったので、私の単なる偏見というべきだろう。中国人長身選手、⑨リュウの活躍は当然のことながら賞賛されるべきであろうが、もうひとりの長身選手⑩野本も、中間距離からの精度の高いシュートとしなやかさを備えており、将来楽しみな選手である。しかし、何といってもゲームの流れを変え、勝利に貢献したのは、④藤永、⑤田野というツーガードだったと思う。彼らの粘り強く、抜け目のないディフェンスは随所でチームを救い、特に隙あればボールを狙ってくるそのハンドワークは何度もターンオーバーを誘発して、ゲームの流れを決定付けた。

 準優勝の福岡第一は、昨年までのセネガル人選手を中心とした攻めから、ガード・フォワード中心の走るチームへと大きく変貌していた。正直いって、セネガル人選手が例年より見劣りする今年のチームがここまでやるとは思っていなかった。決勝では⑦長島エマニエル選手がやや不発だったのが残念だった。強豪中学から能力のある選手も来ているようだし、ここまでできるのなら、いっそのこと外国人なしで勝負したらどうだろう。もっと多くのファンが素直な気持ちで応援できると思うし、学校としてもイメージアップとなるのではないだろうか。福岡県予選の福岡大大濠との戦いはもっと熾烈なものになるだろうが……。

 3位に入った京北もなかなかよかった。しばらくぶりに、ランアンドガンの京北バスケを堪能させてもらった。ただ、やや選手の個人能力に頼りすぎる傾向があり、⑭田渡がボールをもつと、それまでよくまわっていたボールがとまってしまうことが気になった。それでも⑭田渡が好調の時はいいのだが、準決勝、3位決定戦では、田渡の不調、というかシュートが入らないことが明らかにチームが失速した原因となっており、彼のシュートミスから相手の速攻を許してしまうといったシーンが繰り返された。3位決定戦後の監督の談話によると、足の疲労骨折とアキレス腱の負傷を抱えての戦いだったようであり、その意味ではかわいそうだった。本来、⑭田渡は小柄ながら非常に能力の高い選手であることは衆目の一致するところであり、来年もまたがんばって欲しい。199cmの長身選手⑩皆川は将来が楽しみな選手である。長身ながら、走れる選手であり、しなやかさも兼ね備えている。北陸の野本もそうだが、将来Japanを支える選手になってほしい。⑩皆川が抜けた来年の京北は、はっきりいってやや苦しくなるだろう。

 4位の市立船橋は今回あまり注目してこなかったのだが、準決勝・3位決定戦の戦いは見事である。200cm級の選手をもたないこのチームがこの活躍をしたことは賞賛に値する。もっとこのチームに注目しておけばよかった。J-Sportsの再放送で、このチームを緒戦から視てみたい、と思わせるゲームはこびだった。3位決定戦では、リードを奪っておきながら、京北の怒涛の反撃、気迫のディフェンスの前に、やや選手たちが弱気になってしまい、チーム全体が混乱してしまったような印象だった。本当に残念なゲームだった。ただ、他のチームについてもいえることではあるが、眉毛を剃っている選手が若干多かったように思うのは気のせいだろうか。プレーには直接関係のないことかも知れないが、ファンとしては素直な気持ちで応援できなくなる。

 最後に、能代工、どうした。能代工がんばれ……!

     *     *     *

     →ウインターカップ2010雑感(女子)

     →ウインターカップ2010前半戦雑感(男子)


ウインターカップ2010雑感(女子)

2010年12月29日 | 籠球

 札幌山の手が優勝した。予想通りだ。全試合を大差で勝ち抜いた貫禄の勝利である。インサイドとアウトサイドのバランスがとれ、ディフェンスもよく、しかも走れる素晴らしいチームだった。試合前のアップでやっていた、厳しいチェックの中で3ポイントシュートを打つ練習が、そのまま試合で再現されていた。決勝では注目のインサイドプレーヤー⑮長岡が歴代2位となる一試合50得点をたたき出したが、それは強力なアウトサイド陣がディフェンスを外に広げた結果でもある。インサイドを固めて⑮長岡を封じようとすれば、シューターが外から射抜くということになっただろう。

 準優勝の中村学園もなかなかいいチームだった。インターハイ準優勝チームながら、私ははっきりいって決勝まで上がって来るとは思わなかったのだが、やはりその実力は本物だったということなのだろう。一年生ガードの⑯安間を中心に攻撃・守備ともよく鍛えられたチームだった。ただ、中学時代のスタープレーヤーたちが集まったチームながら、インサイド・アウトサイド陣とも札幌山の手と比べるとやや見劣りしたのも事実である。⑯安間のプレーには目を見張るものがあったが、決勝では「粗さ」のようなものが露呈してしまった。札幌山の手のディフェンスを賞賛すべきであろう。

