下総の国に出向いて一週間。歳のわりに馴染むのが早く、平穏で穏やかな時間を過ごしている。通勤に時間がかかるぶん早めについて、駐車場から見えるキャベツ畑と共に、気になっていたのが店の裏口脇にある小高い塚の上に立つ社。神社やお寺はずっと場所が動くことがないせいか、カーナビに必ず表示が出ているものだが、表示を拡大しても出ていないため、夕方日差しの残るぎりぎりの時間に見に行ってみた。
旗竿があるが鳥居はなく、建物に額なども掛かっていない。鈴が掛かっていたのでお宮と思い、賽銭を納めて拝礼した。誰がどう祭られいるのか想いを馳せつつ、薄暗くなった境内に立つ石碑を読んでいると、男の人が現れて声をかけられた。慌てて、先ほどお参りした旨を話し、どちらの神社か聞いてみると、実は近隣地の人たちで建てた観音菩薩堂だということだった。字に住む十軒で古くからある観音様を守るためお堂を建て、年に一度近くの真言宗のお寺から住職を呼んで経をあげているそうだ。観音像は残念ながら盗難にあってしまったが、伝書には、元和年間の記述が残っているそうで、400年前から字としての歴史があるようだ。昔は法典のあと盛大に祝ったそうだが、次第に村内で集まるだけになったと言っていた。話しついでに埼玉から先週通うようになったことをいうと、下総には平将門伝説が伝わり、古くから色々な歴史があると話してくださった。近くに有名な八幡宮があると紹介していただいた。
すっかり日もくれて、帰り際案内のお礼を申し上げ、勤め先と名前を伝えると、自分の会社の敷地の地主さんであった。
わずかな出会いが縁を繋ぎ、その地域がますます好きになるひとときだった。