我家は貧乏だ。
由緒正しい貧乏の家系だ。
ワシは伝統を重んじる。
先祖様から受け継いだモノは、
次世代にキチンと渡す義務がある。
この世は流転している。
諸行は無常であり、万物は時と共に移ろぐ。
ワシは確固たる信念の持ち主である。
人の数十倍の努力家でもある。
しかし・・・
いつまでも貧乏を貫く事は難しいのかもしれない。
あきらめて、貧乏から抜けてしまおうか。
何度も脱落しかけた。
世の人と同じように、金持ちになってしまおうか。
世間と同じモノを目指すなら、きっと楽に違いない。
そう幾度も心がくじけそうになる。
アクマの囁きは続く。
子供達の口を借りて。
「とうちゃん、勉強机が欲しい」
本妻の口を借りて。
「アナタ、明日のお米が無いわ」
二号さんの口を借りて。
「陽平さん~、プラズマテレビ、買って~」
地球の資源は限られている。
皆が裕福になれば、地球は滅びる。
わかってくれ。
ワシは地球の未来を背負っているのだ。
妻よ子よ二号よ三号よ。
ワシは一人の社会人の前に、
行者として生きている。
辛い思い、苦しい思いを常に持っていたいのだ。
「神よ、我に七難八苦を与えたまえ!」
妻よ子よ二号よ三号よ四号よ。
(何気に、愛人が、ふ、増えてる・・・)
ワシは一人の社会人の前に、
妖しい、奇妙なオッサンとして生きている。
愉しく、嬉しく、気持ちよく生きている。
「神よ、我に悦楽歓喜を与えたまえ!」
ワシは貧乏道宗家某亜流水上一族の末裔。
貧乏道の真髄がある。
「貧して貧ならず」
道は遠い。
これでも由緒正しいのか、というツッコミはタブーだ。
どんな血統も詳しく調べるのは礼儀に反する。
人間だもの、生きている間にはイロイロあるのだ。
つい、手やその他が出てしまうこともあるのだ。
だから、血統を本気で重んじる人は滑稽でもあるが、
それが人間の可愛らしさというものだ。
(本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間・氣功療法院」