◎今日の一枚 452◎
Art Blakey &
Les Jazz-Messengers
Au Club Saint-Germain Vol.1~3
年末の大掃除は、今年はわりとテキパキとやっている。だから、妻の圧力も少ない。午後からはバスケットLIVEでウインターカップの男子決勝を観戦し、その後は書斎で音楽を聴いている。CDの棚から取り出したのは、『サンジェルマンのジャズメッセンジャーズ』である。アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズは、その時期によって大幅にメンバーが変わり、サウンドの傾向にも大きな違いがある。そこで、頭を整理するために、ジャズメッセンジャーズの歴史を大づかみにまとめておきたい。私の傍らでは『サンジェルマンのジャズメッセンジャーズ』が流れている。
まず取り上げなければならないのは、1954年録音の名盤『バードランドの夜』(→こちら)であろう。アート・ブレイキー名義であり、正式にはジャズメッセンジャーズとは書かれていないが、ジャズメッセンジャーズの原型とみなしていいだろう。ホレス・シルヴァー(p)が音楽監督を務め、天才クリフォード・ブラウン(tp)が縦横無尽に吹きまくる、ハードバップの誕生を記録するアルバムとして歴史に残る作品だ。熱気に満ちたファンキーな演奏が特色である。 アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズ名義の、正式な最初のアルバムは、1955年録音の『カフェ・ボヘミアのジャズメッセンジャーズ』である。クリフォード・ブラウン(tp)がケニー・ドーハム(tp)に、ルー・ドナルドソン(as)がハンク・モブレー(ts)に入れ替わった(ちなみにベースもカーリー・ラッセルからダグ・ワトキンスに変わっている)。ホレス・シルヴァー(p) のファンキーサウンドの延長線上にあるが、ちょっと元気がないと感じるのは私だけだろうか。やはり、天才クリフォード・ブラウン(tp) の抜けた穴は大きかったということだろうか。結局、このメンバーでの吹込みは、このアルバムが最後となる。
1956年に、ホレス・シルヴァー(p) が脱退すると、ジャズメッセンジャーズは不遇の時代を迎える。大きな転機となるのは、1958年に編曲が得意なベニー・ゴルソン(ts) が加入したことだ。ファンキーな雰囲気はそのままに、ゴルソン・ハーモニーといわれる、管楽器のアンサンブルを中心としたより構成的なサウンドに変化していく。メンバーも大幅に入れ替わり、ベニー・ゴルソン(ts) の他、リー・モーガン(tp) 、ボビー・ティモンズ(p) 、ジミー・メリット(b) が加入した。アート・ブレイキー(ds) 以外はすべて入れ替わったわけだ。この時期の主要な作品の一つがこの『サンジェルマンのジャズメッセンジャーズ』であり、有名な『モーニン』(→こちら)である。わたしの大好きな『オリンピアコンサート』(→こちら)もこの時期の作品である。 ベニー・ゴルソン(ts) は1959年に脱退し一時的にハンク・モブレー(ts)が加入するが、同年にウェイン・ショーター(ts) が加入して音楽監督を務めるようになると、サウンドは大きく変貌した。新主流派的なサウンドにフリージャズ的要素を付け加え、アート・ブレイキー(ds) のドラムソロを前面に出すサウンド構成は、それまでのサウンドとは一味も二味も違うものとなった。この時期の代表的なアルバムとしては、1960年録音の『チュニジアの夜』をあげることができる。
その後、ジャズメッセンジャーズは更なる変化を遂げ、若き日のウィントン・マルサリス(tp) が加入したりするわけだが、私は聴いたことがないのでよくわからない。
さて、今日の一枚の『サンジェルマンのジャズメッセンジャーズ』である。1958年にパリのジャズクラブ「サンジェルマン」で行われたライブの録音盤である。絶頂期のライブといっていい。CDでは3枚構成で、青がVol.1、黄色がVol.2、緑がVol.3である。どの盤も、ファンキーなフィーリングとゴルソン・ハーモニー満載である。ライブ録音ということで、何より熱気が伝わってくるのがいい。世間では、「モーニン」が入ったVol.2が一番人気のようだが、私の好きな「ウィスパー・ノット」の入ったVol.1も捨てがたい。ゲストに迎えられたモダンドラムの父、ケニー・クラークとのドラムバトルが展開されるVol.3 も必聴である。結局、3枚ともいいわけであり、必聴であるといえる。ただ、一枚一枚がそれほど長くはないといっても、やはり3枚組である。通して聴くには、それなりの時間と心の余裕が必要である。年末年始に聴くには最適かもしれない。
今日聴いて正解だった。