旨 シ・むね・うまい 日部 zhǐ
解字 甲骨文は「(人が右を向いたような形)+口(くち)」の形。人が右を向いた形(まれに左向きもあるが、ごく少ない)は、匙(さじ)の象形とされる。それに口がついた旨シは、匙(さじ)ですくった食べ物を口にいれる形だが、甲骨文の意味は不明(甲骨文字辞典になし)。金文は口に短線が入った形になった(口に物を含んでいるさま)。[字統]は金文の斉器に「以って旨酒シシュを實(みた)す」とあり美酒で旨(うまい)酒の意とする。なお、[詩経・小雅]の魚麗篇にも「我(われ)旨酒シシュ有り」とあって美酒の意味に用いている。漢代の[説文解字]は「美(うま)い也。甘カンに従い匕(さじ)聲(声)とし、口に短線が入った形を甘いと解釈し、うまい(旨い)意としているが、発音は匕(さじ)がヒ⇒シの発音になっている。現代字で「ヒ+日」の旨のかたちになった。のち、うまいところの意から、伝えるように言われたことの、「大事なところ・主な点や意図」の意となった。
覚え方 ひび(ヒ日)旨い。
意味 (1)うまい(旨い)。「旨酒シシュ・うまざけ」(2)むね(旨)。おもな点や意図。「その旨(むね)を伝える」「主旨シュシ」(主な考え)「趣旨シュシ」(目的やねらい)(3)天子の考え。「聖旨セイシ」
イメージ
「うまい」(旨・指・脂・鮨)
「旨むね・おもな点や意図」(詣)
「その他」(稽)
音の変化 シ:旨・指・脂・鮨 ケイ:詣・稽
うまい
指 シ・ゆび・さす 扌部 zhǐ
解字 「扌(手)+旨(うまい)」の会意形声。うまいものを手のゆび(指)でさすことから、ゆび(指)および指(さ)す意となった。
指(ゆび)(「犬山日語教室・指(ゆび)」より)
意味 (1)ゆび(指)。「親指おやゆび」「指紋シモン」(指先の皮膚の紋様)(2)さす(指す)。ゆびさす。「指名シメイ」「指南シナン」(南を指す。方角を指示して導く)「指針シシン」(指さす針。進むべき方針)「指図さしズ」(図を指して人を動かす)
脂 シ・あぶら・やに 月部にく zhī
解字 「月(にく)+旨(うまい)」の会意形声。肉の中の白いあぶら肉(脂身)のこと。あぶら肉は筋肉のなかや周囲につく白い脂肪分(体の貯蔵物質)で動物のエネルギー源となる。肉を食べるとき、あぶら肉が適度に混じっている(霜降肉)と美味しく感じることからこの字ができた。
牛肉の脂身(あぶらみ)(「加茂川ブログ」より)
意味 (1)あぶら(脂)。あぶら肉。動物性のあぶら。「脂肪シボウ」「油脂ユシ」(油と脂肪。常温で液体のものを油、固体のものを脂という)「脂身あぶらみ」(肉の脂肪の多い部分)(2)やに(脂)。樹皮から分泌される粘液。「樹脂ジュシ」(植物体から分泌される精油類物質の総称=天然樹脂)「合成樹脂ゴウセイジュシ」(化学合成された樹脂)「目脂めやに」(めくそ)
鮨 シ・すし 魚部 yì
解字 「魚+旨(うまい)」の会意形声。加工してうまくした魚。[説文解字]は「魚の䏽醬(=魚醤)也。蜀ショク(四川省の別称)に出る。魚に従い旨の聲(声)」とする。なお、宋代の[集韻]は「鮓サク(つけうお。なれずし)也(なり)」としている。日本では寿司の意味で用いる。
意味 (1)うおびしお。魚のしおから。 (2)[国]すし(鮨)。寿司。酢を加えたご飯と魚肉を合わせた料理。「鮨桶すしおけ」(鮨を盛りつける底の浅い桶)「鮒鮨ふなずし」(鮒を塩漬けしたものを飯と交互に重ねて漬けこみ自然発酵させた鮨。現在の鮨の源流)(3)[中国]スズキ科の魚類。
