先週、西日本新聞に『福岡市政の課題~市長選まで1年』という連載記事(11月29日~12月2日)が掲載されていた。高島市長就任以来、批判的な報道が殆どない中、(その理由はこちら)、西日本新聞が珍しく高島市政の問題を取り上げていた。次期市長選まで1年を切ったところで、これまでの高島市政を振り返り課題を探るというもの。課題は「街づくり」「雇用」「社会保証」「二元代表制」の4つに分かれていた。そこで、これらの課題を順に追っていくことにする。
まずは街づくり。高島市長の肝入りといえば「天神ビッグバン」。といえば国家戦略特区。となるとやはりこの人。記事には10月2日、安倍首相と高島市長が食事をした時の様子が書かれていた。またかという感じだが、高島市長はカバンから福岡都心部の地図を取り出しテーブルに広げ、首相に「高さ規制緩和で福岡はこんなに変わります。岩盤規制を突破して日本経済を支えますので、見とってください」と息巻いている。全くどこを向いて仕事をしているのかと言いたくなるが、そのせいで福岡のまち並みは、大きく変わることになる。
昨年、特区により航空法の高さ制限が緩和され、天神地区のビルの高さが67mから76mへと緩和された。さらに今年6月、天神ビッグバンエリアの端に位置する大名地区では(旧大名小跡地を入れるためにエリアが決まったようなもの)、76mから115mへと引き上げられた。調べてみると、この高さの根拠はNTTアンテナ。しかも、承認されるまでわずか数日という異例の速さ。続いて9月には、天神明治通りとウォーターフロント地区が同様に緩和された。福岡のまちは、どこもかしこもゆるゆる状態だ。
記事には、天神ビッグバンの進め方を疑問視する九大大学院施光恒准教授の意見が紹介されている。高層ビルの乱立により景観が一変することやインバウンド(外国人入国者)の増加を前提としてまちづくりが進められていることに警鐘を鳴らしている。また、(博多駅前陥没事故の建設技術委員長でもある)樗木九大名誉教授は、福岡の歴史と伝統を生かしながら街づくりを進める必要性を述べている。
そもそも、高いビルを建てれば経済が発展するという発想が短絡的すぎると思うが、そこに動機の不純さが見えてくるわけで、この事業が西鉄のためにあることは多くの人の知るところである。先日、福岡市議会の参考人招致のあと、おばた前議長と話をする機会があったが、天神ビッグバンや西鉄連節バスを大そう批判されていた。また、西鉄から恩恵を受けている議員が自民党を含めて数名いることも。(ここまで話されるとは思わなかったが)これでは行政をチェックできるはずもないだろう。
天神地区には老舗が多くある。しかし、天神ビッグバンによる再開発で(新しいビルでは家賃料が高く経営できないため)退去を余儀なくされた店は多い。守るべきものを失った。大名地区では、すでに旧大名小学校跡地の再開発事業者の公募が始まっているが、大名小学校は福岡市内で最も古い学校(明治6年、大明小学校として開校)であり、建物は戦前の鉄筋コンクリート製。モダンな近代建築として大変貴重なものである。OBには元首相広田弘毅もいる。そのため議員からは郷土歴史資料館として残すべきとの意見もあった。福岡の歴史を生かす意味でも慎重に議論されるべきだった。しかし、”日本の経済を支えます”と意気込む高島市長の前に、その夢はもみ消されてしまった。天神ビッグバンという名の街づくり、私には”市民不在”のまちの姿しか見えてこないのだが。
西日本新聞2017年11月29日朝刊より
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