 3位となった東京成徳も意外だった。昨年までのような絶対的な存在感のあるセンターは不在で、やや小粒な印象を受けたのだが、190cmの中国人センターを擁する第4シード明成を大差で撃破し、劣勢かと予想された王者・桜花学園をも下したチーム力は、やはり本物というべきだろう。エースの⑦石原の活躍はもちろん見事だったが、私には⑥森のひたむきなプレーが印象に残った。

 4位の大阪薫英も見事だった。正直言って、伝統のある強豪校ながらあまり注目していなかったのだが、タイトで抜け目のない、粘り強いディフェンスを身上とするこのチームは、試合を見るごとに応援したい気持ちが増幅していった。私好みのチームだ。やはり、準決勝の中村学園戦でエースの④坂井が負傷してしまった事がなんといっても残念だ。実際、中村学園戦も④坂井がケガで退くまでは一進一退だったのであり、中村学園を破るチャンスは十二分にあったというべきだろう。3位決定戦でも、エースを欠きながら全員が一丸となってよく戦った。ベンチスタートだった⑥吉川の攻守にわたるがんばりは特筆すべきだろう。一年生センターの⑭畠中も将来楽しみな選手である。

     *     *     *

     →ウインターカップ2010前半戦雑感(男子)

     →ウインターカップ2010雑感(男子) 


ウインターカップ2010前半戦雑感(男子)

2010年12月27日 | 籠球

 ウインターカップをTVで楽しんでいる。第一シードの八王子、第二シードの明成が二回戦(緒戦)で敗れるという波乱があり、また既述のように、組合せの関係で早い段階から実力校同士が潰しあったこともあり、やはり上位の勢力地図は大きく変わりそうである。

 注目していた地元・東北学院は3回戦まで勝ち進んだものの京北に惜しいくも敗れた(といっても大差だったが……)。心配されたように、京北・皆川選手の高さ(199cm)が大きな壁となったと思うが、全体的にもディフェンスやスピードで京北の方が一枚上手だったと思う。特に、京北のトランジションとファーストブレークは、かつての能代工を思わせるほど速かった。完敗である。しかし、解説者のコメントからもわかるように、No5をつけて登場した冨永選手の能力は全国的に認められたようである。京北の田渡選手などに比べるとややプレーが雑だった気もするが、スピードとテクニックは全国的にも驚嘆すべきものだったと思う。

 それにしても感じるのは、例年にも増して、セネガルなどの外国人を要するチームの勢力拡大である。明成、能代工は外国人選手をとめられずに撃沈し、北陸は相手外国人選手のファールトラブルが勝利に幸いした。それがなければ、はっきりいって北陸は危なかったかも知れない。ベスト8のうち沼津中央、岡山学芸館、福岡第一には黒人選手がおり、北陸には中国からの留学生がいる。東海大三のザック選手は出身中学からみて日本国籍なのだろうか。

 贔屓のチームの多くはすでに敗れ去り、その意味では楽しみも半減してしまったが、外国人選手不在の京北、新潟商、市立船橋が外国人選手を擁するチームとどう戦うのか、注目される。特に、ハーフコートオフェンスにやや不安は残るものの、長身日本人選手を擁し、スピードとシュート力もある京北は面白いかも知れない。

 かつての洛南などのように、苦労して外国人選手を打ち破るバスケットが見たい。

     *     *     *

     →ウインターカップ2010雑感(男子) 

     →ウインターカップ2010雑感(女子)


突然の休刊

2010年12月05日 | 籠球

Scan10010 Scan10008

 *     *     *     *     *

 毎月購読している『バスケットボール・マガジン』が、突然、今月号で休刊だという。先月号までそんなことはどこにも書いていなかったのにあんまりである。広告記事やスタープレーヤの人気取り記事が少なく、バスケットボールのファンダメンタルとフィロソフィーにしっかりと取り組んできた同誌だっただけに惜しまれる。私は、19年前に創刊されて以来の読者だった(一時ちょっとだけバスケットボールからはならており、読まない時期があったが……)。参考になる連載も数多く、毎号楽しみにしていたものもあった。ここ数年連載されている「イチから始めるチーム作り」や「困った時の処方箋」などもそのひとつである。ああ、本当に残念だ。

 やはり、部数が減少していたのだろうか。指導者を対象にしたような硬派な編集姿勢だったので、マーケットには限界があったのだろうか。今後は、『熱中!バスケ部』なる雑誌の強化をはかるのだという。確かに、他社の発行する『中学高校バスケットボール』は売れているようであり、実際私も買っている。中高生対象の手っ取り早い練習メニューなどが多く掲載されいて便利であり、取り上げる話題もとっつきやすい。売れるのはよくわかる。世の中全体が、そういった《とりあえず実用的》な方向にシフトしているのだろう。ただ、ファンダメンタルを重視し、なぜそうしなければならないのかということを、しっかりとしたフィロソフィーを背景として説明する『バスケットボール・マガジン』の硬派な編集姿勢は、薄い雑誌ながら他の追随を許さないものがあったと思う。

