北海道新聞05/28 05:00
鉄のマチ室蘭にはもう一つ、特徴的な表情がある。港町。三方を海に囲まれ、市街地から5分、10分と進むだけで海にぶつかる。中心街の一つである中央町から、南へ徒歩約10分でたどり着くのは追直漁港。今回のまちのものがたりの舞台だ。
室蘭周辺の海域は太平洋と噴火湾が交差し、カレイやコンブなど多種多様な漁業資源を誇る。太平洋沖では底引き網漁が盛んで、スケソウダラが上がる。同漁港の年間水揚げ量は胆振管内で最大の約1万3千トン(2017年)を誇り、北海道の水産基地の一つだ。
「室蘭市史」によると名前の由来はアイヌ語で「幣が群立する所」の意味をもつ「オイナウシ」。祭りや神事が行われたとされる。
現在最大300トン級の漁船が接岸できる追直漁港だが、かつては追直浜とよばれ、砂浜であった。幸町で生まれ育ち、現在は蘭西七町連合会の会長を務める森川卓也さん(79)は「追直は電信浜と並んで子どもたちの遊び場だった。追直の漁師には海の幸をもらったり、漁港と地域は深いつながりがあった」と振り返る。
1996年には人工島「Mランド」が着工し、2013年に完成した。「つくり育てる漁業」の支援基地となることが期待され、ホタテ稚貝の養殖などが進む。しかし、近年はブランドの3年貝ホタテ「蘭扇(らんせん)」が出荷できない状況が続き、今年は噴火湾ホタテが大量へい死するなど、厳しい局面にある。
一方で、同漁港を会場に開催される「さかなの港町同窓会」は毎年人気を集める。昨年は台風の影響で記念の25回目が中止に。今年の開催を待ち望む市民は多い。
「海のマチ室蘭」の拠点たる追直漁港。その近辺で生きる人々の息づかいを追っていきたい。
■Mランド 育てる漁業けん引 ホタテ稚貝出荷などに活用 写真撮影スポットでも人気
「つくり育てる漁港」「ふれあい漁港」を目指して整備された追直漁港のシンボルが、西方沖合260メートルに浮かぶ人工島「Mランド」だ。鉄骨造り延べ約1万6千平方メートル、2層構造で1階部分をホタテの選別や荷さばきを行う漁業施設、2階部分を駐車場にしている。
「室蘭」のアルファベット表記から頭文字を取り、「Mランド」。21世紀の室蘭の漁業をけん引することが期待される施設で、ホタテの稚貝出荷や毛ガニの水揚げなどに活用されている。
2015、16年には台風などにより越波被害が発生。17年5月から18年3月まで沖合側の護岸に5・1メートルの鉄筋コンクリート造の壁を上乗せする対策を講じ、全体の高さは14メートルに。事業費はこれまで合わせて約186億円。
本来の役割に加えて近年では、写真撮影スポットとしても人気だ。Mランドから望む北西マスイチ浜方面の断崖絶壁や測量山のライトアップは、ここでしかみることのない光景。室蘭市中島本町の写真愛好家、斎藤ますみさん(47)は「測量山が裏側から見られたり、山の真上に北極星が来たり、独特の景観が絵になる」と話す。
◇
室蘭報道部の久保耕平が担当し、29日から連載の本編を始めます。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/309309
鉄のマチ室蘭にはもう一つ、特徴的な表情がある。港町。三方を海に囲まれ、市街地から5分、10分と進むだけで海にぶつかる。中心街の一つである中央町から、南へ徒歩約10分でたどり着くのは追直漁港。今回のまちのものがたりの舞台だ。
室蘭周辺の海域は太平洋と噴火湾が交差し、カレイやコンブなど多種多様な漁業資源を誇る。太平洋沖では底引き網漁が盛んで、スケソウダラが上がる。同漁港の年間水揚げ量は胆振管内で最大の約1万3千トン(2017年)を誇り、北海道の水産基地の一つだ。
「室蘭市史」によると名前の由来はアイヌ語で「幣が群立する所」の意味をもつ「オイナウシ」。祭りや神事が行われたとされる。
現在最大300トン級の漁船が接岸できる追直漁港だが、かつては追直浜とよばれ、砂浜であった。幸町で生まれ育ち、現在は蘭西七町連合会の会長を務める森川卓也さん(79)は「追直は電信浜と並んで子どもたちの遊び場だった。追直の漁師には海の幸をもらったり、漁港と地域は深いつながりがあった」と振り返る。
1996年には人工島「Mランド」が着工し、2013年に完成した。「つくり育てる漁業」の支援基地となることが期待され、ホタテ稚貝の養殖などが進む。しかし、近年はブランドの3年貝ホタテ「蘭扇(らんせん)」が出荷できない状況が続き、今年は噴火湾ホタテが大量へい死するなど、厳しい局面にある。
一方で、同漁港を会場に開催される「さかなの港町同窓会」は毎年人気を集める。昨年は台風の影響で記念の25回目が中止に。今年の開催を待ち望む市民は多い。
「海のマチ室蘭」の拠点たる追直漁港。その近辺で生きる人々の息づかいを追っていきたい。
■Mランド 育てる漁業けん引 ホタテ稚貝出荷などに活用 写真撮影スポットでも人気
「つくり育てる漁港」「ふれあい漁港」を目指して整備された追直漁港のシンボルが、西方沖合260メートルに浮かぶ人工島「Mランド」だ。鉄骨造り延べ約1万6千平方メートル、2層構造で1階部分をホタテの選別や荷さばきを行う漁業施設、2階部分を駐車場にしている。
「室蘭」のアルファベット表記から頭文字を取り、「Mランド」。21世紀の室蘭の漁業をけん引することが期待される施設で、ホタテの稚貝出荷や毛ガニの水揚げなどに活用されている。
2015、16年には台風などにより越波被害が発生。17年5月から18年3月まで沖合側の護岸に5・1メートルの鉄筋コンクリート造の壁を上乗せする対策を講じ、全体の高さは14メートルに。事業費はこれまで合わせて約186億円。
本来の役割に加えて近年では、写真撮影スポットとしても人気だ。Mランドから望む北西マスイチ浜方面の断崖絶壁や測量山のライトアップは、ここでしかみることのない光景。室蘭市中島本町の写真愛好家、斎藤ますみさん(47)は「測量山が裏側から見られたり、山の真上に北極星が来たり、独特の景観が絵になる」と話す。
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室蘭報道部の久保耕平が担当し、29日から連載の本編を始めます。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/309309