むね(旨)
詣 ケイ・いたる・もうでる 言部 yì
解字 「言(いう)+旨(むね・主な点や意図)」の会意。旨むね(主な点や意図)を言う意だが、そのために朝廷や上級官庁に行くこと。いたる意となるが、単にある場所に至るのでなく、高い所にいたる意となる。日本では高い所=神仏の意から寺社に参拝する意味でも使われる。
意味 (1)いたる(詣る)。高い所に行く。「詣闕ケイケツ」(天子の宮殿にいく。朝廷におもむく。闕ケツは宮殿の門)(2)学問などが高い境地にいっている。「造詣ゾウケイ」(学問や技や芸が深く達している)「造詣ゾウケイが深い」(3)[国]もうでる(詣でる)。まいる(詣る)。「参詣サンケイ」(神社や寺にお参りする)
その他
稽 ケイ・かんがえる 禾部 jī・qǐ
解字 「禾+尤+旨」の形声。意味も多様で字源に諸説あり、いずれと決め難い。ゴロ合わせで覚えるのが手っとり早い。この場合、尤ユウを形の似た尤(いぬ)と見做す。
覚え方 のぎ(ノ木=禾)大将、いぬ(尤)をおともに、ひび(ヒ日)稽古
意味 (1)かんがえる(稽える)。くらべて考える。「稽古ケイコ」(昔の古いことを調べ考えること。転じて、学問や学習をする、芸事や武道などを練習する意となる)「無稽ムケイ」(根拠のないこと)「荒唐コウトウ無稽」(とりとめなく根拠がない)(2)とどまる。「稽留ケイリュウ」(3)ぬかずく。「稽首ケイシュ」(4)「滑稽コッケイ」とは、面白可笑しく巧みに言いなすこと。
<紫色は常用漢字>
<参考音符>
耆 キ・シ・たしなむ 「老の略体+旨シ」の会意形声。音符「耆キ」を参照
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文は「(人が右を向いたような形)+口(くち)」の形。人が右を向いた形(まれに左向きもあるが、ごく少ない)は、匙(さじ)の象形とされる。それに口がついた旨シは、匙(さじ)ですくった食べ物を口にいれる形だが、甲骨文の意味は不明(甲骨文字辞典になし)。金文は口に短線が入った形になった(口に物を含んでいるさま)。[字統]は金文の斉器に「以って旨酒シシュを實(みた)す」とあり美酒で旨(うまい)酒の意とする。なお、[詩経・小雅]の魚麗篇にも「我(われ)旨酒シシュ有り」とあって美酒の意味に用いている。漢代の[説文解字]は「美(うま)い也。甘カンに従い匕(さじ)聲(声)とし、口に短線が入った形を甘いと解釈し、うまい(旨い)意としているが、発音は匕(さじ)がヒ⇒シの発音になっている。現代字で「ヒ+日」の旨のかたちになった。のち、うまいところの意から、伝えるように言われたことの、「大事なところ・主な点や意図」の意となった。
覚え方 ひび(ヒ日)旨い。
意味 (1)うまい(旨い)。「旨酒シシュ・うまざけ」(2)むね(旨)。おもな点や意図。「その旨(むね)を伝える」「主旨シュシ」(主な考え)「趣旨シュシ」(目的やねらい)(3)天子の考え。「聖旨セイシ」
イメージ
「うまい」(旨・指・脂・鮨)
「旨むね・おもな点や意図」(詣)
「その他」(稽)
音の変化 シ:旨・指・脂・鮨 ケイ:詣・稽
うまい
指 シ・ゆび・さす 扌部 zhǐ
解字 「扌(手)+旨(うまい)」の会意形声。うまいものを手のゆび(指)でさすことから、ゆび(指)および指(さ)す意となった。
指(ゆび)(「犬山日語教室・指(ゆび)」より)
