水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」
カルテ番号 へ・1(9)
「こんにちは、ここ、いいですか?」
辺見豊はその登山者と同じテーブルに移動した。
「どうぞ」
その登山者は優しげな笑顔で会釈してくれた。
「頂上にいた方ですよね」
「そうです。気持ちの良い時間でした」
やはりそうだ。
「私は辺見と申します。
あの、ちょっと伺いたいのですが?」
「なんでしょう?」
この登山者の雰囲気が柔らかで、とても話しやすかった。
「あの頂上から、どのルートで下りてきたのですか?
いえ、私はロープウェイですが、あまりに早いと思って・・・」
登山者は笑った。
「もう何十年も登っている道ですから、慣れているだけです。
私は樋口と申します。
恥ずかしい話ですが、山バカなんです。
ただ山に入り、登り、下っているだけの人間です」
そう言うわりには、自嘲ではなく、とてもさわやかに見える。
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
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18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
カルテ番号 へ・1(8)
何も考えない貴重な時間だが、そろそろ帰路につこう。
ゆっくりと腰を上げ、もう一人の登山者の脇を通った。
「こんにちは」「こんにちは」
それだけの挨拶をして、同じルートを戻ることにした。
彼はまだ座っている。
もしかしたら、すぐ近くの山小屋に泊まるのかもしれない。
下り道も順調で、ロープウェイ駅の駐車場に戻った時も予定時間より早かった。
そのまま、いつもの日帰り温泉に寄って、少し休息仮眠をして帰ろう。
気持ちのいい登山だった。
日帰り温泉の施設に入ったら、急にお腹が空いてきた。
軽く全身の汗を流し、すぐ出て食事をたのんだ。
食べてから、もう一度入り直すつもりだった。
すると、同じように食事をたのんでいる人がいる。
よく見ると、あの頂上にいた登山者だった。
辺見豊と同じコースではない。
ロープウェイは使わないタイプだ。
あれから健脚者向けのコースを下りてきたのだろう。
それにしても、かなり早い。
いや、早すぎる・・・
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カルテ番号 へ・1(7)
頂上の二つの耳まで2時間の予定だったが、1時間半で着いた。
無理はしていない。
今日は快晴で、見通しもいい。
しばらく頂上でゆっくりできる。
何も考えない。
ただ、頂上にいる。
この時間が好きだ。
ふと気づくと、同じようにただ座っている人がいた。
年齢は60歳を過ぎているようだが、とても頑健そうな身体だった。
いかにも山屋という感じだ。
表情はやわらかい。
山が好きなのだ、と一目で判った。
すると、目が合った。
山の礼儀として、目礼した。
頂上に来る人は何人もいた。
今日は登山日和なのだろう。
ここまでのルートは幾つかある。
長い時間を頂上で過ごす人はほとんどいない。
辺見豊ともう一人の登山者だけが、そのままの姿勢で残っていた。
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カルテ番号 へ・1(6)
ただ長生きするのではなく、楽しんで長生きする。
一年間、閉じこもった挙句の結論だ。
落ち込み、悔やんでも妻は喜ばない。
自分が自分らしく楽しんだ方が喜ぶ。
勝手な解釈かもしれないが、そうとしか思えない。
現実にはいない妻との会話だった。
天気図を読んで決めた日だ。
当日は予報通りの快晴。
気温も高めだ。
下調べはしっかりとしてある。
前日の睡眠も充分とって、朝早くに駐車場に到着した。
ここでも2時間ほどの休息時間をとってある。
仮眠するほどではないが、運転の疲れはとれる。
始発のロープウェイに乗った。
通常は10分くらいで運転している。
だが、あっという間に到着した。
もっとゆっくり運転でもいいのではないか、と思った。
到着駅から峠のリフトがあり、こちらは7分くらいだった。
そこから頂上に向かって歩き出す。
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カルテ番号 へ・1(5)
行きたくなると、すぐ実行に移す。
10月になると雪が降る事があるらしいが、今なら大丈夫だ。
更に峠リフトを使えば、尾根伝いに頂上まで行ける。
往復でも5時間。
ルートは辺見豊でも大丈夫そうだ。
朝、一番のロープウェイで行くことにした。
この山は、魔の山といわれている。
世界で一番遭難者が多い山なのだ。
世界の8000メートル級14峰の合計よりも遥かに多い。
ギネス認定、とびぬけてのワースト1位の山だ。
逆の見方なら、それだけ人を魅了する山ともいえる。
その魅力は、とびぬけて危険な魅力ともいえる。
辺見豊のコースと時期なら、危険性はとても低い。
とはいえ、どんな山でも安全ということはない。
日帰りとはいえ、装備には充分気を使った。
妻の死から立ち直って、最も気を使うようになった事がある。
それは、自分が妻の分も長生きしようと思った事でもある。
