漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「青セイ」<あお>と「晴セイ」「清セイ」「静セイ」「精セイ」「請セイ」「情ジョウ」

2024年02月14日 | 漢字の音符
  改定しました。
[靑] セイ・ショウ・あお・あおい  青部 qīng

解字 金文は「生(セイ・ショウ)+ 鉱物を掘る井戸の形(中の横線は採取する鉱物)」の形声。[簡明金文詞典]では「青伊」という人名に用いられている。篆文は「生(セイ・ショウ)+丹(井戸穴から掘り出す赤い顔料)」の形声。[説文解字]は「(五行の)東方の色なり。木は(赤色の)火を生じる。生と丹から構成される」と五行説にからめて説明するが、意味不明である。しかし戦国時代末期の[荀子·勧学篇]は「靑出之藍而靑於藍」(青は藍(あい)より出(い)でて藍(あい)より青し」と青と藍を比較して青の色を説明している。字形は隷書(漢代)から下部が月になり旧字の靑は生⇒龶に変化した靑になり、新字体は、靑⇒青に変化する。
 青の字源には諸説あり、発音は生(セイ・ショウ)が受け持つことは一致しているが、主な説は、①丹は赤色の丹(に)でなく青丹(あおに)の色である。②生(セイ・ショウ)は地面から草が芽生える形であり、青は草の色も表す亦声(発音も意味も兼ねる)などがある。しかし字源を確定することは難しく両方の意味が含まれていると思われ、現在の青には以下の意味がある。
意味 
(1)あお(青)。あおい(青い)。①晴れた空の色。「青天セイテン」 ②緑色。「青山セイザン」(緑色の山)「踏青トウセイ」(春に芽吹いた草を踏んで散歩する) ③黒みがかった青。黒い色。「玄青ゲンセイ」(濃い黒色)「青衣セイイ」(黒い服,粗末な服)「青馬あお」(黒味がかった毛色の馬) (3)若い。「青年セイネン」「青春セイシュン」(年の若い時代) (4)地名。「青森県あおもりケン」「青島あおしま」(5)姓。「青山あおやま」「青木あおき

イメージ  
  原義である「あお」(青・晴・睛・錆・鯖・菁)
 「形声字」(清・猜・蜻)
 「きよらか(清)」(静・瀞・精・靖) 
 「まじりけのない(精)」(情・請)

音の変化   セイ:青・晴・睛・鯖・清・菁・静・瀞・精・靖・請・蜻  サイ:猜  ショウ:錆  ジョウ:情 
 
あお
 セイ・はれる・はらす  日部 qíng
解字 「日(ひ)+青(あお)」 の会意形声。青い空がひろがり太陽(日)が輝く晴(はれ)た日。青天は空が青い意。晴天は雲が少なく太陽(日)が見え、空が晴れている意。
意味 (1)はれ(晴)。空がはれる。「晴天セイテン」「快晴カイセイ」「晴耕雨読セイコウウドク」 (2)[国]はれ(晴れ)。表向き。人前。はれやか。「晴れ着」 (3)[国]はらす(晴らす)。心の中がさっぱりする。「気を晴らす」
 ショウ・セイ・さび・さびる  金部 qīng
解字 「金(銅)+靑(あおい=みどり)」 の会意形声。銅にできたみどり色のさび。銅のさびは緑青といい緑色顔料となる。
意味 (1)さび(錆)。さびる(錆びる)。金属のさび。鉄のさび。「錆色さびいろ」(鉄さびのような赤褐色)「錆声さびごえ」(枯れて渋みのある声)
 セイ・さば  魚部 qīng
解字 「魚(さかな)+靑(あおぐろい)」の会意形声。背部にあおぐろい紋様のある魚。背の青黒いのは表層近くを遊泳する魚種に広く見られる保護色で、サバもその仲間である。
意味 さば(鯖)。日本近海に生息するサバ科の魚。背部が青緑色(ふかい藍色)で、青魚、青花魚ともよばれる。「鯖寿司さばずし」「鯖雲さばぐも」(うろこ雲)「鯖をよむ」(鯖を数える際、急いでよみ数をごまかす)
 セイ・ひとみ  目部 jīng
解字 「目(め)+靑(あおぐろい・くろい)」の形声。目のなかの中心にある青黒い部分で瞳(ひとみ)をいう。瞳の色は人種によってちがうが、東洋人は黒が多い。日本では、目の黒い部分(くろめ)をいう。瞳孔。543年の字書[玉篇]は「目の珠子(たま)也」とする。
意味 ひとみ(睛)。くろめ。「点睛テンセイ」(ひとみを描きいれる)「画竜点睛ガリョウテンセイ」(画いた竜に睛(ひとみ)を入れたら、たちまち雲にのって昇天した故事から、最後の大事な仕上げをいう)「眼睛ガンセイ」(ひとみ。くろめ)
 セイ・ショウ・あおな  艸部 jīng
解字 「艸(くさ)+靑(あおい)」の会意形声。あおい草で青菜をいう。
意味 (1)あおな(菁)。かぶ。かぶら。「蕪菁ブセイ・かぶ・かぶら」(アブラナ科の根菜)。なお、菁だけで「かぶ」と読むこともある。(2)草木がしげる。「菁菁セイセイ」(草木があおあおと茂るさま)「菁莪セイガ」(菁は青々としげる、莪はつのよもぎ。転じて多くの人材を育て楽しむこと)

