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当地区皿尾から上池守に向かうとすぐに、大きなケヤキの木が立っています。このけやきの木を「一本木」と言って、切ると祟りがあると言われています。子供の頃は「呪いの木」と読んでいました。明治時代には枝を切り落とした後に、切った人が死んでしまったと伝えられています。また、近くの農民が寒い晩秋の日に、麦の種蒔きをしていたところ、そこに子供たちが寒そうに通りかかったので、この木の小枝や葉を集めて焚き火をすると、その晩、農民の膝が腫れ上がってしまったそうです。これは一本木の祟りではないかと考えて、木の前でお詫びすると腫れがひいたとされています。
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この蚊喰塚の災い伝説は何処からきているのかというと、その昔この木は罪人の「仕置き場」にされていたことにあるそうです。罪人が出ると、この木に仕置きとして、裸で吊るされたそうです。蚊が集まるように、頭から酒を浴びせたこともあったようです。一晩明けると、蚊に喰われむごたらしく死んでいる。それらの怨霊が、祟りとして伝わったとされています。昔の事ゆえ、罪もない人が罪人に仕立てあげられたこともあったと、押して知るべきでしょう。
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戦後区画整理事業が進められるなかで、この塚を移すことも試みられたようですが、実際に今日までこの地にたたずんでいます。平成7年に当時の地区団体等で、記念碑を建てています。20年以上が経過し、枝葉が伸び環境整備の観点から、水利組合の働きかけで、木の整備をするに当たり、お祓いをさせて頂きました。
昨年の星宮小学校開講130周年記念事業として、地区にまつわるカルタが作成されました。句のなかに、「蚊喰塚災い伝説一本木」と詠まれています。
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木を切ると祟りがあるとの話は、行田市内に於てはこの蚊喰塚の他に、埼玉地区の小埼沼に残っているようです。地域の伝説として、大切に後世に伝えていきたいと考えています。