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カルテ番号 へ・1(4)
冬の山には登らない。
寒さが厳しい時期、晩秋も早春時期も登らない。
登らないが、山の近くに行くようになった。
ドライブは山があるところばかりになった。
見る山は、辺見豊が登らない、あるいは登れない山だ。
厳しい岸壁が綺麗だと感じるようになった。
山の近くは、温泉があるところが多い。
たまには宿に泊まる事もあるが、あまり好きではない。
一人での宿泊は、孤独感が強くなってしまう。
自宅なら普通なのに、どうして温泉宿では孤独を感じるのだろう。
宿には泊まらないが、日帰り温泉に入る事はある。
あまりゆっくり入ると、だるくなるので、湯船の中は短い。
食事も同じ施設でできるところなら、利用している。
秋。
上越国境の山を見ていて、どうしても行きたくなった。
調べると、ロープウェイのゴンドラで行けるという。
登山でなくても、少し歩けば、峰まで行けるようだ。
それならいいだろう、と辺見豊は思った。
日帰りで充分だ。
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カルテ番号 へ・1(3)
特に山好きではなかった。
登山というものに興味はなかった。
登山はスポーツではないだろう。
あれは、趣味だろう、と思っていた。
それが、山に登りたくなったのだ。
無理して高い山に登りたいのではない。
身体に負担をかけて、苦しい息を吐くのを求めていたのかもしれない。
手軽なハイキングから始めた。
グループなどの入る気は更々ない。
初心者用の本で、服装や装備を覚えていった。
始めると、解った事がある。
肉体の苦しさが、心を軽くするのだ。
息を吐くことが、わだかまりを吐くことに通じるのだ。
ゆっくりと、それでも確実に山にはまっていった。
決して無理はしない行程を組んで、月に何度も登るようになった。
不思議なもので、山に登るほど、妻と仲良くなれる気がした。
以前のように、自分を責める事はなかった。
一緒に登っているような気さえした。
心が落ち着いてくるのを感じていた。
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カルテ番号 へ・1(2)
辺見豊は、何事も積極的な性格だった。
精力的な行動家だった。
それが、妻の突然の他界から一年、何もする気が起きなかった。
そのまま社長を引退した。
こんな状態で社員の生活を背負えるわけがない。
会社にも社長という地位にも、何の未練もなかった。
後悔だろうか?
妻に、いろいろとしてやれなかった事への残気だろうか。
特別愛していたとはいえない。
だが、空気のようにいるのが当たり前だと思っていた。
わからないまま、落ち込んで、家に引きこもったままだった。
それが、1年を過ぎた頃から、少しずつ外へ出られるようになった。
幸いにして、残りの人生を暮らしていけるだけの蓄えはある。
家事は以前からいた家政婦がしてくれている。
寡黙な家政婦だが、信頼できる人だった。
最初は近所の公園までの散歩くらいだった。
それが、毎朝のジョギングになった。
ジョギングといっても、ほとんど早足程度のスピードだ。
それが、身体を動かしているうちに、更に身体を動かしたくなっていった。
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辺見豊は今年70歳になった。
2年前に自分で創業した会社の社長を引退した。
一年間、ほとんど自宅にいた。
そして、今年から、積極的に外に出るようにしている。
肉体的には、まだまだ若いと思っている。
元々、身体を動かすのが好きだった。
眠るのを惜しんで働いた。
そして、会社を創り、発展させてきた。
僅かな時間の合間を作り、スポーツも楽しんだ。
兎に角、身体を動かしているのが平常だと思っていた。
当然、家にはあまり居ない。
子供は出来なかった。
外でのスポーツとか、身体を動かすのが得意でない妻だった。
だから、妻と一緒の時間も少なかった。
その妻が、2年前に他界した。
それまで病気をしたことが無かった妻だった。
気づいたら手遅れの状態だった。
そして、気づいてから2ヶ月ももたなかった。
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カルテ番号 ふ・5(44)
「藤川さん、知る事と行いは一致させて意味をなします。
知っても、行いは難しいことが多々ありますからね」
「知行一致ですね。
でも、知るは行いのキッカケであり、第一歩ですから。
兎に角、チャレンジしてみます」
そして、ふと気づいた。
「先生は私がヨガ教師だということで、こういう指導をしてくれたのですね。
ヨガは実践して自らが変わる事がヨガだと。
気遣い、ありがとうございます。
でも、私はヨガ行者として、そんなにキチンとしていません。
原さんのように、先生の手で身体が変わりたい、とも思っています」
院長は頷いた。
「私は依頼者が望むなら、できるだけ希望に沿うようにしますよ。
原さんと藤川さんは違いますが、少しずつ体験してみましょうか。
通常のヨガとは違いますが、藤川さんならいいでしょう。
次回から、ゆっくりと変わっていきましょうね」
「はい、よろしくお願いします」
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