北海道新聞 09/13 05:00
【厚真】胆振管内厚真町の読み方は「あつま」? それとも「あづま」?―。胆振東部地震の取材で、町内を流れる厚真川の読み方が「あつまがわ」ではなく「あづまがわ」だと知った。町職員も「町名は『あつま』なのにどうして?」と首をかしげる。歴史をひもときながら、その謎に迫った。
町中心部の厚真川沿いに立つ案内板を見ると、振り仮名は「あづまがわ」。名称の由来について、アイヌ語で「向こうの湿地帯」を意味する「アットマム」から「アトマム」、「アツマ」と変化した説が有力と説明書きがあったが、川の名前には濁点が付く。
厚真川を管理する室蘭建設管理部によると、公的な台帳には読み方が「あづまがわ」と示されているが、理由は不明。厚真川上流にある厚真ダムも「あづま」が正式呼称となっている。
1960年の町制施行の際、町は町名を「あつま」という読み方で届け出た。ただ、地元住民と話していると「あづま」と発する町民が高齢者を中心に多い。
町教委の学芸員乾哲也さん(47)によると、「あつま」と「あづま」の読み方が混在している状況は、幕末の探検家松浦武四郎の時代にさかのぼる。武四郎が1858年の蝦夷地(えぞち)探査で厚真周辺を訪れた際の日誌に、「一般には『あづま』との名称が広まっているが、正式には『あつま』と呼ぶと書かれている」とある。乾さんは「『あづま』は代々受け継がれ、今も年配の方を中心に使われているのでは」と話す。
濁点を付ける読み方を北海道の方言と指摘するのは、札幌国際大の大鐘秀峰教授(言語学)だ。「北海道では一般的に語頭ではないカ行とタ行が濁音化されると言われている。『あづま』もその一例ではないか」
町民に広まった「あづま」を使っているのが、特産品の「あづまジンギスカン」。製造・販売する町内の市原精肉店の市原泰成社長(31)によると、祖父泰三さんが1968年に創業した当時、厚真を「あづま」と読む住民が大半だったという。「あづまと呼ばれていたから、自然とあづまジンギスカンになった」
ただ町内では今、若い世代を中心に「あつま」が定着。市原さんは少し寂しげに言う。「町民になじみのある『あづま』という読み方も、いつかはなくなってしまうのかもしれない」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/459746
【厚真】胆振管内厚真町の読み方は「あつま」? それとも「あづま」?―。胆振東部地震の取材で、町内を流れる厚真川の読み方が「あつまがわ」ではなく「あづまがわ」だと知った。町職員も「町名は『あつま』なのにどうして?」と首をかしげる。歴史をひもときながら、その謎に迫った。
町中心部の厚真川沿いに立つ案内板を見ると、振り仮名は「あづまがわ」。名称の由来について、アイヌ語で「向こうの湿地帯」を意味する「アットマム」から「アトマム」、「アツマ」と変化した説が有力と説明書きがあったが、川の名前には濁点が付く。
厚真川を管理する室蘭建設管理部によると、公的な台帳には読み方が「あづまがわ」と示されているが、理由は不明。厚真川上流にある厚真ダムも「あづま」が正式呼称となっている。
1960年の町制施行の際、町は町名を「あつま」という読み方で届け出た。ただ、地元住民と話していると「あづま」と発する町民が高齢者を中心に多い。
町教委の学芸員乾哲也さん(47)によると、「あつま」と「あづま」の読み方が混在している状況は、幕末の探検家松浦武四郎の時代にさかのぼる。武四郎が1858年の蝦夷地(えぞち)探査で厚真周辺を訪れた際の日誌に、「一般には『あづま』との名称が広まっているが、正式には『あつま』と呼ぶと書かれている」とある。乾さんは「『あづま』は代々受け継がれ、今も年配の方を中心に使われているのでは」と話す。
濁点を付ける読み方を北海道の方言と指摘するのは、札幌国際大の大鐘秀峰教授(言語学)だ。「北海道では一般的に語頭ではないカ行とタ行が濁音化されると言われている。『あづま』もその一例ではないか」
町民に広まった「あづま」を使っているのが、特産品の「あづまジンギスカン」。製造・販売する町内の市原精肉店の市原泰成社長(31)によると、祖父泰三さんが1968年に創業した当時、厚真を「あづま」と読む住民が大半だったという。「あづまと呼ばれていたから、自然とあづまジンギスカンになった」
ただ町内では今、若い世代を中心に「あつま」が定着。市原さんは少し寂しげに言う。「町民になじみのある『あづま』という読み方も、いつかはなくなってしまうのかもしれない」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/459746