形声字
 セイ・ショウ・きよい・きよまる・きよめる  氵部 qīng
解字 「氵(水)+青(セイ・ショウ)」 の形声。セイ・ショウは井セイ・ショウ(井戸)に通じ、井戸の水の意。井戸水は澄んでおり、きよらかの意となる。[説文解字]は「朖(あきら)か也(なり)。澂(す)みたる水之(の)皃(さま)」とする。
意味 (1)きよい(清い)。きよらか。すむ(清む)。「清流セイリュウ」「清潔セイケツ」 (2)きよめる(清める)。「清掃セイソウ」 (3)すがすがしい。「清涼セイリョウ」 (4)整理する。始末する。「清算セイサン」「粛清シュクセイ
 サイ・そねむ  犭部 cāi
解字 「犭(いぬ)+靑(サイ)」 の形声。サイは豺サイ(やまいぬ)に通じる。野生の犬は、いつも警戒していることから、人に移して疑い深い意に使う。
意味 (1)うたがう。「猜疑サイギ」(うたがう。猜も疑も、うたがう意) (2)そねむ(猜む)。ねたむ。「猜忌サイキ」(そねみ、きらうこと)「猜怨サイエン」(そねみうらむ)
 セイ・ショウ  虫部 qīng
解字 「虫(むし)+靑(セイ)」の形声。セイは静セイ(しずか)に通じ、音もなく静かに飛び、空中で静止(ホバリング)することもできる虫。トンボの羽音は人間にとって聞き取りにくい周波数の音で構成されているため大きな音はせず、離れたところでは羽音が聞こえない。(近くで聞けばわずかな羽音が聞こえる)
意味 (1)「蜻蛉セイレイ」(とんぼ)に使われる。トンボ目の昆虫の総称。2対の翅で、よく飛ぶ虫。「蜻蛉返りとんぼがえり」(トンボが急に向きを後ろにかえる動き。宙返り)「蜻蛉魚とんぼうお」(トビウオの別称)「蜻蜓セイテイ」も、とんぼ・ヤンマの意。(2)「蜻蛉かげろう」(トンボに似ているが、からだが細く小さい昆虫。成虫は産卵後数時間で死ぬので、はかないことのたとえで使われる。蜉蝣とも書く。)
 セン・セイ・うつくしい  イ部 qiàn・qìng
解字 「イ(ひと)+靑(セン・セイ)」の形声。[説文解字]は「男子之美稱(称)」とし、字(あざな・別名)としたり、姓のあとに添える。また、請セイに通じ、やとう意がある。
意味 (1)男子の美称。「魏倩ギセン」(魏どの) (2)うつくしい(倩しい)。うるわしい。「倩粧センショウ」(美しいよそおい)「倩倩センセン」(うるわしいさま)「倩眄センベン」(口元と目元が美しい)(2)(請セイに通じ)やとう。「倩人セイジン」(人をやとう)「倩雇セイコ」(雇われる) (3)[国]つらつら(倩)

きよらか(清) 
 セイ・ジョウ・しずか・しずまる  青部 jìng
解字 「争(あらそう)+青(=清。きよらか)」 の会意形声。争いがきよめられて、しずかなこと。
意味 (1)しずか(静か)。ひっそりした。「静寂セイジャク」「静脈ジョウミャク」 (2)しずめる。しずまる。「静止セイシ
 セイ・ジョウ・とろ  氵部 jìng
解字 「氵(水)+靜(しずか)」 の会意形声。川の流れが静かな所。流れが静かだと深い。
意味 (1)とろ(瀞)。川の流れがゆるやかで水の深い所。「瀞峡どろきょう」(熊野川水系の北山川にある峡谷)「長瀞町ながとろまち」(埼玉県秩父郡にある町。町内に長瀞渓谷(ながとろけいこく)がある) (2)きよい。きよらか
 セイ・ショウ・くわしい  米部 jīng
解字 「米(こめ)+青(=清。きよらか)」 の会意形声。神に供える清らかな米の意で、まじりけのない・よりぬきの意となる。のちに、「くわしい」「こころ」の意味が加わった。
意味 (1)米を白くする。しらげる(精げる)。「精米セイマイ」(2)まじりけのない。よりぬきの。「精鋭セイエイ」「精子セイシ」 (3)くわしい(精しい)。こまかい。「精通セイツウ」「精密セイミツ」(4)こころ。気力。「精神セイシン」「精進ショウジン」 (5)もののけ。「妖精ヨウセイ」「精霊セイレイ
 セイ・やすい・やすんじる  立部
解字 「立(位置に立つ)+青(=清。きよらか)」 の会意形声。きよらかな所に立つこと。
意味 (1)やすい(靖い)。やすらか。やすんじる(靖んじる)。「靖国神社やすくにじんじゃ

まじりけのない(精) 
 ジョウ・セイ・なさけ  忄部 qíng
解字 「忄(心)+青(=精。まじりけのない)」 の会意形声。まじりけのない純粋な心。 
意味 (1)こころ。きもち。「情熱ジョウネツ」「感情カンジョウ」 (2)なさけ(情け)。思いやり。「友情ユウジョウ」 (3)ありさま。ようす。「情景ジョウケイ」「情報ジョウホウ」 (4)異性間の愛。「愛情アイジョウ」「情事ジョウジ
 セイ・シン・こう・うける  言部 qǐng
解字 「言(ことば)+青(=精。まじりけのない)」 の会意形声。まじりけのない心で言うこと。心をこめて言う意で、日本では頼む・求める意。中国では、頼む他に招待する意(請客)もある。
意味 (1)こう(請う)。ねがう。「要請ヨウセイ」「請願セイガン」「普請フシン」(あまねく請うて寺院建築の仕事に従事してもらう。転じて、建築・土木工事) (2)[国]うける(請ける)。ひきうける。「請負うけおい」「下請したうけ
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音符 「宿シュク」 <やどる... | トップ | 音符 「尞リョウ」<かがり火... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字の音符」カテゴリの最新記事