増補改訂しました。
需 ジュ・シュ・ス・もとめる 雨部
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上が需ジュ、下が而ジ
解字 需ジュの甲骨文字は[漢語古文字字形表]のみに出ている字。他の字典には見当たらないので参考資料として掲載した。大の字の人に雨が降っている形か。金文は「雨(あめ)+大の字形の人」で、雨を求める人を表す。篆文は「雨+而ジ」の形になった。而(古代文字の下段)は、甲骨文字であごひげを表し、本来あごひげの意であるが、金文で大の字に似た形に変化しており、篆文でこの字を大(ひと)と混同して用いたと考えられる。現代字も、それを踏襲した需となった。意味は、(雨を)もとめる・まつ意。
篆文から大⇒而に置き換えられたことにより、需のイメージに而ジ(ひげ⇒やわらかい)が入り込み、「やわらかい」イメージが音符に生まれた。このイメージをもつ字は篆文以降に作られた字である。
意味 (1)もとめる(需める)。必要とする。「需要ジュヨウ」(求めること)「需用ジュヨウ」(用途に応じて用いる)「需給ジュキュウ」(需要と供給) (2)(雨を)まつ。待つ。「需于郊コウにまつ」(郊外で待つ)
イメージ 「雨をもとめる」かたちは、一方で「雨にぬれる」形でもある。篆文から大⇒而に置き換えられたことにより、而のイメージである「やわらかい」が加わった。
「雨をもとめる」(需・儒)
「雨にぬれる」(濡)
「やわらかい」(嬬・孺・襦・繻・懦・糯・蠕・臑)
音の変化 ジュ:需・濡・儒・嬬・孺・襦 シュ:繻 ゼン:蠕 ダ:懦・糯 ドウ:臑
雨をもとめる
儒 ジュ イ部
解字 「イ(人)+需(雨をもとめる)」 の会意形声。雨を求めるために祈る人。降雨の祈祷を行う人は巫祝フシュク(神に仕える者)であるが、このように、ある種の専門知識をもつ人たちを言う。古代の中国で、葬礼や礼儀を司った階層の人々を言った。のち、この中から孔子が出て、儒教を完成させた。
意味 (1)古代の中国で、ある種の専門知識や技術を身に着け、貴族に儀礼や教育を授けた人。先生・学者。「大儒ダイジュ」「老儒ロウジュ」 (2)孔子の教え。「儒教ジュキョウ」「儒家ジュカ」「儒者ジュシャ」「儒学ジュガク」 (3)みじかい。こびと。(孺ジュに通じた用法)「侏儒シュジュ」(侏も儒も、こびとの意)
雨にぬれる
濡 ジュ・ぬれる・うるおう 氵部
解字 「氵(みず)+需(雨にぬれる)」の会意形声。需は字形から雨にぬれる形であり、氵(みず)をつけて「ぬれる」意味を表した。
意味 (1)ぬれる(濡れる)。うるおう(濡う)。「濡染ジュセン」(濡れて染まる。暮らしの中で生活し自然に適応能力がつくこと)「濡れ衣ぬれぎぬ」(①濡れた衣服。②身に覚えのない罪) (2)とどこおる。「濡滞ジュタイ」(濡も滞も、とどこおる意)
やわらかい
嬬 ジュ・つま 女部
解字 「女(おんな)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。物腰のやわらかい女。
意味 (1)つま(嬬)。「嬬人ジュジン」 (2)そばめ。 (3)よわい。かよわい。
孺 ジュ・ちのみご 子部
解字 「子(こども)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。生まれたばかりの肌のやわらかな子ども。
意味 (1)ちのみご(孺)。おさなご。「孺子ジュシ」(おさなご)「孺形ジュギョウ」(おさなごの形をした人形) (2)したう。したしむ。
襦 ジュ 衣部
解字 「衣(ころも)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわらかな衣で肌着をいう。
意味 はだぎ。下着。汗とり。「汗襦カンンジュ」(汗とり肌着)「襦袢ジュバン」(和服用の下着)
繻 シュ・ジュ 糸部
解字 「糸(ぬの)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。絹糸で織ったやわらかい布をいう。日本では、絹の練り糸で織った光沢のある織物をいう。
意味 (1)やわらかい絹布。彩色のほどこされた絹布。 (2)[国]。絹の練り糸で織った光沢のある織物。「繻子シュス」(絹織物の一種)「繻珍シュチン」(繻子地に色糸を用いて文様を織り出したもの)
懦 ダ・ジュ・よわい 忄部
解字 「忄(心)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわらかな心で、気がよわい意。
意味 よわい(懦い)。気がよわい。いくじがない。「懦弱ダジャク」(気がよわいこと)「懦夫ダフ」(気のよわい男性)「怯懦キョウダ」(臆病で意志の弱い)
糯 ダ・ナ・もち・もちごめ 米部
解字 「米(こめ)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわらかい米で、ねばりけのある、もちごめをいう。
