音符「王オウ」の家族字は、王をのぞくと全てがもと「止+王」の形である。この字について字統は「王がでかける」意としているが、止(あし・あるく)が意符で、王は発音だけを表している。そして往オウ以外は「止+王」が楷書で止が省かれ、すべてが王に簡略化されている。
王 オウ・きみ 王部 wáng・wàng
春秋期の青銅鉞エツ(中国オークションネットから)
解字 大きな戉エツ(=鉞。まさかり)の刃部を下にして置く形の象形。王位を示す儀式の器として玉座の前におかれた。武器(武力)によって天下を征服した者のこと[字統]。
意味 (1)きみ(王)。君主。「王朝オウチョウ」「国王コクオウ」(2)最も力のある者。第一人者。「王者オウジャ」「王座オウザ」
イメージ
「王」(王)
「ゆく・すすむ(止+王)」(往・旺・狂・誑・逛・汪・枉)
音の変化 オウ:王・往・旺・汪・枉 キョウ:狂・誑・逛
ゆく・すすむ
往 オウ・ゆく 彳部 wǎng
上は往オウ、下は止シ
解字 往の甲骨文は王の上に止シ(足の形)が乗った形。止(あるく)が意符で王を声符(音符)とした形声字。意味は、ゆく・往路をゆくこと。発音はオウ(王)[甲骨文字辞典]。金文以降、彳(ゆく)が付き、出かけて行く意が明確になった。現代字は「止+王」が主オウに変化した往になった。この主オウは主シュ(ぬし)とは別の字である。
意味 (1)ゆく(往く)。すすむ。⇔復。「往診オウシン」(行って診察する)「往路オウロ」(行きの道)「往復オウフク」「往来オウライ」(①往き来する。往き来の道。②手紙のやりとり)(2)ゆき過ぎる。いにしえ。「往時オウジ」「往古オウコ」
旺 オウ・さかん 日部 wàng
解字 篆文は「日(太陽)+往(ゆく・すすむ)」の会意形声。太陽がゆく意で、日がかがやく形。転じて、さかん・さかんなさまを表す。現代字は往⇒王に変化した旺となった。
意味 (1)さかん(旺ん)。さかんなさま。「旺盛オウセイ」「興旺キョウオウ」(さかんにおこる)「旺文社オウブンシャ」(出版社の名前)(2)美しい・光を放って美しく輝く。「旺旺オウオウ」
狂 キョウ・くるう・くるおしい 犭部 kuáng
解字 甲骨文~篆文とも「犭(いぬ)+「止+王」=往オウの略体(ゆく・すすむ)」の形。発音はオウ⇒キョウに変化した。犬がゆく、すすむこと。甲骨文は地名の用例しかないという。金文は人名の用例がある。この字が狂うという意味をもつのは篆文からのようである。後漢の[説文解字]は、噛み癖のある犬としているので、出歩いている凶暴な犬(狂犬)を人に移して「くるう」となった。現代字は右辺の「止+王」⇒王に変化した狂になった。
意味 (1)くるう(狂う)。気がちがう。くるおしい(狂おしい)。「狂乱キョウラン」(2)くるったように。「狂喜キョウキ」「狂信キョウシン」(3)こっけい。おどける。「狂言キョウゲン」「狂歌キョウカ」
誑 キョウ・たぶらかす 言部 kuáng
解字 「言(いう)+狂(くるう)」の会意形声。おかしなことを言って相手をだますこと。
意味 たぶらかす(誑かす)。たらす(誑す)。だます。あざむく。「誑惑キョウワク」(人をあざむいてまどわす)
逛 キョウ 辶部 guàng
解字 「辶(ゆく)+狂(犬がゆく)」の会意形声。狂は甲骨文・篆文でわかるように犬がゆく・すすむ形で、犬がぶらぶら歩く意。その犬が噛みつくので狂う意となったので、さらに辶(ゆく)をつけて、もとのぶらぶら歩く意を表す。人に移して使う。
意味 (1)あてもなく歩きまわる。ぶらつく。「逛逛キョウキョウ」(ぶらつく)「逛蕩キョウトウ」(逛も蕩も、ぶらぶらする意)
汪 オウ 氵部 wāng
解字 金文・篆文は「氵(みず)+「止+王」=往オウの略体(ゆく)」の会意形声。水が行きあふれる意で、水が広がってひろい意をあらわす。現代字は「氵+王」の汪になった。
意味 (1)ひろい。深くひろい。「汪汪オウオウ」(水の広く深いさま)「汪然オウゼン」(広く深いさま)「汪洋オウヨウ」(大海。広々と大きい)(2)姓。「汪兆銘オウチョウメイ」(中華民国の政治家)「汪洋オウヨウ」(中国の政治家。元中国共産党政治局員)
枉 オウ・まげる・まがる 木部 wǎng
解字 篆文は「木(き)+「止+王」=往オウの略体(ゆく)」の会意形声。曲がり角をゆく意味を木をつけて表した字で、道を曲がってゆく意。また、まっすぐな木を曲げる意から転じて、道理をおしまげる意ともなる。[説文解字]は「衺曲(=邪曲)ジャキョク(まがる。よこしまで道理にたがう)也(な)り」とする。
意味 (1)まげる(枉げる)。まがる(枉がる)。おしまげる。「枉道オウドウ」(道理をおしまげる)「枉法オウホウ」(法を無理にまげる)(2)無実の罪。「冤枉エンオウ」(冤も枉も、無実の罪の意)「枉死オウシ」(無実の罪で死ぬ。恨みを抱いて死ぬ)(3)まげて(枉げて)。寄り道をする。「枉駕オウガ」(わざわざ回り道をして立ち寄る。駕は馬車にのる意)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
