水上陽平流の表現でいろいろな事を書いています。本館は http://iiki.desu.jp/ 「氣の空間」
カルテ番号 む・2(47)
村木は、生命の仕組み、などと考えた事は無い。
「病名や症状を調べるのは良い事だと思いますが・・・」
「良い、悪い、というのは、何に対して、という対象次第です。
単純に知識を増やすのが良いともいえません。
更に、その知識が正確かどうか、となると、かなり曖昧でしょう。
何しろ、科学的な学問は次々と新しくなります。
ということは、今得た知識は間違いの可能性が高いというわけです」
確かに、昔覚えた事柄が、かなり変更になる事は多い。
「大切なのは、生命なのです。
生命にとって、その知識が活かされるなら、良いでしょう。
ですが、知って不安にさいなまれるなら、生命は委縮します。
生命が委縮すると、病は悪化傾向になります。
知る事は、決して単純に良いわけではないのです」
院長は再び言った。
「病名やそれに付随する症状は、医者の為にあるのです。
医者は、それを活かす事ができるからです。
患者の知りたいという気持ちは理解できます。
ですが、知った事を活かせないなら、意味がありません。
まして、中途半端な知識は有害の割合が多いと思いますよ」
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
(過去のプログは本館 「氣の空間・氣功療法院」です。
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18年間封印していた本物の「氣入れパワーストーン」を販売開始 「笑顔の雑貨屋Yakkoo」)
カルテ番号 む・2(46)
院長は静かに話した。
まるで、独り言のように。
「私には、今のほとんどの人の方が不思議です。
どうして、自分の身体なのに関心を向けないのか?
それでいて、少しの熱も痛みにも反応する。
身体には関心を持たないが、病気には関心がある」
村木は黙って聞いていた。
「病名が何故あるか、御存知ですか?」
「どんな病気かを知る為でしょう」
院長は頷いた。
「そうです。あれは、医者が病気を区別する為に付けたのです。
ですから、例えば東洋医学では、別の名前をつけます。
インド医学では、また別の名前。
つまり、あれは、一部の治療者や医者が使う為なのです」
院長の話は続く。
「ですが、皆さんは病名を知りたがります。
更に、その病名の病状を知りたがります。
ネットなどで調べて、あ、これも当てはまる、などと。
病気や症状には関心があるのですね。
そのくせ、自分の身体の仕組みは知ろうとしない。
最も大切な生命の仕組みにも無関心です」
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カルテ番号 む・2(45)
生命の仕組みの理解?
普通は解らないだろう。
そんな事は、考えないだろう。
「学校の授業で教わらなければ、一般常識しか知りません。
それを学ばないと、身体は治らないのですか?」
院長は言った。
「いえいえ、学ぶような事ではありません。
御自分の身体です。
学ぶのではなく、気に留める。
自分の身体を意識して、観察する。
身体の変化に注目する。
そんな感じですね」
そんな事で仕組みが解るのだろうか?
ここで院長は微笑んだ。
「納得できませんか?
あまりに簡単な事で。
そして、方法も同じように簡単です。
でも、効果は大いにありますよ」
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カルテ番号 む・2(44)
何故と訊かれても村木にはわからない。
「基本的に私が伝える回復法、健康法は難しい事はありません。
誰でも、暮らしの中で取り入れられる方法を伝えます。
私は、無人島に一人漂流しても出来る方法を目指しています。
ですから、電気がなくても、器具が無くても出来る方法。
特別な食べ物や飲み物でなく、誰かに手伝ってもらわなくてもいい。
そういう方法が最初から用意されていると思っています」
簡単だから、続けない。
確か、院長は今日そんなような事を言った。
「簡単すぎて、やらない、ということでしょうか?」
院長は答えた。
「何割かは、そういう部分があるでしょうね。
人は難しい方が効果があると思い込んでいます。
また、お金が高いほど効果があると思い込んでいます」
院長は続けた。
「でも、根本的なことがあるのです。
それは、生命の仕組みを理解していないのです。
とはいえ、その事自体も、難しくありません。
難しくないけど、とても深いです。
深さは個人個人ですればいいだけです。
生命は、とてもシンプルで深いのです」
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カルテ番号 む・2(43)
院長は少し考えてから話し出した。
「病からの回復。
あるいは元気になる方法。
更に若返り。
それらを知りたがる人は大勢います」
そうだろうと村木も思う。
「そして、そのほとんどが一部の方法を知りたがります。
例えば肝臓の病の人は肝臓の回復法。
心が萎えている人は、心が元気になる方法。
顔が若く見える方法。
何かの悩みからの脱却等です」
院長は、一体何が言いたいのだろう、と村木は思った。
それぞれが望む事は、それが当たり前だと思うからだ。
「でもね、村木さん。
その方法だけを教えても、改善する割合は私が思うよりも少ないのです。
もっと効果が出てもいいのに。
あるいは、効果があるのに、続けないのです。
何故だと思いますか?」
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カルテ番号 む・2(42)
村木は自分の感じていた事を院長が理解してくれていると思った。
普通、この手の話は下ネタとして扱われかねない。
下ネタが低俗とも思わないが、性行為以外の分野で話を聞きたかった。
もっと広い範囲での影響を感じていた。
だが、どこでも性行為に関係する話にしかならない。
院長はゆっくりと話を続けた。
「医学の立場は、とても狭い分野でとらえてしまいます。
科学が分析学に傾倒しているからです。
医学が解剖的、生理学的だけとはいいませんが、細分化しています。
生きる存在、将来への意識、見えない支えとしての考えは重要視しません。
おかしな話ですよね。
重要なのは、生きる意識や意思の方なのに・・・」
村木は今まで相手に伝わるように表現できなかった。
だから、秘密にしていた。
生きる意識や意思。
そうなのだ。
生きる心が削がれる事を感じていたのだ。
肉体は衰える。
そんな事は知っているし、実感してきた。
だが、そういう事ではないのだ。
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カルテ番号 む・2(41)
村木は言った。
「歳だから、とあきらめなくていいのですね?
