WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

フォー・クワイエット・ラヴァーズ

2010年03月31日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 244●

Teddy Wilson

For Quiet Lovers

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 今日は、久々のオフ。 妻は仕事、長男は部活動で、家には春休み中の次男と二人きりだ。ふと思い立って、次男にちょっと日帰り温泉でも行くか、と聞いてみたら、「行く、行く」との返答。「おかあさんには、秘密だぞ」と口どめをして、男同士の共犯関係を構築し、ファースト・ブレイク(速攻!)で、車で1時間半ほどの岩手県は一関市にある「山桜・桃の湯」に行ってきた。なかなかに多彩な露天風呂・内風呂をもち、眺めも上々、設備もモダンかつ清潔で、お湯は温泉ソムリエ氏によってきちんと管理され、わずか2時間の滞在であったが、心身リフレッシュ、とてもゆったり と寛いだ気持ちになった。ただ、帰り際、入場システムをよく理解せずおろおろする3人組のおじいさん・おばあさんに対する、カウンター・レディーの親切さを欠いた、ややヒステリックな対応を目にし、ちょっと嫌な気分になってしまった。人々に寛ぎを与える仕事には、ちょっと面倒な客でも、優しさと誠実さが必要ではなかろうか。

 さて、今日の一枚は、テディ・ウイルソンの1955年録音作品、「フォー・クワイエット・ラヴァーズ」である。最近話題の「verveお宝コレクション」で入手した。限定特価1,100円也である。ご多分に漏れず、ジャケ買いである。美しいジャケットだ。その美しさゆえか、多くのweb 通販では早い段階で入手困難となっていたようだ。なぜかamazonだけでは品切れではなく、なんとか購入できた次第である。

 決して革新的な演奏とはいえず、圧倒的な感動を呼び起こすような作品でもないが、私は結構好きである。音の粒のそろった安定した演奏であり、安心して聴くことができる。ジャケットのカップルのように喜びに溢れた、小気味よいスイング感である。軽い哀感もある。ジャケットを見ながら聴くと、恋の喜びのウキウキした感じが表出されているようでもあり、何だかほほえましくなってくる。

 しかし、それにしてもLPが欲しい。美しいジャケットを愛でるには、CDはやはり、あまりにも小さすぎる。(ジャケットをクリックすると、少しだけ大きくなります。ご覧ください。)


「安息の地を求めて」

2010年03月29日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 243●

Eric Clapton

There's one In Every Crowd

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 ご無沙汰しています。

 ほぼ、一年ぶりの更新である。一年間も更新を怠っていた理由はいずれ書き記すこともあるだろう。

 さて、しばらくぶりの今日の一枚は、エリック・クラプトンが1975年にリリースしたアルバム、『安息の地を求めて』である。かつての私の愛聴版のひとつである。

 最近、車を買いかえたのだが、その車につけたカーナビゲイションシステムにHDDオーディオ機能というのがあった。CDなどの音源をカーステレオのHDDに貯蔵しておけるというものである。例によってジャズ系のものを何枚か入れてみたわけであるが、ふと、車で聴く音楽には古いロックもいいのではないかと思い立ち、その作業をはじめてみた。いくつかのアルバムをHDDにいれてみて、久しく聴いていなかったこのアルバムを思い起こした。若いころ、文字通りレコード盤が擦り切れるほど聞いたアルバムである。レコードは所有しているが、HDDに入れるにはCDが必要ということで、早速購入してみた次第である。

 やはり、レコードとはどこかサウンドのニュアンスが違う気がするが、一聴して、「ああ、やっぱり、私はこのアルバムが好きなのだ」と思った。思わず顔がほころんでくるのが自分でもわかる。小気味よいレゲエのリズムと歌心溢れるヴォーカル&コーラス、そして何よりチープな感じのギターをフューチャーしたサウンドが好ましい。全編に寛いだ、レイドバックした空気が流れ、文字通り音を楽しむようなヴォーカルとコーラスの、またそれぞれの楽器の掛け合いがたまらなくいい。そして、中盤の⑦ Make It Through Today の静けさ……、身体の細胞の振動と共鳴するかのようなゆったりとした世界は、根源的な安らぎといってもいいほどだ。

 ロック史上の大名盤とはいえないだろうが、間違いなく私のフェイバリット・アルバムのひとつであり、音楽を聴くことの喜びを教えてくれる一枚だ。HMVのウェブのレビューにある藤沢の「サンボボ」さんの「若いときはどうしても461ばかり聴いていたけど年齢を重ねたいまはこのアルバムを支配する空気感がたまりません。これもまた名盤です。」との言葉がこのアルバムの核心を語っているように思う。