WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

かれいどすこーぷ、再び

2007年06月30日 | 音楽

Watercolors0002_11  かれいどすこーぷというバンドのライブに行ってきた。私の街の小さなジャズ喫茶にやってきたのだ。かれいどすこーぷは、ボーカルの前田祐希さんとマルチ楽器奏者の松田秋彦さんのデュオであり、ライブを聴くのは昨年に続いて2度目だったが、今年のライブは松田さんがマルチ楽器奏者の本領を発揮し、ギター、ピアノ、ベース、ドラムの4つの楽器を弾きまくった。中でも、ベース、ドラムのソロはインパクトのある演奏であり、それらとボーカルのデュオという斬新な演奏もあった。私はこういう前衛的な、あるいは先進的な演奏は基本的に好きである。ただ、今回に関しては、前田祐希のボーカルにすっかり魅了された。昨年のライブでは、前田さんが風邪気味であったらしく正直言ってイマイチの感が否めなかったが、今回の前田祐希は好調で、どこまでもまっすぐで伸びやかな歌声に好感をもった。どちらかというと、松田さん主体の「先進的な」サウンドよりも、Cry Me a River や Tristeza などのしっとりとしたスタンダードやボサノヴァ曲で、前田さんの素晴らしさが前面に出たという感じだった。かれいどすこーぷの前田祐希だって悪くはないが、今度スタンダードを歌う前田祐希を是非見てみたいと思った一夜であった。

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ベース・オン・トップ

2007年06月12日 | 今日の一枚(O-P)

●今日の一枚 174●

Paul Chambers

Bass On Top

Watercolors0004_7  ハード・バップ時代の超売れっ子ベーシスト、Mr.PC、ポール・チェンバースの1957年録音作品『ベース・オン・トップ』。彼のリーダー作としては最高傑作といわれる作品だ。タイトルにも自信の程がうかがえる。それにしても、1957年の録音だなんて信じられないほど音がいい。① Yesterdays から弓プレイ(ちょっとイヤラシイ言い方でしたね。アルコ奏法っていうんですよね。)の音の生々しさに耳が釘付けだ。低音の重厚感、音が空気を伝わって届くアコースティックな感覚がたまらない。私は24ビットのCDで持っているのだが、LPで聴いてみたくなる一枚だ。

   ポール・チェンバース(b)

   ケニー・バレル(g)

   ハンク・ジョーンズ(p)

   アート・テイラー(ds)

 ④ Dear Old Stockholm にくびったけである。Mr.PCのベースももちろん素晴らしいが、ケニー・バレルのギターがほんとうによく歌っている。ケニー・バレルというギタリストをテクニック的にすごいと思ったことはないが、時としてあるいはしばしば、たまらなく味のあるプレーをする。この美旋律のスウェーデン民謡 にはいうまでもなくいくつかの名演があるが、私としてはスタン・ゲッツやマイルス・デイビスやバド・パウエルの演奏と肩を並べるものといってもいいほど気に入っている。ケニー・バレルのブルージーな音の振るわせ方、スライド奏法による音の流し方が、他のミュージシャンの演奏とは一味もふた味も違うテイストをこの名曲に付与しているように思う。Mr.PCの太くたくましいベースもよく歌っているが、それをサポートするギターの控えめなバッキングがまたたまらない。唯一の不満は、曲の終わり方があまりに唐突で、サウンド的にもスカスカな感じを受けることだろうか。


セレクト・ライブ・アンダー・ザ・スカイ

2007年06月10日 | 今日の一枚(various artist)

●今日の一枚 173●

Select Live Under The Sky '87 10th Special

Tribute To John Coltrane

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 昨日に続いて、今日も完全オフ、長男の少年野球の観戦に行ってきた。準決勝では苦戦したが、わが息子のタイムリー・ヒットで2-1で何とか逃げ切り、決勝では7-5で負けていたものの、最終回裏にこちらの3ベース・ヒットや息子の四球に相手のエラーも絡んで、7-8で逆転サヨナラ勝ちだった。勝利の瞬間、ランナーとして生還し、仲間と抱き合う息子を見て、親バカだが、やわらかいボールでキャッチボールを教えていた頃を思い出し、年月の過ぎ去る速さをしみじみと感じた。来週も別の大会があるのだが、仕事の都合で応援には行けそうもない。