意味 もち(糯)。もちごめ(糯)。もちいね。ねばりけのある米。「糯米もちごめ」「糯粟もちあわ」(ねばりけのある粟)「糯種もちしゅ」(米などの粘り気のある種類。⇔粳種うるちしゅ)
蠕 ゼン・うごめく 虫部
解字 「虫(むし)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。ミミズなどのやわらい虫が動くさま。
意味 うごめく(蠕く)。かすかにうごく。「蠕動ゼンドウ」(①虫がうごくこと。②筋肉が収縮する波が徐々に移行する型の動き)
臑 ドウ・ジュ・ジ 月部にく
解字 「月(にく)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわからい肉の意。特に豚や羊の前足のやわらかい肉をいう。日本では脚のすねをいう。
意味 (1)動物の前脚のやわらかい肉。「熊臑ユウドウ」(熊の前あしのやわらかい肉) (2)やわらくなるまで煮る。「臑羔ジコウ・ジュコウ」(子羊(羔)の肉の似たもの) (3)[国]すね(臑)。膝からくるぶしまでの間。=脛すね。「臑当すねあて」「臑噛り(すねかじ)り)」)
<紫色は常用漢字>
<関連音符>
而 ジ・しかして・しかも 而部
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解字 甲骨文字第一字は、口の下に垂れる四本の線を描いており、あごひげを表す。第二字は、下くちびるの線から、ひげが垂れる形。金文・篆文は、かなり変形した。現代字の而には、横一線と4本の垂れる線があり、甲骨文の面影を残している。ただし、古くから接続詞・指示詞などに仮借カシャ(当て字)された。
意味 (1)しかして(而して)。そして。順接をしめす語。「而立ジリツ」(30歳の称。論語の「三十にして立つ」から) (2)しかも。しかれども。逆接を示す語。「形而上ケイジジョウ」(形はあれども、その上。形を離れたもの)「似而非えせ」(形は似ている、でも非:ちがう) (3)すなわち。そのときは。 (4)なんじ。おまえ。
イメージ 「仮借(当て字)」された意味のほか、原義である「あごひげ」、また、長く垂れ下がったあごひげは「やわらかい」イメージがある。
「仮借(当て字)」 (而)
「あごひげ」 (耏・耐・輀)
「やわらかい」 (耎・恧・胹)
音の変化 ジ:而・耏・輀・胹 ジク:恧 ゼン:耎 タイ:耐
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需 ジュ・シュ・ス・もとめる 雨部
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上が需ジュ、下が而ジ
解字 需ジュの甲骨文字は[漢語古文字字形表]のみに出ている字。他の字典には見当たらないので参考資料として掲載した。大の字の人に雨が降っている形か。金文は「雨(あめ)+大の字形の人」で、雨を求める人を表す。篆文は「雨+而ジ」の形になった。而(古代文字の下段)は、甲骨文字であごひげを表し、本来あごひげの意であるが、金文で大の字に似た形に変化しており、篆文でこの字を大(ひと)と混同して用いたと考えられる。現代字も、それを踏襲した需となった。意味は、(雨を)もとめる・まつ意。
篆文から大⇒而に置き換えられたことにより、需のイメージに而ジ(ひげ⇒やわらかい)が入り込み、「やわらかい」イメージが音符に生まれた。このイメージをもつ字は篆文以降に作られた字である。
意味 (1)もとめる(需める)。必要とする。「需要ジュヨウ」(求めること)「需用ジュヨウ」(用途に応じて用いる)「需給ジュキュウ」(需要と供給) (2)(雨を)まつ。待つ。「需于郊コウにまつ」(郊外で待つ)
イメージ 「雨をもとめる」かたちは、一方で「雨にぬれる」形でもある。篆文から大⇒而に置き換えられたことにより、而のイメージである「やわらかい」が加わった。
「雨をもとめる」(需・儒)
「雨にぬれる」(濡)
「やわらかい」(嬬・孺・襦・繻・懦・糯・蠕・臑)
音の変化 ジュ:需・濡・儒・嬬・孺・襦 シュ:繻 ゼン:蠕 ダ:懦・糯 ドウ:臑
雨をもとめる
儒 ジュ イ部
解字 「イ(人)+需(雨をもとめる)」 の会意形声。雨を求めるために祈る人。降雨の祈祷を行う人は巫祝フシュク(神に仕える者)であるが、このように、ある種の専門知識をもつ人たちを言う。古代の中国で、葬礼や礼儀を司った階層の人々を言った。のち、この中から孔子が出て、儒教を完成させた。
意味 (1)古代の中国で、ある種の専門知識や技術を身に着け、貴族に儀礼や教育を授けた人。先生・学者。「大儒ダイジュ」「老儒ロウジュ」 (2)孔子の教え。「儒教ジュキョウ」「儒家ジュカ」「儒者ジュシャ」「儒学ジュガク」 (3)みじかい。こびと。(孺ジュに通じた用法)「侏儒シュジュ」(侏も儒も、こびとの意)
雨にぬれる
濡 ジュ・ぬれる・うるおう 氵部
