産経ニュース-2018.3.12 16:00
国内外で大きな非難が起こっても、一向に無くならないのが米国での銃乱射事件です。
2月14日午後、米南部フロリダ州パークランドの高校で銃乱射事件があり、17人の生徒らが亡くなりました。2月15日付の英BBC放送(電子版)などによると、容疑者の少年(19)は地元警察によって拘束されましたが、この高校の元生徒でした。
今年に入って死傷者が出た学校での銃乱射事件は早くもこれで6件目。当然ながら銃規制を求める声が高まっています。
ところが、与党・共和党に隠然(いんぜん)たる力を発揮する全米ライフル協会(NRA)は、トランプ米大統領が銃規制を強化する考えを表明したにも関わらず、これに反対すると明言。強硬姿勢を崩しません。(2月26日付英BBC放送電子版)
毎度毎度、銃乱射事件が起きるたび、米ではこうした“いたちごっこ”が続き、結局、事件は風化し、何も変わりません。
この問題を扱ったドキュメンタリー映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」(マイケル・ムーア監督、2002年)を見れば、それがよく分かると思います。
1999年4月、米コロラド州のコロンバイン高校で、この高校の男子生徒2人が校内で銃を乱射。生徒12人と教師1人を殺害したあと、2人は自殺します。
ムーア監督は、全米に大きな衝撃を与えたこの事件について、先住民族への仕打ちや黒人奴隷の問題といった米国建国に至る歴史の暗い側面に着目。加えて、地元住民はもちろん、NRAの当時の会長で大物俳優だったチャールトン・ヘストンをはじめ、犯人が影響を受けたという、悪魔的で反社会的なメッセージの楽曲で知られる米ロッカー、マリリン・マンソンら、さまざまな関係者に取材し“銃と米国”という、米ではタブー視されがちな重苦しい問題に肉薄します。
単なる小難(むずか)しいドキュメンタリー映画と違い、本作は、アポなし突撃取材で相手の本音をポロリと聞き出すゲリラ的手法と、最初から善悪を明快に対立させつつ、意外性も盛りこむ巧みな編集・演出で、ドキュメンタリー映画に革命をもたらし、商業的にも異例の大成功を収めました。
とはいえ、今も米国では、銃規制どころか、学校では先生も銃を所持しろだの、教室に防弾シェルターを設置しろだのと意見が出ています。米国の“闇”の深さにがくぜんとするのです。 (岡田敏一)
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監督・脚本・ナレーター: マイケル・ムーア
製作総指揮: ウォルフラム・ティッチー
出演: マリリン・マンソン、 チャールトン・ヘストン、 マット・ストーン
全世界興行収入: 約5800万ドル(約62億円)
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『ボウリング・フォー・コロンバイン』ブルーレイ発売中 2800円+税 発売元:日活株式会社 販売元:株式会社ハピネット
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