未完成でアトリエに随分長く放置していた、木彫りの「鯉の滝昇り」に、一鑿(のみ)
、二(ふた)鑿入れ、水彩絵の具で色付けてして見た。
まだ40代初めの頃、職場の近所に木彫りの先生の木彫教室があって、先輩に勧
められて弟子入りし、習い覚えたものだが、その後転勤と仕事も忙しくすっかり遠
ざかってしまったまま、今日に至ったものだ。
先生とはその後も、時折、年賀状や県展会場などで顔を合わせ、交流は続けてい
るが、私が日本画の方に行ってしまったため、何十年も鑿(のみ)を握ることがなか
った。
教室の頃、先生から「木彫りは、一(ひと)鑿、一鑿心を込めて彫る、その積み重
ねが大切・・・」と教えられていたが、確かに・・・考えてみればそれは人の一生みた
いなもの、一つ一つ積み重ねが、人それぞれの人生を形作っていくものかも・・・・
と思ったものだ。
この「鯉の滝昇り」は、古代中国で「急流を昇り切る鯉は、登竜門を潜って天まで
昇って龍になる」との、登竜門の故事の元になっている様である。
当時、自分にはおおよそ不似合いなこの図柄を、何を思って選んだか、今となっ
ては定かではない。
~今日も良い一日でありますように~