NHKの「ディープ・ピープル」を観た。今回は「女性演歌歌手」の深い話…。
いやぁ~、めちゃくちゃ面白く、ためになった。「こぶし」ってそんな風にやるんだ、歌手も作詞家も歌詞の一言にそんなに拘るの?演歌ってこんなに深いの? 凄い世界だなぁ~!
登場歌手は、小林幸子、坂本冬美、長山洋子の3人。それぞれこの世界ではベテランだ。
話はまず演歌独特の「こぶし」の考察。こぶしの「まわし方」はそれぞれで工夫があり、歌手ごとに違う。こぶしを入れるところ、入れ方、その数、ファルセットで入れる…、みんな一生懸命工夫している。
ただ単に適当に(失礼!)入れているのかと思ったら、ある意味きっちりと計算されているんだ!へぇ~!?
そして歌詞の捉え方、歌い方、それから作詞家の拘り。これは日本語の曲を歌う合唱人としては、とても参考になった。
演歌とは、元々は「演歌師=社会風刺を歌に載せて民衆に聴かせる人」が発祥元らしい。そのため歌詞がきっちり聴き手に伝わらないと全く意味がなく、演歌師は聴かせることに注力したという。なるほど、それが演歌の歌い方の、ある意味「くどさ」に繋がるんだ。
「あなた」という言葉の歌い方を何百回もやり直させられた、「生命(いのち)」の「い」の発声を何度となく直された…。そんなに拘っていたんだ。そんな苦労を微塵も感じさせず、演歌歌手はさらりと歌うし、聴き手も聴き流してしまう。でも1曲をレコーディングするまでには、相当の思い入れがあるんだな。小林幸子の恩師、古賀政男は常々「芝居は歌え、歌は語れ」と言っていたそうだ。
また、作詞家はその歌を歌う歌手の、その時々の人生を詞の中に極力入れ込むことを意識するそうだ。ちゃんと歌い手を意識して、それぞれにマッチした詞を作る。似たような言葉が並ぶ演歌なので、作詞家も大して本気で作っていないのでは?と思ったりもしていたが、とんでもないことだ。まさに1曲ごとに心を込めて、想いを載せて作詞しているんだね。
人生経験は、歌い方にも表れる。同じ曲でも、10代の時と、30代40代になって歌うのとでは全く表現も聴衆への伝わり方も変わってくる。
坂本冬美曰く、10代でデビューした時の「あばれ太鼓」の歌いだしが「どうせ死ぬときゃ裸じゃないか」どういうことか全く分からなかった。でも40を超えた今は、その意味も十分理解でき、歌い方も違っているという。長山洋子は結婚して母親になって、「親子もの」の理解、歌い方が変わったそうだ。
そういうことなんですよ。「年の功」というのは、歌の世界でも絶対にあるんだよ。同じ曲を歌っても10代20代と40~50代では、表現も味も違うんです。そこに人生の年輪があるんですよ!(おっと、演歌の世界だ!)
我が男声合唱団が、テクニック抜群の若手メンバーの合唱団に対抗できるのは、そういうことなんだね。だからこれからも年輪を感じさせる歌を歌っていきましょうぞ!人生経験なら、その辺の輩には負けないでしょう!?
この番組を見逃した合唱人の皆さん、ぜひ「NHKオンデマンド」で観てみてください!
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蛇足の追伸
僕は谷村新司の「群青」という歌が好きで、昔からよくカラオケで歌っていた。
この歌は映画「連合艦隊」の主題歌で、映画では息子を戦場に送り込み戦死させてしまった老父が、子供の頃の息子をおんぶして波打ち際を散歩したシーンが出てくる。息子の名誉の戦士を誇る気持ちと、子を亡くした喪失感が切なく描かれていた。
「群青」の歌詞にも「君を背負い歩いた日の温もり背中に消えかけて」というのがある。ここは、やはり結婚して息子が生まれて、おんぶして歩くことを経験をしてからは、映画の中の父親の気持ちがとてもよく分かり心に響いたものだ。人生の年輪を重ねるということは、やっぱり歌には必要なんですよ。
「群青」を歌わせたら、僕は結構上手いよ!(?)