 バスケットボール素人だった私は、この雑誌から教わったものは多い。その意味では感謝したい。しかし、いくらなんでも突然すぎはしないか。


ウインターカップの組み合わせが決まった【女子編】

2010年11月26日 | 籠球

 平成22年度全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(通称 Winter Cup 2010)の組み合わせが決まった。昨日の男子に続いて女子バスケについても少しだけ言及したい。(公式サイト組合せ→男子女子

 やはり、インハイの覇者、札幌山の手(北海道)が優勝最右翼にみえる。長身センター長岡を中心にアウトサイドにもクイックネスとシュート力のあるプレーヤーをそろえ、ディフェンスも非常にタイトである。そして何よりよく走る。夏のインハイの結果を見ても、相手に大きな差をつけての勝利であり、優位は動かない。ただ、高校生はちょっとしたきっかけで大きく崩れることもよくあり、油断は禁物だ。この第1シードの山では対抗できるチームはないのではないか。個人的には、ウインターカップ3年連続ベスト4で大沼(妹)を擁する山形商(山形)に注目したいのだが、札幌山の手の前ではやや小粒に見えてしまう。

 第2シード中村学園(福岡)はよくわからないが、インハイで準優勝したことを考えてもなかなかやりそうだ。アシスタントコーチの平岡さんは、つい数年前まで我が宮城の石巻商で指導していた人なので応援したい。このブロックにはノーシードに聖カタリナ(愛媛)もいるが、私が注目したいのは、U-18トップエンデバーにも選ばれたオールラウンダー木工を擁する足羽(福井)である。毎年、タイトなディフェンスを武器に「がんばるバスケット」を展開する公立高校の足羽には、なぜか声援を送りたくなる。

 U-18日本代表の中心選手、センターの宮澤夕貴を擁する第3シードの金沢総合に、私は最も期待している。というか、Hコーチの知将・星澤純一先生に注目している。もう20年ほども前のことだが、星澤さんの講演と簡単な実技指導を受けたことがある。加藤貴子を擁して全国制覇したすぐ後のことだ。バスケ素人だった私だが、バスケットボールというスポーツの魅力を教わり、目が開かれた気がした。日本一のチームの指導者だが、基本的スキルを重視して、考えるバスケットをめざす姿勢に、また、「野蛮な」体育会的体質ではなく、どこか知的で、バスケットボールを通して人間の生き方を教えようとする教育者としての星澤さんにすっかり魅了されたものだ。以来、星澤さんのチームにはずっと注目しているのだが、定年退職をまじかにひかえ(あと1年?2年?)、かなり熱が入っているようだ。何かで読んだのだが、教え子のバスケ部OGが交通事故(?)で亡くなり、彼女のためにも優勝をその墓前にささげたいのだという。実際、これまでの星澤さんは試合中立ち上がったりせずに、タイムアウトもほとんどとらないことで有名だったが、先のインハイでは立ちっぱなしで大きな声で檄を飛ばしていたらしい。このブロックで他に注目されるのは、インハイで準優勝の中村学園にわずか3点差で敗れた大阪薫英(大阪)、6月の東海大会であの桜花学園に勝ったという岐阜女子(岐阜)あたりだろうか。

 第4シードの明成(宮城)もそこそこがんばるだろう。宮城県大会の決勝は、見ごたえのあるなかなかいいゲームだった。インハイでベスト4まで進出した明成は、190㎝を超える中国人留学生を中心としたチームだが、ディフェンスやクイックネスあるいは機動力やシュート力では、聖和学園のほうがやや上かとも思った。しかし、明成のガード、フォワード陣も勝負所でディフェンスをかなりがんばり最後は聖和学園を突き放した感じだった。インサイドとアウトサイドの歯車がかみ合えば、再び上位進出も可能だろう。ただ、このブロックには昨年度準優勝の東京成徳(東京)や、一ノ瀬和之監督率いる埼玉栄(埼玉)、そして逆サイドにはあの常勝集団、桜花学園(愛知)もいる。特に、インハイで札幌山の手に90-61と完敗した桜花学園は、リベンジに燃えているはずである。U-18トップエンデバーにヒル理奈はじめ数名が選出されている桜花学園は、もともと実力のあるチームだ。名将・井上監督のもと、必ずや立て直してくるに違いない。我が宮城代表の明成が上位進出するためには、これらのチームを倒さねばならない。

 ウインター・カップ2010は、12月23日からはじまり、女子決勝は12月28日である。今から本当に楽しみだ。

オフィシャルサイト


ウインターカップの組み合わせが決まった【男子編】

2010年11月25日 | 籠球

 平成22年度全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(通称 Winter Cup 2010)の組み合わせが決まった。(公式サイト組合せ→男子女子

  先日、このブログで取り上げた宮城県代表の東北学院高校は、一回戦・日本航空高校(山梨)との対戦だ。もちろん簡単な相手ではないが、東北学院の実力も本物。是非ともがんばってほしい。うまく勝ち上がっていければ、3回戦で第4シードの京北(東京)と対戦する。実現すれば、面白い試合になりそうだ。注目のガード京北・田渡と東北学院・冨永のマッチアップは見ものかもしれない。

