語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】トリクロサンだけでなく塩化ベンザルコニウムも危ない ~薬用石けん問題~

2016年11月27日 | 医療・保健・福祉・介護
 ●抗菌・殺菌剤として塩化ベンザルコニウムを使った商品
  《甲》資生堂「薬用ハンドソープ」
  《乙》資生堂「シーブリーズ ボディシャンプー」
  《丙》サンスター「GUMデンタルリンス」

 (1)先に米国のトリクロサンなど19種類の殺菌成分を含む家庭用抗菌石けんの販売が禁止されたことを紹介した【注1】が、日本でも9月30日に厚生労働省が通知を出し、同じ19成分を含む薬用石けんの代替化を1年以内に行うと発表した。
 しかし、家庭用抗菌石けんに対する見方が、日米政府では大きく違う。米国の食品医薬品管理局(FDA)は、基本的に家庭で使う石けんに抗菌剤など不要という考えだ。そのことは、FDAによる一般向け情報提供の中で、「抗菌石けんが普通の石けんより効果があると思って使っているとすれば、それは間違いです。家族を不必要な化学物質にさらす必要はないでしょう」とまで書かれていることで明白だ。
 米国でも3種類の殺菌成分については判断保留とされているが、それはFDAが安全だと認めたわけではない。1年以内にメーカーは安全性と有効性のデータを提出しなければならない。

 (2)厚労省の対応は、「とりあえず米国で禁止された19成分についてはやめて、他の抗菌成分にしておおけば大丈夫」と考えているようだ。しかし、例えば日本で販売している「ミューズ泡ハンドソープ」に使われているサリチル酸の場合、FDAの通知には、「米国には使用実態がないので、もし抗菌ソープとして販売する場合には新規医薬品として申請し、認可を取らなければならない」と書かれている。新規医薬品のハードルは高く、実質的に販売できない。
 今回の米国の措置をきっかけとして日本の厚労省が行うべきことは、19成分以外でも日本で販売されている薬用石けんに配合されている殺菌成分について有効性と安全性を再検証することだ。その結果は、一般公開しなければならない。

 (3)日本ではトリクロサンの代替成分として使用されている成分の中には、安全性が懸念されるものもある。
 資生堂の薬用ハンドソープやボディシャンプーに使用されている「塩化ベンザルコニウム」は、家庭用消臭除菌スプレー「ファブリーズ」【注2】の除菌成分の一つとしても使用されているもの。東京都健康安全研究センターの動物実験でも、かなり低い量で、マウスの新生仔の死亡率が増えるなどの有害影響が見られている。
 塩化ベンザルコニウムは米国では判断保留の3成分の中に含まれているが、1年後に認められることは難しいのではないか。
 植田武智・科学ジャーナリストの問い合わせに対して、資生堂は「各国法規を遵守し、製品の安全性に万全を期しており、すべての当社製品は安心してお使いいただけます」と回答したが、手を洗うだけならまだしも、ボディシャンプーで全身を洗うと抗菌成分の体内吸収量も増えることになるから懸念される。

 (4)塩化ベンザルコニウムはサンスターの薬用歯磨き・洗口剤にも使用されている。サンスターからも「厚労省の承認を受けているし、過去の安全性試験の結果から見て安全に使用できます」という関東があったが、皮膚に接触するだけの石けんよりも、口に含む歯磨きの方が口の粘膜からの吸収量が増えるので、安全性が懸念される。
 メーカーはただ安全だと答えるのではなく、その根拠を示すべきだ。   

 【注1】「【保健】米国でトリクロサン入り石けん販売禁止 ~日本でも抗菌剤入り薬用石けん見直しへ~
 【注2】「【保健】除菌成分で生殖異常・精子減少リスク ~消臭・除菌スプレー~

□植田武智(科学ジャーナリスト)「薬用石けん問題、トリクロサンだけでなく塩化ベンザルコニウムも危ないの」(「週刊金曜日」2016年11月11日号)
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