     ※             ※

 今日の一枚である。最近、割と叙情的なものばかり聴いていたので、久しぶりにガツーンというジャズを聴きたくなって取り出した一枚である。1987年に行われたライブ・アンダー・ザ・スカイの特別プログラム「トリビュート・トゥ・コルトレーン」におけるライブ・レコーディング盤である。参加メンバーは、

   ウェイン・ショーター(ss)

   デイブ・リーマン(ss)

   リッチー・バイラーク(p)

   エディ・ゴメス(b)

   ジャック・デジョネット(ds) 

である。ショーターとリーマンのソプラノ・サックス吹きくらべがひとつの聴きものになっているが、ピアノがハービー・ハンコックとかでなく、リッチー・バイラークというところも面白い。ちょっと音の厚みに欠けるような気がしないでもないが、リッチー・バイラークもこういうプレイができるのですね。

 バブルの頃はジャズの野外コンサートの花盛りであったが、近頃はめっきり減ってしまった。私も何度か足を運んだこのセレクト・ライブ・アンダー・ザ・スカイも今はもうない。野外ということで、サウンド的に素晴らしいものが期待できるわけではないが、ビールを飲みながら開放的な気分で聴く野外ジャスは違った意味で格別のものだった。残念ながら、この1987年のライブ・アンダー・ザ・スカイに足を運ぶことは出来なかったのだが、今CDで聴くにつけ、そのことが悔やまれる。コルトレーンに影響を受けた人たちの繰り広げる音のバトルの熱気が、モニター・スピーカーからもビシビシ伝わったくるからだ。

 ショーターとリーマンのバトルについては、後藤雅洋氏の《 よりコルトレーンの音色に近いということではリーマンに、音色の迫力ではショーターに軍配を上げたい 》(後藤雅洋『ジャズ・オブ・パラダイス』JICC出版局)という評価に従がいたい。

 1987年、私は野外コンサートなどにはいけない、四畳半トイレ共同の古いアパートに住む貧しい身の上だった。


過ぎし夏の想い出

2007年06月09日 | 今日の一枚(M-N)

●今日の一枚 172●

New York Trio

The Things We Did Last Summer

Watercolors0003_12  今日は本当にリラックスした一日だった。午前中はひとりで音楽も聴かずに集中して本を読む時間を得、午後はしばらくぶりに子どもたちと思う存分遊ぶことができた。夕食は、ちょっとだけ張り込んで、手巻き寿司をやった。子どもたちも少しは満足したのだろう、いつもより早く布団に入り、すやすやと眠っている。

 そんなわけで、私はちょっとしたポスト・フェストムの状態だ。ポスト・フェストム(宴のあと)ということばから、私はなぜかニューヨーク・トリオの2002年録音盤『過ぎし夏の想い出』というアルバムを思い出して、今聴いている。冷たいビールで火照った心と身体を冷ましながらだ。

 ニューヨーク・トリオの作品はどれも好きだが、いまのところこの『過ぎし夏の想い出』が一番フィットする。私はビル・チャーラップというピアニストの繊細なタッチとタイム感覚がとても気に入っているのだが、それが最良の形で現れているように思うのだ。アルバムタイトルは、二曲目の曲名でもあるわけだが、アルバム全体をとおして「過ぎし夏の想い出」ということばのイメージが感じられるのがすごい。それは過ぎ去ってしまった夏への追憶のイメージであり、熱く燃え上がった宴のあとの静かな感傷のイメージである。それは、皮膚感覚をともなうような種類のイメージなのであり、私はこのアルバムを聴くといつも、火照った身体にあたる風の涼しさを思い出す。


モカ イルガチェフェ G-1

2007年06月09日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 171●

Eddie Higgins

Don't Smoke In Bed

Watercolors0002_10  今日は久々の完全オフだ(といってとも持ち帰りの仕事はあるのだが……)。早めに朝食を済ませ、コーヒーを淹れて、しばらくぶりに静かで穏やかな朝の時間を過ごしている。私は近所のスタンド・コーヒー店で豆を買っているのだが、今飲んでいるやつがなかなかうまい。エチオピア産の「モカ イルガチェフェ G-1」という豆だ。程よい酸味とコクがあり、上品な香りがする。私は決してコーヒー通ではないのだが、一口のんでこれは全然違うとわかるものだ。聞くところによると、エチオピア産のコーヒーの中でも最も品質が高く評価されているものらしい。