 ところで、先のインターハイで多くの番狂わせ(?)がおきたため、今年はこれまで実力校と目されてきたチームがノーシードとなり、比較的早い段階から実力校同士の対戦が予想される。上位は例年とは違う勢力地図になりそうだ。

 組合せ表を一瞥すると、2回戦からインハイ優勝校で第一シードの八王子(東京)と上位常連校の北陸(福井)がぶつかる可能性が高い。八王子は外国人センターに加え、アウトサイドプレーヤーのシュート力もなかなかだが、インハイをみた限りでは圧倒的な強さは感じなかった。はっきりいって、北陸が勝つチャンスは十二分にあるだろう。同じく2回戦であたる新潟商(新潟)vs中部第一(愛知)も好カードだ。愛知といえば、かつて存在感のあった愛工大名電はどうしたのだろう。激戦区愛知を勝ち抜いた中部第一も弱いわけがない。同じく2回戦では京北(東京)vs洛南(京都)も予想される。上位常連校の洛南だが、今年は地区予選でかなり苦労したようであり、注目のガード田渡を擁する古豪・京北との対戦は興味深い。同じく2回戦、延岡学園(宮崎)vs光泉(滋賀)も実現すれば見ものである。名将・北郷監督率いる延岡学園の近年の活躍は周知のところだが、光泉も国体で活躍しており、その実力は本物であろう。この勝者が第3シードの東海大三(長野)と対戦することになる。東海大三についてはよくわからない。きっと、第3シードなのだから強いのだろう。

 一方、比較的組合せに恵まれたと考えられるのが、能代工(秋田)、福岡第一(福岡)、明成(宮城)である。能代工は、名前だけで考えればベスト8までは順当だろうが、ここ数年、能代工は上位進出していない。私は、かつてのようにトランジションのはやい能代工のバスケの復活を期待しているのだが、この組合せでベスト8までに負けるようなことがあれば、その凋落傾向に拍車がかかるのではないか。福岡第一もここ数年の実績からみれば、ベスト8までは順当にいきそうであるが、今年は外国人留学生が小粒であり、その意味では苦戦も予想される。ただ、予選で福岡大大濠を破ってきたことを考えれば、当然のことながら、弱いわけはない。明成(宮城)は、ベスト8までは大丈夫だろう。そこからが、二連覇をめざしての正念場が続く。インハイの決勝は、ゲームとしては接戦だったが、バスケットの質としてははっきりいって面白くなかった。明成のタイトで変幻自在のディフェンスと速い展開、そして人もボールもめくるめくように動くモーションオフェンスが見たい。

 ウインター・カップ2010は、12月23日からはじまり、男子決勝は12月29日である。今から、ウキウキ、ドキドキ、本当に楽しみである。

オフィシャルサイト


ウインターカップが楽しみだ!

2010年11月15日 | 籠球

 もうすく、(あと約1か月で)「高校バスケットボール全国選抜優勝大会」、通称Winter Cupだ。

 1ヶ月ほど前、わが宮城県予選の準々決勝・準決勝・決勝を生でみた。なかなかに見ごたえがあった。わが宮城県の男子は、ここ数年、明成高校の独壇場である。かつて仙台高校を率いてWinter Cup 2連覇をした名将・佐藤久夫監督率いる明成高校は、昨年のWinter Cup で奇跡の?優勝を果たし、今年のインターハイでも準優勝と、その実力は自他ともに認めるところである。

 しかし、今年、東北学院高校が意外にもこの明成高校に食い下がっているのは、全国的にはあまり知られていない。東北学院高校は、県内では以前から強豪として知られ、No.2の地位にあったが、今年2月の東北新人大会では決勝で明成に敗れたものの、あの能代工を倒して準優勝となり、6月のインハイ県予選でも残り数秒まで明成をリード、 結局同点となり、延長戦で惜しくも敗れるのだが、その実力は本物だと思う。

 今回のWinter Cup宮城県予選決勝も、すごくいい試合だった。(→大会結果

 明成85-81東北学院 (17-24,25-21,16-16,27-20)

 明成は3年生チーム、対する東北学院は多くの3年生が受験のため引退し、能力のある選手2人のみの登録だった。明成は3/4からのマンツーマン、学院はハーフマンツーでスタート。 途中から明成は3/4からのゾーンプレス→ハーフコートゾーンに、東北学院もハーフコートのゾーンに切り替えた。試合は終始、東北学院リードで進み、終盤に明成が追いつき逆転という展開だった。最後はリードされた東北学院がオールコートプレスをしかけるも、明成がなんとか逃げ切ったといった感じだった。東北学院は外からのシュートが本当によく入り、特に、No21の3年生ガード、冨永昇平選手の変幻自在なプレーが光った。No4の唯一の長身選手が前半に4ファールとなり、ベンチにいる時間が長かったのが痛かったと思う。 一方、明成は外を回して外からシュート、長身プレーヤーのリバウンドというやや単調なオフェンスだったが、最後の勝負どころでNo10安藤が果敢なドライブインでファールをもらいにいき、何とか逆転につながったという感じだった。