意味 (1)ゆび(指)。「親指おやゆび」「指紋シモン」(指先の皮膚の紋様)(2)さす(指す)。ゆびさす。「指名シメイ」「指南シナン」(南を指す。方角を指示して導く)「指針シシン」(指さす針。進むべき方針)「指図さしズ」(図を指して人を動かす)
脂 シ・あぶら・やに 月部にく zhī
解字 「月(にく)+旨(うまい)」の会意形声。肉の中の白いあぶら肉(脂身)のこと。あぶら肉は筋肉のなかや周囲につく白い脂肪分(体の貯蔵物質)で動物のエネルギー源となる。肉を食べるとき、あぶら肉が適度に混じっている(霜降肉)と美味しく感じることからこの字ができた。
牛肉の脂身(あぶらみ)(「加茂川ブログ」より)
意味 (1)あぶら(脂)。あぶら肉。動物性のあぶら。「脂肪シボウ」「油脂ユシ」(油と脂肪。常温で液体のものを油、固体のものを脂という)「脂身あぶらみ」(肉の脂肪の多い部分)(2)やに(脂)。樹皮から分泌される粘液。「樹脂ジュシ」(植物体から分泌される精油類物質の総称=天然樹脂)「合成樹脂ゴウセイジュシ」(化学合成された樹脂)「目脂めやに」(めくそ)
鮨 シ・すし 魚部 yì
解字 「魚+旨(うまい)」の会意形声。加工してうまくした魚。[説文解字]は「魚の䏽醬(=魚醤)也。蜀ショク(四川省の別称)に出る。魚に従い旨の聲(声)」とする。なお、宋代の[集韻]は「鮓サク(つけうお。なれずし)也(なり)」としている。日本では寿司の意味で用いる。
意味 (1)うおびしお。魚のしおから。 (2)[国]すし(鮨)。寿司。酢を加えたご飯と魚肉を合わせた料理。「鮨桶すしおけ」(鮨を盛りつける底の浅い桶)「鮒鮨ふなずし」(鮒を塩漬けしたものを飯と交互に重ねて漬けこみ自然発酵させた鮨。現在の鮨の源流)(3)[中国]スズキ科の魚類。
むね(旨)
詣 ケイ・いたる・もうでる 言部 yì
解字 「言(いう)+旨(むね・主な点や意図)」の会意。旨むね(主な点や意図)を言う意だが、そのために朝廷や上級官庁に行くこと。いたる意となるが、単にある場所に至るのでなく、高い所にいたる意となる。日本では高い所=神仏の意から寺社に参拝する意味でも使われる。
意味 (1)いたる(詣る)。高い所に行く。「詣闕ケイケツ」(天子の宮殿にいく。朝廷におもむく。闕ケツは宮殿の門)(2)学問などが高い境地にいっている。「造詣ゾウケイ」(学問や技や芸が深く達している)「造詣ゾウケイが深い」(3)[国]もうでる(詣でる)。まいる(詣る)。「参詣サンケイ」(神社や寺にお参りする)
その他
稽 ケイ・かんがえる 禾部 jī・qǐ
解字 「禾+尤+旨」の形声。意味も多様で字源に諸説あり、いずれと決め難い。ゴロ合わせで覚えるのが手っとり早い。この場合、尤ユウを形の似た尤(いぬ)と見做す。
覚え方 のぎ(ノ木=禾)大将、いぬ(尤)をおともに、ひび(ヒ日)稽古
意味 (1)かんがえる(稽える)。くらべて考える。「稽古ケイコ」(昔の古いことを調べ考えること。転じて、学問や学習をする、芸事や武道などを練習する意となる)「無稽ムケイ」(根拠のないこと)「荒唐コウトウ無稽」(とりとめなく根拠がない)(2)とどまる。「稽留ケイリュウ」(3)ぬかずく。「稽首ケイシュ」(4)「滑稽コッケイ」とは、面白可笑しく巧みに言いなすこと。
<紫色は常用漢字>
<参考音符>
耆 キ・シ・たしなむ 「老の略体+旨シ」の会意形声。音符「耆キ」を参照
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