同い年、年上でも、元気のままの人もいます。
若い頃と同じに、とは言いませんが、立たないと落ち込む一方です。
それまでは、立たない事を聞いても、それほど気にする事もないと思っていました。
特に使う予定もないのなら・・・、と」
村木は妻とはセックスレスになって10年ほどになっている。
それ以後も、妻以外の女性とセックスする機会も意思もなかった。
もともと、それほど強い関心があるわけでもなかったのだ。
だから、不能になっても問題ない、と思っていた。
ところが、そういう事ではなかった。
不能になって、気づくことがある。
使うとかいうレベルの事ではないのだ。
もっと、大きな問題だと感じていた。
院長は言った。
「そうなのです。
勃起不全というのは、その人にとって大きな問題なのです。
その事によって、より生命力が低下してしまうのです。
イキイキとした生き方から外れやすいのです。
それは、オスにとって存在価値を左右する部分だからです。
人間は他の生物よりもオスメス以外の生きる時間が多いのです。
ですが、基本はオス、メスとして左右させられます」
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カルテ番号 む・2(40)
「いろいろな現象、特に音や光に対しても過敏になります。
本人は苦しんでいるのに、周囲の理解は中々得られない。
同じ音でも、生命力が低下していると苦痛なのです。
でも、周りにとってはそれほどでもない。
そして、生命力の低下は悪いのは自分だ、と内に向かってしまいます。
解決への道よりも、誰が悪いか、に関心が向いてしまいます。
ですから、解決できないまま苦しみます」
会社内でもいる。
同じ言葉でも、強く反応する。
最近は、ナントカハラスメント、と言われる。
確かに、ロクでもない言葉を使う男はいくらでもいる。
だが、それは、社会では普通にいるのだ。
法やルール規制しても解決にはならないだろう。
規制で表面を抑えても、ロクデナシの品位は上がらない。
「生きていれば、いろいろな理不尽に当たります。
一つ一つ立ち向かっていく生き方もありますが、それは生命力の強い人用。
それよりも、長い人生をより快適に過ごせるように変化した方がいいと思っています。
それには、自身の生命力の活性に興味を持ち、実行に移すことです。
肉体は、行為に対して応えてくれます。
社会は、訴えには、ほとんど応えません。
社会は、多種多様な心があるので無理なのです」
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カルテ番号 む・2(39)
「生命力の低下は、いろいろな現象で見出せます。
例えば、閉じこもり。
他との接触、交流は生命力の現れなのです。
例えば、いじめ。
これは、子供に限ったことではありません。
職場でのいじめや、高齢者間のいじめもあります」
村木は言った。
「いじめも生命力の低下からなのですか?」
「そうですよ。
いじめる側の環境の問題と思われがちですが、それは要素の一つ。
本当の原因は生命力の低下でしょう。
生命力が低下すると、不安と不満が増大するのです。
お酒をはじめ、いろいろ逃げたりしますね。
その一つが、立場の弱い者へうっぷん晴らしとして、ぶつけるわけです」
村木はイマイチ納得しかねていた。
「生命力が充分な時を思って下さい。
どんな環境でも克服しようとします。
弱い者へは、優しくなります。
理不尽な事柄があっても、許すことができます」
なるほど、と村木は思った。
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カルテ番号 む・2(38)
村木は言った。
「ネットで調べると、多くの男性が悩んでいるようです。
でも、こういった事柄なので相談する人は低いのではないか、と思っています。
自分がそうでしたから。
中々、他人には言い出せないものなのです。
もちろん、ネットがそれほど信用できないのは判っています」
院長は相変わらず、淡々と答えた。
「そうでしょうね。
実態はかなり多いのではないかと、私も思っています。
そう思う理由もあります。
病気から立たないこともありますが、それは除外します。
性の事柄は生命力と同じ根っこです。
ここ数十年の日本は、老若男女、全てにおいて生命力が低下しています」
村木もそれは感じている。
若い社員の生命力は、自分の頃に比べてとても低い。
男性だけでなく、女性も低い。
スタミナも瞬発力も基本的な体力も少ないと思う。
とはいえ、自分達の頃とは時代が違うのは判っている。
あの頃は、日本中が活発に動いていたのだ。
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