 明成はいつものモーション・オフェンスをやらず、何かを模索しつつゲームをしている感じで、確かに余裕を感じ、東北学院よりは一枚上かと思ったが、東北学院の実力も本物だと思う。特に、先の3年生ガード・冨永昇平選手は注目に値する。中学時代は、U-15トップエンデバーに選出された逸材だったようだが、高校に入ってからは明成高校の影で全国的には無名となってしまった。しかし、そのトリッキーなパスセンスと、タフで果敢なインサイドへの侵入ブレー(3点プレー)は、明成高校ですら簡単にとめる事は困難なようだった。はっきりいって、明成以外のチームとのゲームは彼のショータイムだったといってもいい。

 今年のインハイで明成が準優勝し、Winter Cup 推薦出場となるため、東北学院も宮城県代表としてWinter Cup に出場する。東北学院、いや冨永昇平選手を全国でみるのが、今から本当に楽しみである。

 Winter Cupは、今年もJ-Sports各チャンネルで放映予定のようである。

[追記]

 最近行われた仙台地区新人大会(→大会結果)では、東北学院が明成に圧勝したようだ。この大会では組み合わせの関係だろうか、明成と東北学院は2度対戦しており、一度目は93-90で東北学院の勝ち、二度目は何と75-50でまたしても東北学院の勝ちだったようだ。試合の内容は不明であるが、いずれにしても、東北学院は着実に実力をつけてきているようである(前から強いが……)。なお、この大会結果によると、聖和-明成戦が79-78で明成が辛くも逃げ切ったことになっている。女子の結果かと目を疑ったが、よくみると男子のようだ。一体何があったのだろう……。


統合へ ~JBLとbjリーグ~

2010年04月22日 | 籠球

 日本バスケットボール協会は21日、協会傘下の日本リーグ(JBL)と国内男子プロのbjリーグを統合した2013年度の新リーグ設立に向け、東京都内で両リーグの代表と覚書の調印式を行った。3者は今後、「次世代型トップリーグ創設準備組織」を設置し、新リーグの運営方法など統合に向けた話し合いを進める。
 調印式では、日本協会の麻生太郎会長とbjの河内敏光コミッショナー、JBLの伊藤善文理事長それぞれが調印を交わした。覚書には、今後は13~14年シーズンを目標とした新リーグ設立に向けて積極的に協力し合うことや、両リーグの加盟チームが新リーグに参加できるよう、日本協会とともに真摯(しんし)に対応することなどが盛り込まれている。
 05年11月に発足したbjとJBLは分裂状態が続いていたが、日本協会は08年11月に国内リーグのあり方に関する検討委員会を設置し、統合の道を模索。今年3月の理事会で、bjのチーム、所属選手の日本協会への登録を今年度から認めることを決めていた。

      *     *     *     *     *

 bjリーグは、日本協会から脱退した2チームが中心となって発足したプロリーグのため、両者は断絶状態にあり、その確執は激しいものがあった。とくにJBLのbjリーグに対する意地悪には目を覆うものがあり、例えば、wikipediaは次のような記事を載せている。

     *     *     *

 「トヨタ、アイシンなどJBLチームの一部は、bjの選手と一切接触してはいけないという規律もある。またトップ選手の一部は、例えそれまで付き合いがあったとしても、一切の交流を断絶し、手紙やメールへの返信はおろか、年賀状すら受け取りを拒否して送り返すという行動もとっている。さらに青山学院大など一部名門大学ではbjリーグのトライアウトを受けた選手に除籍処分を下す方針も打ち出している。」

     *     *     *

 今度こそちゃんと話をつけてほしい。注目されるのは、ただ統合するのではなく、プロチームのあり方をどのように構想するかである。現在のJBLのように実業団チーム主流では、日本のバスケットボールの発展はあるまい。それにしても「偉大なる言いだしっぺ」と呼ばれるbjリーグのコミッショナー河内敏光氏はなかなかやる男だ。プロ化をもたもたするJBLを飛び出し、日本協会から陰湿ないじめを受けつつもbjリーグを創設して夢を実現した。現在の統合への動きもbjリーグの成功に刺激された部分が大きいことは明白である。その意味でも、河内氏が日本のバスケプロ化の推進役として大きな功績があることは否定すべくもない。賛否もあろうが、大した男だと思う。彼には、プロリーグ統合のために、もうひと働きしてほしい。

     *     *     *

[追記]

この記事については、いくつかの事柄についての私の誤解・思い違いを指摘するコメントが寄せられています。たいへん論理的で公平な視点からのコメントなので紹介いたします。→ここをクリック


