丵サクの字形をふくむ業ギョウと対ツイ・タイは成り立ちに諸説ありますが、以下に私見を述べます。
丵 サク 丨部
解字 上に4つのギザギザがついた字で、この音符および字形は以下の多義的な意味をもつ。
意味 (1)草がむらがる。(2)ギザギザした山が突き出てならぶ形。(3)鑿サクの音符になる。(4)業ギョウ・對タイ・ツイの構成要素になる。
イメージ
「サクの音」(鑿)
「ギザギザ歯の道具」(業・対)
音の変化 サク:鑿 ギョウ:業 タイ・ツイ:対
サクの音
鑿 サク・のみ・うがつ 金部
解字 甲骨文は▽形のノミの刃を手にもった槌状の道具で打ち、下の四角に穴をあけているさま。篆文および現代字は、▽形⇒丵サク、四角と穴⇒臼、槌を打つ形⇒殳に変化し、さらにノミが金属製であることを示す金がついた鑿サクになった。従って、丵サクは、ここでノミの刃を表しているが、叩く面はほぼ平でありギザギザしていない。ノミの発音がサクなので音符として丵サクを当てたと思われる。
意味 (1)のみ(鑿)。木材や石に穴をあけたり、加工する道具。 (2)うがつ(鑿つ)。穴をあける。「開鑿カイサク」(山野を切り開いて道路や運河などを通ずる)「鑿井サクセイ」(井戸を掘ること。掘り抜き井戸)「穿鑿センサク」(うがちほる。たずね求める)
ギザギザ歯の道具
業 ギョウ・ゴウ・わざ 木部
編磬ヘンケイ
解字 金文は上に3本のギザギザ飾りがつく楽器をかける左右2つの支柱台(「説文解字」は楽器を掛ける横木としているが私は支柱とした)。その間に発音を表す去キョがつく。では、この支柱台の楽器とは何を表すのか? 私は編磬ヘンケイ(上の写真)だと思う。編磬とは磬ケイという異なる大きさの石片をいくつも掛け並べ音階とし、それを叩いてメロディーを奏でる打楽器である。編磬を掛けた横棒を演奏者の高さに合わせて固定する役割が、左右2つの支柱台である。(この支柱台の発音を表す去キョの古代音は渓魚部で復元音はkʰǐaなど、磬ケイの古代音は渓耕部で復元音はkʰieŋなど、で類似しており、去の発音で楽器の磬を表したものと考えられる)
字形は篆文で片方が省略され、全体も上がギザギザが4つある丵の形になって簡略化された。現代字は「丵サク+木」の業になった。意味は、楽器の編磬を打つことから、演奏する、わざ(業)。おこない。編磬を打つ人は、それが「しごと・つとめ」となる。
意味 (1)しごと。つとめ。なりわい。「業務ギョウム」 「職業ショクギョウ」 (2)わざ(業)。おこない。「修業シュギョウ」(学問・技芸などを習いおさめる)「神業かみわざ」(①神のしわざ。②神の力でしかできない素晴らしい技術。=神技シンギ。※「かみわざ」と言うときは「神業」をあて、神技はシンギというのが通例)「業師ワザシ」(①技の巧みな人。②策略家) 「業物わざもの」(名工が作った切れ味のよい刀剣) (3)[仏]ごう(業)。善悪のむくいを引き起こす行為。「悪業アクゴウ」(前世の悪事)「業火ゴウカ」(①悪業を火にたとえていう。②罪人を焼く地獄の火)「自業自得ジゴウジトク」
対[對] タイ・ツイ・むかう 寸部
3本柄の蛸胴突タコドウズキ(ヤフオクの写真)
解字 甲骨文字は上に三本の柄がある道具を手にもつ形。この道具が何かについて諸説があるが、私は土突きをする蛸胴突タコドウズキ(蛸土突き)と考えたい。略称・タコ(蛸)とは、円筒形の木材に2本~4本の柄をつけ1人~2人がその柄を持って土を突き固めるもの。蛸の足を上にしたような形になぞらえてタコ(蛸)と呼ばれる。
甲骨文字を見ると、手の位置が3本の柄の近くに置かれており柄を持つように見える。金文第1字は下部に土を描く。第2字は両手を出した人を描き両手で持つさま。篆文で頭部が4つのギザギザがある丵に変わり手が寸になった。楷書は「丵の略体+土+寸」の對になり、現在は左辺を文に代えた対が新字体として用いられる。
意味は甲骨文字で地形などをさす語。金文は鼎(かなえ)の土製鋳型を打って銘を對(しる)す意[字統]。篆文は応答(こたえる)の意となり、さらに対面(向かい合う)の意となるが、これは蛸胴突が2人ですることが多いことからと思われる。
向かい合ってする蛸胴突(昭和15年ごろのため池作りの地固め。香川県東かがわ市福栄地区。「来てね!見てね!遊んでね!ふくえ」より)
意味 (1)うつ。 (2)むかう(対かう)。むきあう。あいて。「対面タイメン」「対岸タイガン」 (3)こたえる(対える)。「応答オウトウ」「応対オウタイ」「対策タイサク」(相手の対応によってとる方策) (4)つりあう。「対称タイショウ」 (5)つい。そろい。「対句ツイク」
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
