池袋ふくろう物語(5月分)
よく晴れた5月のこと、えんちゃんはふくちゃんとふたりで池袋の探検に出かけました。
ここ何日か、池袋やふくろ森では8月ぐらいの夏のように暑い日が続いていて、
特にお花や木の元気がありませんでした。
「えんちゃん、森のお花、元気がないねえ」ふくちゃんが森のお花を見て心配そうに言います。
「ほんとだね、池袋の方のお花も大丈夫かなぁ森とは違って木が少ないからもっと元気がないかもしれないよ。」
「ちょっと見に行こうよ、わたし、お花が気になるな。」
ということで、今日のえんちゃんたちは池袋の、しかも西の方へ向かうことになりました。
池袋の西には駅やその周りにきれいなお花が植わっている花壇がたくさんあって、そこのお花を見てまわるのが好きだったからです。
池袋に着いて花壇のあるところまで行くと、やっぱりお花は元気がなく、ぐったりとしていました。
「たいへんだ!早くお水をあげないと枯れちゃうよ!」えんちゃんがビックリしてふくちゃんに言いました。
「水があるところを探さなききゃね」
えんちゃんとふくちゃんが水を探しに行こうとすると、通りすがりの人間が花壇に缶を投げ捨てていきました。
缶の下敷きになってしまったお花は、とても痛そうです。
「どうしよう、早くどかしてあげないと!」
「でも、わたし達のくちばしじゃ大きすぎて運べないよ。」
ふたりがおろおろしていると、下から人間の声が聞こえてきました。
「空き缶が捨ててあるぞ!ひどいことをするやつがいるな!」
そう言って人間は缶をひょいっと持ち上げて、ごみ袋の中へ入れました。
「ああ、かわいそうに。土が乾いてしまっているよ。ごめんね、すぐにお水をあげるからね。」
「こっちも最近植えたばかりの花の元気がないわ。やっぱり暑いとだめねぇ。」
いろんな人間の声が聞こえてきたので下を見てみると、ぐったりしているお花に水をやったり、
花壇の中をきれいにしている人間たちがいました。
人間たちはあっという間に花壇をきれいにし、かわいた土にたっぷりと水をあげました。
「さあ、まだまだ花壇がたくさんあるぞ!みんなで花壇を守ろう!」
その中の一人がそう言うと、人間たちはいっせいに動き出しました。
「ふくちゃん、ちょっと追いかけてみようよ!」
「そうだねえんちゃん!」
えんちゃんとふくちゃんはその後を追いかけることにしました。
人間たちは駅やその周りにある花壇に行って水をやったり掃除をしたりしていました。
えんちゃんとふくちゃんが好きな花壇は、人間が守っていたのです!
「人間は木を切ってわたしたちの住むところをなくしていく悪いものだって思ってたんだけど、いい人間もいるみたいだね!」
人間たちのやることをふたりでずーっと見ていた時に、ふくちゃんが言いました。
「僕たちみたいにお花が好きな人間だっているんだね!ぼく、びっくりしちゃったよ!」
「そういえばわたしたち、森のお花にお水をあげてなかったよね?」
「そうだね、すっかり忘れてた!ようし、僕たちも人間に負けないくらいお花を助けるぞ!」
ふたりは勢いよく飛び立ち、ふくろ森に帰っていきました。(N.ISHIGU)