Go ! BREX

2010年04月13日 | 籠球

 JBLファイナル。リンク栃木が3連勝で優勝した。信じられない。事前のチーム評価では、私も含め、多くがアイシン優勢と分析していたはずだ。リンク栃木には明らかに勢いがあった。しかし、それだけではない。マッチアップゾーンとそこからの速い展開、そして圧倒的なオフェンス能力でアイシンをねじ伏せてしまったという感じだ。

 第3戦は奇跡としかいいようのないゲームだった。第4Q残り15.7秒で55-52とアイシンがリードしており、残り13.1秒には57-52と5点差に広がっていたのだ。ところが、残り7.2秒には57-55で2点差となり、さらに6.3秒には58-55とまた3点差に広がった。しかし、試合終了直前、川村卓也の3ポイントシュートで58-58の同点に追いつき、オーバータイム(延長戦)となった。ブザーピーターだ。オーバータイムでは勢いに勝るリンク栃木が終始優勢に試合を展開し、結局71-63でリンク栃木ブレックスが日本一に輝いた。

 今年のリンク栃木は、ちょっと神懸っている感じがする。特に第3戦は私の同級生(同い年)のマイケル・ジョーダン君がいた時代のNBAを見ているようだった。川村卓也のオフェンス能力もさることながら、田臥勇太の圧倒的な統率力、スピード、トリッキーかつ正確無比なプレーは、コート上で明らかに群をぬいており、ただひとり別次元の異星人がいるようだった。

 リンク栃木の優勝は、日本のバスケットボールをいい意味で変えていくだろう。多くの企業チームの中で、クラブチームが日本一になった意味は大きい。白熱した応援がそれを物語っている。多くのファンを獲得し、バスケットボールに巻き込んでいくためには、リンク栃木的な地域に根ざしたクラブ化が不可欠だろう。バスケットボールが真にプロ化を目指すならば、ファンと一体となった試合展開が絶対に必要なのだ。その意味でも、今回のファイナルは日本のバスケットボールの今後を考える上でとても重要で示唆的なものだったと思うのだが、それが有料放送のsky A+でしか放送されなかったのは本当に残念である。多くの人にリンク栃木のミラクル勝利とファンたちの白熱した応援を見て欲しかった。

 一方、敗れたアイシンにとっては、いい経験になったかもしれない。かつて他のチームをお払い箱になったプレーヤーたちが団結していた、いわゆる「ファイブ」の頃は、ベンチプレーヤーも含めてチームが一体化し、勝つためにみんなが協力していた。しかし、常勝軍団となるにしたがって、ベンチでの応援はやや低調になり、なりふりかまわないひたむきなプレーは少なくなっていたように思う。今日の第3戦で、しばらくぶりにチームが一丸となって声をだして応援していた姿を、解説者が指摘したのは象徴的であった。

 いずれにせよ、今日は久々に(といっても、今回のセミファイナル・ファイナルは連日こうであるが)、記憶に残る素晴らしいバスケットボールを見させてもらった。


ディフェンス・リバウンド・ルーズボール

2009年01月10日 | 籠球

 約1年間更新できなかった理由の1つは、HCを務める女子バスケットボール部に入れ込んだことだ。

 ずっと以前にも記したことがあるが、我々のチームは2年生8人しかいない弱小チームだ。しかも、そのうち1人はマネージャーで、1年生はひとりもいない。昨年の夏に1年生がひとり入部してくれたのだが、結局4日間しかもたなかった。我々のチームの選手の多くは、中学時代いわゆる"弱いチーム"の出身で、補欠で試合にほとんど出たことのない者も約半数を占める。けれども、誠実で、教わったスキルを一生懸命実行しようとする人間性にはとても好感が持てる。何より、全員がバスケットボールが大好きであり、運動能力や技術的には劣っても、もっとうまくなりたいという気持ちに溢れている。私は、素直さやひたむきさというものも、身体能力や身長と同様重要な資質であり、才能なのだと考えている。我々のチームの合言葉は、《 ディフェンス・リバウンド・ルーズボール 》だ。不恰好でもとにかくボールに飛びつき、それを奪い取る泥臭いバスケットボールがモットーだ。走ることやシュートすることは誰でもできるが、ディフェンス・リバウンド・ルーズボールのようなプレーはそうはいかない。苦しい練習を地道に続けることが必要なのだ。そして、そこには選手たちの人間性が反映されるのだと考えている。