解字 「氵(みず)+需(雨にぬれる)」の会意形声。需は字形から雨にぬれる形であり、氵(みず)をつけて「ぬれる」意味を表した。
意味 (1)ぬれる(濡れる)。うるおう(濡う)。「濡染ジュセン」(濡れて染まる。暮らしの中で生活し自然に適応能力がつくこと)「濡れ衣ぬれぎぬ」(①濡れた衣服。②身に覚えのない罪) (2)とどこおる。「濡滞ジュタイ」(濡も滞も、とどこおる意)
やわらかい
嬬 ジュ・つま 女部
解字 「女(おんな)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。物腰のやわらかい女。
意味 (1)つま(嬬)。「嬬人ジュジン」 (2)そばめ。 (3)よわい。かよわい。
孺 ジュ・ちのみご 子部
解字 「子(こども)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。生まれたばかりの肌のやわらかな子ども。
意味 (1)ちのみご(孺)。おさなご。「孺子ジュシ」(おさなご)「孺形ジュギョウ」(おさなごの形をした人形) (2)したう。したしむ。
襦 ジュ 衣部
解字 「衣(ころも)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわらかな衣で肌着をいう。
意味 はだぎ。下着。汗とり。「汗襦カンンジュ」(汗とり肌着)「襦袢ジュバン」(和服用の下着)
繻 シュ・ジュ 糸部
解字 「糸(ぬの)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。絹糸で織ったやわらかい布をいう。日本では、絹の練り糸で織った光沢のある織物をいう。
意味 (1)やわらかい絹布。彩色のほどこされた絹布。 (2)[国]。絹の練り糸で織った光沢のある織物。「繻子シュス」(絹織物の一種)「繻珍シュチン」(繻子地に色糸を用いて文様を織り出したもの)
懦 ダ・ジュ・よわい 忄部
解字 「忄(心)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわらかな心で、気がよわい意。
意味 よわい(懦い)。気がよわい。いくじがない。「懦弱ダジャク」(気がよわいこと)「懦夫ダフ」(気のよわい男性)「怯懦キョウダ」(臆病で意志の弱い)
糯 ダ・ナ・もち・もちごめ 米部
解字 「米(こめ)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわらかい米で、ねばりけのある、もちごめをいう。
意味 もち(糯)。もちごめ(糯)。もちいね。ねばりけのある米。「糯米もちごめ」「糯粟もちあわ」(ねばりけのある粟)「糯種もちしゅ」(米などの粘り気のある種類。⇔粳種うるちしゅ)
蠕 ゼン・うごめく 虫部
解字 「虫(むし)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。ミミズなどのやわらい虫が動くさま。
意味 うごめく(蠕く)。かすかにうごく。「蠕動ゼンドウ」(①虫がうごくこと。②筋肉が収縮する波が徐々に移行する型の動き)
臑 ドウ・ジュ・ジ 月部にく
解字 「月(にく)+需(=而。やわらかい)」の会意形声。やわからい肉の意。特に豚や羊の前足のやわらかい肉をいう。日本では脚のすねをいう。
意味 (1)動物の前脚のやわらかい肉。「熊臑ユウドウ」(熊の前あしのやわらかい肉) (2)やわらくなるまで煮る。「臑羔ジコウ・ジュコウ」(子羊(羔)の肉の似たもの) (3)[国]すね(臑)。膝からくるぶしまでの間。=脛すね。「臑当すねあて」「臑噛り(すねかじ)り)」)
<紫色は常用漢字>
<関連音符>
而 ジ・しかして・しかも 而部
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解字 甲骨文字第一字は、口の下に垂れる四本の線を描いており、あごひげを表す。第二字は、下くちびるの線から、ひげが垂れる形。金文・篆文は、かなり変形した。現代字の而には、横一線と4本の垂れる線があり、甲骨文の面影を残している。ただし、古くから接続詞・指示詞などに仮借カシャ(当て字)された。
意味 (1)しかして(而して)。そして。順接をしめす語。「而立ジリツ」(30歳の称。論語の「三十にして立つ」から) (2)しかも。しかれども。逆接を示す語。「形而上ケイジジョウ」(形はあれども、その上。形を離れたもの)「似而非えせ」(形は似ている、でも非:ちがう) (3)すなわち。そのときは。 (4)なんじ。おまえ。
イメージ 「仮借(当て字)」された意味のほか、原義である「あごひげ」、また、長く垂れ下がったあごひげは「やわらかい」イメージがある。
「仮借(当て字)」 (而)
「あごひげ」 (耏・耐・輀)
「やわらかい」 (耎・恧・胹)
音の変化 ジ:而・耏・輀・胹 ジク:恧 ゼン:耎 タイ:耐
音符「而ジ」へ
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