丵 サク 丨部
解字 上に4つのギザギザがついた字で、この音符および字形は以下の多義的な意味をもつ。
意味 (1)草がむらがる。(2)ギザギザした山が突き出てならぶ形。(3)鑿サクの音符になる。(4)業ギョウ・對タイ・ツイの構成要素になる。
イメージ
「サクの音」(鑿)
「ギザギザ歯の道具」(業・対)
音の変化 サク:鑿 ギョウ:業 タイ・ツイ:対
サクの音
鑿 サク・のみ・うがつ 金部
解字 甲骨文は▽形のノミの刃を手にもった槌状の道具で打ち、下の四角に穴をあけているさま。篆文および現代字は、▽形⇒丵サク、四角と穴⇒臼、槌を打つ形⇒殳に変化し、さらにノミが金属製であることを示す金がついた鑿サクになった。従って、丵サクは、ここでノミの刃を表しているが、叩く面はほぼ平でありギザギザしていない。ノミの発音がサクなので音符として丵サクを当てたと思われる。
意味 (1)のみ(鑿)。木材や石に穴をあけたり、加工する道具。 (2)うがつ(鑿つ)。穴をあける。「開鑿カイサク」(山野を切り開いて道路や運河などを通ずる)「鑿井サクセイ」(井戸を掘ること。掘り抜き井戸)「穿鑿センサク」(うがちほる。たずね求める)
ギザギザ歯の道具
業 ギョウ・ゴウ・わざ 木部
編磬ヘンケイ
解字 金文は上に3本のギザギザ飾りがつく楽器をかける左右2つの支柱台(「説文解字」は楽器を掛ける横木としているが私は支柱とした)。その間に発音を表す去キョがつく。では、この支柱台の楽器とは何を表すのか? 私は編磬ヘンケイ(上の写真)だと思う。編磬とは磬ケイという異なる大きさの石片をいくつも掛け並べ音階とし、それを叩いてメロディーを奏でる打楽器である。編磬を掛けた横棒を演奏者の高さに合わせて固定する役割が、左右2つの支柱台である。(この支柱台の発音を表す去キョの古代音は渓魚部で復元音はkʰǐaなど、磬ケイの古代音は渓耕部で復元音はkʰieŋなど、で類似しており、去の発音で楽器の磬を表したものと考えられる)
字形は篆文で片方が省略され、全体も上がギザギザが4つある丵の形になって簡略化された。現代字は「丵サク+木」の業になった。意味は、楽器の編磬を打つことから、演奏する、わざ(業)。おこない。編磬を打つ人は、それが「しごと・つとめ」となる。
意味 (1)しごと。つとめ。なりわい。「業務ギョウム」 「職業ショクギョウ」 (2)わざ(業)。おこない。「修業シュギョウ」(学問・技芸などを習いおさめる)「神業かみわざ」(①神のしわざ。②神の力でしかできない素晴らしい技術。=神技シンギ。※「かみわざ」と言うときは「神業」をあて、神技はシンギというのが通例)「業師ワザシ」(①技の巧みな人。②策略家) 「業物わざもの」(名工が作った切れ味のよい刀剣) (3)[仏]ごう(業)。善悪のむくいを引き起こす行為。「悪業アクゴウ」(前世の悪事)「業火ゴウカ」(①悪業を火にたとえていう。②罪人を焼く地獄の火)「自業自得ジゴウジトク」
対[對] タイ・ツイ・むかう 寸部
3本柄の蛸胴突タコドウズキ(ヤフオクの写真)
解字 甲骨文字は上に三本の柄がある道具を手にもつ形。この道具が何かについて諸説があるが、私は土突きをする蛸胴突タコドウズキ(蛸土突き)と考えたい。略称・タコ(蛸)とは、円筒形の木材に2本~4本の柄をつけ1人~2人がその柄を持って土を突き固めるもの。蛸の足を上にしたような形になぞらえてタコ(蛸)と呼ばれる。
甲骨文字を見ると、手の位置が3本の柄の近くに置かれており柄を持つように見える。金文第1字は下部に土を描く。第2字は両手を出した人を描き両手で持つさま。篆文で頭部が4つのギザギザがある丵に変わり手が寸になった。楷書は「丵の略体+土+寸」の對になり、現在は左辺を文に代えた対が新字体として用いられる。
意味は甲骨文字で地形などをさす語。金文は鼎(かなえ)の土製鋳型を打って銘を對(しる)す意[字統]。篆文は応答(こたえる)の意となり、さらに対面(向かい合う)の意となるが、これは蛸胴突が2人ですることが多いことからと思われる。
向かい合ってする蛸胴突(昭和15年ごろのため池作りの地固め。香川県東かがわ市福栄地区。「来てね!見てね!遊んでね!ふくえ」より)
意味 (1)うつ。 (2)むかう(対かう)。むきあう。あいて。「対面タイメン」「対岸タイガン」 (3)こたえる(対える)。「応答オウトウ」「応対オウタイ」「対策タイサク」(相手の対応によってとる方策) (4)つりあう。「対称タイショウ」 (5)つい。そろい。「対句ツイク」
<紫色は常用漢字>
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