 春の高校総体地区予選ではそれまで勝てなかったチームをいくつか破る大健闘だったが、S高校に僅か3点差で破れ、惜しくも県大会への出場権を得ることができなかった。たったひとりの3年生を、部員不足で大会に出場できなかった時代にひとりで黙々と練習を続けた3年生を、県大会に連れて行くことができなかったのだ。チーム全員が顔の形が変わるほど大声で泣いた。しかも不運なことに、中心選手のひとりが、最後の試合中に膝半月板を痛め、チームとしては大打撃をこうむった。その時点では最も有望なプレーヤーだったのだ。それでも選手たちは向上心失わずに練習に取り組み、故障した選手もマネージャーの仕事を手伝うなどチームをサポートしながら懸命にリハビリを続けた。その姿を見て、何とかしないわけにはいかなかった。きれい事ではなく、彼女たちのために何かをしないわけにはいかなかったのだ。そんなわけで、何とか彼女たちにいい結果を残させてやれぬものかと、チームに多くの時間を捧げることになったのである。以来、多くのバスケットボール関係書や論文を読み、練習メニューを考え、戦術を練った。熱くなりやすい青二才のようにバスケットボールに入れ込んだ日々だった。こんなにバスケットボールを真剣に考えたのは何年ぶりだろうか。

 11月の新人大会地区予選、我々のチームはシード校を1点差で破り、3位で県大会出場権を獲得した。またしても、全員が大声で泣いた。しかし、2位を決めるS高校との最後の試合中、またしても中心選手が膝を痛めた。前十字じん帯断絶である。ディフェンスの要である彼女を失ったチームは結局その試合に僅差で破れ、3位にとどまった。彼女のケガは手術を必要とするもので、リハビリも含めて約10ヶ月かかるとのことで、事実上今年の春の高校総体出場も絶望的だ。あまりのショックで、彼女は学校を数日間休む始末だった。その彼女も現在は気を取り直し、マネージャーの補助をしてチームを助けている。

 来週は県大会だ。相手は県ベスト4・ベスト8常連の強豪だ。冬休み中の練習で、キャプテンが膝を故障し、また、もうひとりの中心選手も持病が悪化して、良い練習ができていない。本当に何かに取り付かれたように不運なことが続いている。キャプテンの膝の故障は幸い軽傷で済んだが、本調子ではない。持病をもつ選手は薬を服用しながらがんばっている。春に半月板を痛めた選手も復帰はしているが、まだまだ膝は本調子ではなく、なにより半年間のブランクで体力やボールに対する感覚に不安が残る。実際のところ、HCとしての私は、最悪の場合、棄権することも念頭においており、出場できた場合でも、勝ち負けよりいかに40分間無事にゲームを終えるかを考えている程だ。

 我々のチームは、試合の前、円陣を組んでこのように叫ぶ。

《 ディフェンス! リバウンド! ルーズボール! 》

 彼女たちのバスケットボールにかける思いを考えると、県大会に出場させ、県大会のコートで円陣を組んでこの言葉を言わせてやりたい。しかし、だからこそ、彼女たちのこれからを考え、鬼になって棄権という道を選択することも必要かも知れない。悩み多き一週間になりそうである。

 


80対57でも惜敗

2006年06月04日 | 籠球

昨日、バスケットボールの県大会が行われ、私のチームは、T高校に80対57で敗れました。第2ピリオド終了直前まで接戦でリードしていたのですが、こちらのミスから逆転され、第3ピリオドに離されました。第4ピリオドは建て直し、互角の戦いだったのでくやまれます。

得意の速攻を止められ、自信のあったリバウンドで劣勢だったことが敗因かと思われますが、実をいえば第2ピリオド終了後のハーフタイムにディフェンスを変えてしかける指示をだそうかどうか悩みました。しかし、ここは辛抱して、第4ピリオド勝負と考えていましたが、結局裏目に出てしまいました。

私のHコーチとしての判断の甘さ、決断の遅さを痛感した試合でした。

選手たちは、都会のチーム相手に、よくがんばりました。決して洗練されたプレーはできませんが、泥臭く一生懸命なバスケットでよくここまで来たと思います。

スコア的には離されましたが、おたがいにベストメンバーで戦い続け、第3ピリオド以外は互角以上のスコアだったので、やはり「惜敗」といっておきたいと思います。


地区3位県大会へ

2006年05月14日 | 籠球

 顧問をつとめる女子バスケットボール部の地区予選があり、地区3位でなんとか県大会への出場権を獲得しました。

 とくに地区新人大会3位のS高校とのゲームは前半8点リードされていましたが、粘って何とかついていき、第4ピリオドで逆転しました。

 赴任後1ヶ月ということもあって、私のこだわるモーションオフェンスは定着しませんでしたが、部員10人に満たない弱小チームで何人かのけが人を抱えながら、「ディフェンス・リバウンド・ルーズボール」を合言葉に、強気のオフェンスと速攻、そしてリバウンドをがんばり、全員がぼろぼろになりながら戦いました。

 何でも創部以来、初の県大会出場ということで、生徒たちの笑顔が印象的でした。


私がモーション・オフェンスにこだわる理由

2006年05月01日 | 籠球

 今年転勤した高校で女子バスケットボール部の顧問をしている。部員が10人にも満たない弱小チームだ。3月まで勤務していた高校でも男子バスケットボール部の顧問を、また、10年程前にいた高校でも男子の顧問をしていたので、通算すると、バスケットボールの顧問歴は10年以上になる。もともとバスケットボールの経験はなかったが、若い頃は結構一生懸命だったので、本を読んだり、東北大会やインターハイなどを見学に行って勉強した。有名な高校の練習を見せてもらったり、監督さんからいろいろ教えられたりもした。そのせいかどうか、そのころのチームは、ほんの少しだが強くなった。現在のチームはあまり強くはない、というより弱い。けれども選手たちはみなバスケットボールが好きであり、彼女たちなりに一生懸命なので、何とか県大会ぐらいにはつれて行ってやりたいと思っている。無理だろうか……?