 2000年録音のエディ・ヒギンズ・トリオ『ベッドで煙草はよくないわ』だ。ドラムレスのピアノ・トリオで、ベースはジェイ・レオンハート、ギターはジョン・ピザレリだ。もう7年も前の作品なのですね。時間が経過するのは早いものだ。このころのエディ・ヒギンズはヴィーナス・レーベルから続けざまに作品を発表し、どれも好調な売り上げを記録していた。ジャズ雑誌の広告にも頻繁に登場し、一世を風靡したものだ。私もご多分に漏れず、何枚かのCDを購入し、はまったという程ではないにしろ、結構熱心に聴いたものだった。けれども、いつしか流行も終わり、エディ・ヒギンズのCDもトレイにのることは少なくなった。昨日、ジェイ・レオンハートのリーダー作を聴いたのがきっかけで、しばらくぶりに聴いてみようかという気になったのだが、今聴くとこれがなかなかいい。本当に寛いだ演奏だ。ドラムレスの良いところが前面にでている。メロディアスでゆったりと流れるサウンドは、今日のような静かで穏やかな朝にはぴったりだ。

 60年代や70年代なら、軟弱者とかプチブルとか罵倒されたかもしれないが、人生のBGMとして生活のクオリティーを上げ、疲れきった神経を補正して、自分自身を取り戻すのも、Jazzを聴くことの効用のひとつだ、と今は思う。

 


強くなった楽天イーグルス

2007年06月08日 | 今日の一枚(I-J)

●今日の一枚 170●

Jay Leonhart

Fly Me To The Moon 

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 最近更新が滞っていたのは、仕事がちょっとだけ忙しかったのと、楽天イーグルスがいい試合を続けているため、音楽をじっくり聴く余裕がなかったからだ。

  それにしても、今年の楽天イーグルスの変わりようは何だろう。今年のイーグルスは強くなった。勝率5割云々なんて夢のようだ。やはり、野村効果なのだろうか。勝っても負けてもいい試合をする。特に試合の後半でみせる粘りは、本当に感動ものだ。実際、負けていてもまだまだ勝負はわからないと思えるから不思議だ。仙台のファンは、弱い楽天にも惜しみない声援を送ってきた。応援からは、選手たちに気持ちよくプレーして欲しいという思いがありありと伝わってくる。本当に気持ちの良い応援だ。それは選手たちもわかっており、選手たちもさまざまな方法でそれに応えている。勝利したゲームの後、選手全員が並んでスタンドに挨拶するのもそうであるし、その日のヒーローがグランドを一周しつつファンと握手をするのもそうだ。そういう光景をみていると、やはり地元に球団があるということはいいものだ、としみじみ思う。山崎、フェルナンデスなどスター選手もでてきた。ミスター・イーグルス磯部もいいし、打撃の職人リックもいい。「必殺仕事人」高須の活躍もみごとだ。もちろんマー君も初々しくていいじゃないか。私は、山崎を「山ちゃん」、フェルナンデスを「フェルちゃん」と呼んで、ソフトバンク・ファンの息子といつも対抗しつつ応援している。今日はジャイアンツ戦だ。敵地での戦いだが、何とかがんばってもらいたい。3位以内に入って、プレーオフでパ・リーグ優勝、などということを夢想するのは私だけではないはずだ……。

 さて、ジェイ・レオンハートの2003年録音盤『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』である。サブタイトルに「レイ・ブラウンに捧ぐ」とあるように、ジェイ・レオンハートはレイ・ブラウン直系のベーシストであり、実際に指導を受けたこともあるようだ。彼はニューヨーク・トリオあるいはエディ・ヒギンズ・トリオのベーシストとして小気味よいプレーを聴かせるが、リーダー作のこのアルバムでもなかなか趣味のよいサウンドを作り出している。ドラムのない、ピアノ、ベース、ギターというトリオ編成がなんともいえずいい味をだしている。

 レイ・ブラウンはオスカー・ピーターソン・トリオのベーシストだったので、ピアニストにピ-ターソンに薫陶を受けたベニー・グリーンを抜擢したのはわかるような気がする。ギタリストのジョー・コーンはなんとアル・コーンの子息だということだ。出しゃばらないが、存在感のあるなかなかいいプレイをする。

 好きなサウンドだ。

  [追伸]イーグルスの応援にフルスタ宮城に行きたいのだけれど、なかなか時間がとれない。2年前の秋のホークス戦に行ったきりだ。下の写真は、その時携帯電話で撮影したものだ。何とバックネット裏の席だった。

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