語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】簡単にお酢料理が作れる「簡単酢」は本物のお酢か?

2015年08月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)酢は3~5%の酢酸を主成分とする酸性調味料だ。本物の酢は酵母菌や酢酸菌の働きで作られるため、完成までに日数がかかり、それに応じて値段も高くなる。
 そこで、市場では短期間で大量生産ができる
   「米酢」(原材料に醸造アルコールを添加)
   「穀物酢」(米以外の穀類から作られ、醸造アルコールを添加)
が売れ筋だ。

 (2)酢は体によい。それがわかっていても、酢に他の調味料を加えて調味酢を作るのは大変・・・・という人が多い。
 そこで、昨今、「カンタン酢」なるものが登場した。売り文句は、
   「砂糖、食塩などを合わせる必要がないので、これ1本で(中略)いろいろなお酢メニューが作れます」
 「合わせ酢」「マリネ液」など、酢は砂糖や塩などと合わせて調味料として使うことで、料理の幅がグンと広がるのだが、この手間を省いてくれたのがミツカンの「カンタン酢」だ。
 「カンタン酢」をひとふりすれば、マリネもピクルスもコールスローもあっというまにできあがる。
 だが、簡単で便利なものほど添加物の危険が多い。

 (3)「カンタン酢」は、原材料に醸造酢が使用されている。だから「本物の酢」で作られていない、という認識から出発する。
 醸造酢に使われる醸造アルコールは、食用に用いられるエタノールで、原料はサトウキビの搾りかす。これを発酵させて何度も蒸留するため、無味無臭の成分となり、多量摂取は脳の麻痺や中毒性が指摘されている。
 甘酸っぱさの甘さを演出するのは、果糖ぶどう糖液糖、水あめ、砂糖など。
 果糖ぶどう糖液糖は、安いでんぷんから作られる成分だ。酸味料と一緒に摂ると、さわやかな酸味が演出される。今では、清涼飲料を始め、使われていない商品を探し出すのが困難なほど多くの食品(とくに子どもや若者が好むもの)に使用されている。
 この成分は、最初からぶどう糖と果糖に分解されていて、腹部での体脂肪の異常増加、トリグルセリド(肝臓で作られる脂質の一種)の増加につながることが報告されている。飲料、パン、ヨーグルトなどの摂取量の多い若者層の健康被害が報告されている。

 (4)調味料の食品添加物表示は、大きく分けて4つ。
   アミノ酸
   有機酸
   核酸
   無機塩
 カンタン酢に使われている調味料は、アミノ酸だ。2つの商品の表記、
   ①「調味料(アミノ酸)」
   ②「調味料(アミノ酸等)」
の違いは、①はアミノ酸だけを使用、②はアミノ酸と他の調味料(イノシン酸など)を複合使用している。

 (5)アミノ酸でよく使用される
   グルタミン酸ナトリウム
は、グルタミン酸を水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で中和して作られ、うま味があり、塩味を和らげる作用がある。ために、果糖ぶどう糖液糖と同じく多くの食品に添加されている。
 問題はない、とされる一方、焦げたものから発癌物質が生じる。血液・脳関門が未熟な乳幼児の場合、脳細胞を損傷する、などの指摘も依然として根強く残っている。危険性が問題視されている合成添加物だ。

 (6)酢の歴史は古い。400年くらいに中国から伝わり、製造が始まったのは奈良時代。室町時代には、「合わせ酢」が紹介されている。
 「合わせ酢」の知恵は、伝承したいものだ。

□沢木みずぼ(薬食フードライフ研究家)「簡単にお酢料理が作れる「簡単酢」は本物のお酢なのでしょうか?」(「週刊金曜日」2015年8月7日号)
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