   ところで、バスケットボールをやる上で、私がいくつかこだわっていることがある。その1つが「モーション・オフェンス」である。モーションとは文字通り「動く」という意味であり、5人が立ち止まることなく、常に動きながらチャンスをねらっていくオフェンスである。現在のバスケットボールの主流であり、基本とされるものだ。そのことを裏付けるように「バスケットボール・マガジン」3月号と5月号では特集が組まれている。しかし、(私が所属するような)ローカルな高校の大会では、このオフェンスをチームの動きのオプションの1つとしているところはもちろんあるが、それをチームの中心的なしかも唯一のシステムとしているところには、あまり出会わない。実際、「バスケットボール・マガジン」5月号で國學院久我山の手塚政則先生が書いているように、このシステムの重要性をみとめつつも、得点するための中心的なシステムとしては採用しないという指導者は多いのではなかろうか。

 しかし、私は、これまで指導してきたチームでこのことにこだわり、しつこく指導してきた。わたしのチームにおいては「モーション・オフェンス」は中心的で唯一のシステムである。素人の浅知恵である。というわけで、私のチームの選手は、5人が立ち止まることなく、常に動きながらチャンスをねらっていくことを要求されることになる。

例えばこういうことだ。今、トップのプレーヤーが45度付近にいるプレーヤーにパスしたとしよう。パスを終えたトップのプレーヤーは立ち止まることなく動かなければならないが、動く選択肢は、

①ゴールにカットする

②逆サイドのスクリーンに行く

③ボール保持者のスクリーンに行く(2対2のプレー 、ピックアンドロール)

3つである。このうち、③はできるだけ行わないよう指導している。理由は、フロアバランスが乱れる上、安易に行いがちなプレーであり、コート全体を見渡す広い視野を育成できないからである。したがって、選手は①か②を選択することになるが、私のチームの選手は常にこの選択と動きを繰り返すことになる。

私はとくに①のプレー(パス・アンド・ランとかギブ・アンド・ゴーとか呼ばれる)をできるだけ多く行うよう指導しているが、それは1つにはパスを終えたプレーヤーがリターンパスをもらってゴールをめざすという積極性を持ってほしいということからであり、もう1つにはパスがもらえなかった場合でも、そのプレーヤがゴールに向ってカットしクリアする(その場をよける)ことによって、ボール保持者の11のドライブインやセカンドカッターの侵入のためのスペースができることである。つまり、他のプレーヤーのためにその場をよけ、スペースをつくるわけだ。

 このことにこだわるのは、それが選手の心と行動を育てる上でとりわけ重要であると考えるからである。つまり、私はバスケットボールを通じて、自信をもって積極的に行動する勇気と、他者のために自分が犠牲的に行動することの重要性とを選手たちに伝えたいわけだ。私がこれまでバスケットボールの顧問をつとめた学校の生徒たちは、心の発達が未熟で、自分に自信がなく、その裏返しとして他者のことを考えられないという傾向が多かったように思う。バスケットボールという競技を通じて何とかそのことをわかってもらいたかったのだ。実際、この2つのことが理解できたとき、チームは本当に強くなる。

 部活動を通じて生徒を育てていく。プロを育成するのでなければ、この視点なしに指導者が部活動に多くの時間を割く意味はない。

とくに他者のために自分が犠牲的に行動するという点は重要だ。よくチームワークというが、チームワークとは何だろう。みんな仲良しなのがチームワークだろうか。そうではないはずだ。バスケットボールにおけるチームワークとはきれい事ではない。それは他者のために具体的に犠牲になることだと私は考える。どんな個人能力のある選手でも、チームメイトが彼にスペースを作ってあげることなしに活躍はできない。したがって、逆に言えば、ある選手がどんなに活躍したとしても、それは彼ひとりの力によるものではない。誰かの犠牲と協力なくしては得点は生まれないわけだ。その意味でいかなる得点もみんなのものだ。そして、それができないとき、チームはみじめな敗北を続ける。

 繰り返すが、バスケットボールにおけるチームワークとは、きれい事ではない。それは具体的な自己犠牲と協力の精神であり、それが勝敗に大きくかかわってくる。選手はそのことを身をもって学ぶのであり、それにはっきり結びつくのが「モーション・オフェンス」の考えである。私がいつまでバスケットボール部の顧問を続けるのかわからないが、「モーション・オフェンス」の発想を捨てることはないであろう。

 バスケットボールは、思想である。