夕暮れ時の田園地帯、稲穂が少し色付き、田んぼの上を無数の赤トンボが飛び交っている。
山の向こうは足早に陽が落ちて行く、見る見るうちに手前の山並みが、夕陽をバックに黒々と
浮かび上がって来た。
足下の草むらには、子供の頃、友達の首の辺りを後ろからそっと撫でておどけた、あの猫ジャ
ラシ草が、産毛を逆立て夕陽に透けて、涼風に揺れている。
これも田舎のごくありふれた夕景色だが、先程から田んぼのあぜ道に、年配の方が腰を下ろし
て、何やら懐かしそうに話し込んでいらっしゃる。
多分、今は都会暮らしの、ここが「故郷」のご夫妻ではないかとお見受けした。
きっとアカネの空に赤トンボが飛び交う、昔を思い出しながら郷愁に浸っておられるのだろうか。
すっかり陽が落ち辺りが薄暗くなるまで、睦まじく語り合うお二人の姿がとても印象的であった。
夕焼け、小焼けの、赤トンボ(ゆうや~け、こやけ~の、あかと~んぼ~)