王 オウ・きみ 王部 wáng・wàng
春秋期の青銅鉞エツ(中国オークションネットから)
解字 大きな戉エツ(=鉞。まさかり)の刃部を下にして置く形の象形。王位を示す儀式の器として玉座の前におかれた。武器(武力)によって天下を征服した者のこと[字統]。
意味 (1)きみ(王)。君主。「王朝オウチョウ」「国王コクオウ」(2)最も力のある者。第一人者。「王者オウジャ」「王座オウザ」
イメージ
「王」(王)
「ゆく・すすむ(止+王)」(往・旺・狂・誑・逛・汪・枉)
音の変化 オウ:王・往・旺・汪・枉 キョウ:狂・誑・逛
ゆく・すすむ
往 オウ・ゆく 彳部 wǎng
上は往オウ、下は止シ
解字 往の甲骨文は王の上に止シ(足の形)が乗った形。止(あるく)が意符で王を声符(音符)とした形声字。意味は、ゆく・往路をゆくこと。発音はオウ(王)[甲骨文字辞典]。金文以降、彳(ゆく)が付き、出かけて行く意が明確になった。現代字は「止+王」が主オウに変化した往になった。この主オウは主シュ(ぬし)とは別の字である。
意味 (1)ゆく(往く)。すすむ。⇔復。「往診オウシン」(行って診察する)「往路オウロ」(行きの道)「往復オウフク」「往来オウライ」(①往き来する。往き来の道。②手紙のやりとり)(2)ゆき過ぎる。いにしえ。「往時オウジ」「往古オウコ」
旺 オウ・さかん 日部 wàng
解字 篆文は「日(太陽)+往(ゆく・すすむ)」の会意形声。太陽がゆく意で、日がかがやく形。転じて、さかん・さかんなさまを表す。現代字は往⇒王に変化した旺となった。
意味 (1)さかん(旺ん)。さかんなさま。「旺盛オウセイ」「興旺キョウオウ」(さかんにおこる)「旺文社オウブンシャ」(出版社の名前)(2)美しい・光を放って美しく輝く。「旺旺オウオウ」
狂 キョウ・くるう・くるおしい 犭部 kuáng
解字 甲骨文~篆文とも「犭(いぬ)+「止+王」=往オウの略体(ゆく・すすむ)」の形。発音はオウ⇒キョウに変化した。犬がゆく、すすむこと。甲骨文は地名の用例しかないという。金文は人名の用例がある。この字が狂うという意味をもつのは篆文からのようである。後漢の[説文解字]は、噛み癖のある犬としているので、出歩いている凶暴な犬(狂犬)を人に移して「くるう」となった。現代字は右辺の「止+王」⇒王に変化した狂になった。
意味 (1)くるう(狂う)。気がちがう。くるおしい(狂おしい)。「狂乱キョウラン」(2)くるったように。「狂喜キョウキ」「狂信キョウシン」(3)こっけい。おどける。「狂言キョウゲン」「狂歌キョウカ」
誑 キョウ・たぶらかす 言部 kuáng
解字 「言(いう)+狂(くるう)」の会意形声。おかしなことを言って相手をだますこと。
意味 たぶらかす(誑かす)。たらす(誑す)。だます。あざむく。「誑惑キョウワク」(人をあざむいてまどわす)
逛 キョウ 辶部 guàng
解字 「辶(ゆく)+狂(犬がゆく)」の会意形声。狂は甲骨文・篆文でわかるように犬がゆく・すすむ形で、犬がぶらぶら歩く意。その犬が噛みつくので狂う意となったので、さらに辶(ゆく)をつけて、もとのぶらぶら歩く意を表す。人に移して使う。
意味 (1)あてもなく歩きまわる。ぶらつく。「逛逛キョウキョウ」(ぶらつく)「逛蕩キョウトウ」(逛も蕩も、ぶらぶらする意)
汪 オウ 氵部 wāng
解字 金文・篆文は「氵(みず)+「止+王」=往オウの略体(ゆく)」の会意形声。水が行きあふれる意で、水が広がってひろい意をあらわす。現代字は「氵+王」の汪になった。
意味 (1)ひろい。深くひろい。「汪汪オウオウ」(水の広く深いさま)「汪然オウゼン」(広く深いさま)「汪洋オウヨウ」(大海。広々と大きい)(2)姓。「汪兆銘オウチョウメイ」(中華民国の政治家)「汪洋オウヨウ」(中国の政治家。元中国共産党政治局員)
枉 オウ・まげる・まがる 木部 wǎng
解字 篆文は「木(き)+「止+王」=往オウの略体(ゆく)」の会意形声。曲がり角をゆく意味を木をつけて表した字で、道を曲がってゆく意。また、まっすぐな木を曲げる意から転じて、道理をおしまげる意ともなる。[説文解字]は「衺曲(=邪曲)ジャキョク(まがる。よこしまで道理にたがう)也(な)り」とする。
意味 (1)まげる(枉げる)。まがる(枉がる)。おしまげる。「枉道オウドウ」(道理をおしまげる)「枉法オウホウ」(法を無理にまげる)(2)無実の罪。「冤枉エンオウ」(冤も枉も、無実の罪の意)「枉死オウシ」(無実の罪で死ぬ。恨みを抱いて死ぬ)(3)まげて(枉げて)。寄り道をする。「枉駕オウガ」(わざわざ回り道をして立ち寄る。駕は馬車にのる意)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。