北海道新聞 09/23 05:00
菅義偉首相が、官房長官として関心を寄せてきた北海道にどう関わっていくかが、道内の政治・経済に大きな影響を与えそうだ。首相はこれまで、JR北海道の再生や観光振興、胆振管内白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の整備などで「豪腕」を発揮。首相として言動の重みが増す一方、「弱点」とされる外交・安全保障などにも目配りする必要があり、実務への関与が弱まる可能性もある。
首相がとりわけ力を入れてきたのは、JR北海道の再生だ。観光振興が持論の首相は「北海道の魅力的な観光資源を生かすには、鉄道がしっかりしなければならない」との思いが強い。
■人事を主導
かつてレール検査データの改ざんなどの不祥事が相次いだ際には「安全点検が極めて遅れている」と批判。JR北海道の全株式は国土交通省の外郭団体が保有しており、トップ人事は閣議了解が必要となる。首相は新社長の人選を主導し、2014年に子会社社長だった島田修氏を起用した。
首相はかつて運輸族だった小此木彦三郎元建設相の秘書を務め、JR北海道の故中島尚俊元社長と親しかった。JR再生に力を傾けるのは、11年に中島氏が命を絶ち、心を痛めたことも要因となった。
14年にはJR東日本の社長候補の1人と言われる西野史尚氏を副社長に起用。今年になって島田氏の交代が国交省内で取り沙汰された際も「現経営陣はよくやっている」と話し、続投の方向が固まった。
16年の札幌での講演では、札幌と新千歳空港を結ぶ快速エアポートの本数を20年をめどに約3割増やしたいと表明。今年3月のダイヤ改正で運行本数は1時間4本から5本に増えた。ただ、新車両の購入で「経営が一層厳しくなった」(国交省中堅)との声もある。
首相が「税収減に苦しむ北海道のためにあるようなものだ」と胸を張るのが、総務相時代に導入したふるさと納税だ。首相の自民党総裁選の出陣式では、ふるさと納税を生かしたまちづくりに力を入れる十勝管内上士幌町のNPO職員が応援のあいさつに立った。首相は16年、同町が東京都内で開いた寄付者を招いたイベントも視察。今後は、返礼品競争の過熱などへの対応が問われそうだ。
首相の道内への関心は、経済・観光分野に偏っているとの指摘もある。首相はウポポイに「観光客の呼び水になる」と期待するが、アイヌ民族や専門家には「観光に傾斜しており、アイヌ民族の権利回復などが不十分」との声も根強い。
■人脈幅広く
道内の人脈は幅広い。首相は函館に親類が住んでおり、学生時代には会いに来ていた。知事選出馬を後押しした鈴木直道知事とは、後見役として緊密に連絡を取り合う。自民党道連の吉川貴盛会長や長谷川岳会長代行とも近い。
経済界では、同じ法政大卒の堰八義博北海道銀行会長のほか、北海道空港(札幌)の住吉哲治会長らと交流がある。
首相に道内の実情を訴えてきた道町村会顧問の寺島光一郎前檜山管内乙部町長(76)は「おかしいと思ったことは電光石火で改める人。地方にも思いやりがあるが、首相を頼りにするだけでは助けてくれない。まずは自分たちで産業を興すなどの努力をすべきだ」と、「菅頼み」ではない道内自治体の奮起を求めた。(石井努)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/462839
菅義偉首相が、官房長官として関心を寄せてきた北海道にどう関わっていくかが、道内の政治・経済に大きな影響を与えそうだ。首相はこれまで、JR北海道の再生や観光振興、胆振管内白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の整備などで「豪腕」を発揮。首相として言動の重みが増す一方、「弱点」とされる外交・安全保障などにも目配りする必要があり、実務への関与が弱まる可能性もある。
首相がとりわけ力を入れてきたのは、JR北海道の再生だ。観光振興が持論の首相は「北海道の魅力的な観光資源を生かすには、鉄道がしっかりしなければならない」との思いが強い。
■人事を主導
かつてレール検査データの改ざんなどの不祥事が相次いだ際には「安全点検が極めて遅れている」と批判。JR北海道の全株式は国土交通省の外郭団体が保有しており、トップ人事は閣議了解が必要となる。首相は新社長の人選を主導し、2014年に子会社社長だった島田修氏を起用した。
首相はかつて運輸族だった小此木彦三郎元建設相の秘書を務め、JR北海道の故中島尚俊元社長と親しかった。JR再生に力を傾けるのは、11年に中島氏が命を絶ち、心を痛めたことも要因となった。
14年にはJR東日本の社長候補の1人と言われる西野史尚氏を副社長に起用。今年になって島田氏の交代が国交省内で取り沙汰された際も「現経営陣はよくやっている」と話し、続投の方向が固まった。
16年の札幌での講演では、札幌と新千歳空港を結ぶ快速エアポートの本数を20年をめどに約3割増やしたいと表明。今年3月のダイヤ改正で運行本数は1時間4本から5本に増えた。ただ、新車両の購入で「経営が一層厳しくなった」(国交省中堅)との声もある。
首相が「税収減に苦しむ北海道のためにあるようなものだ」と胸を張るのが、総務相時代に導入したふるさと納税だ。首相の自民党総裁選の出陣式では、ふるさと納税を生かしたまちづくりに力を入れる十勝管内上士幌町のNPO職員が応援のあいさつに立った。首相は16年、同町が東京都内で開いた寄付者を招いたイベントも視察。今後は、返礼品競争の過熱などへの対応が問われそうだ。
首相の道内への関心は、経済・観光分野に偏っているとの指摘もある。首相はウポポイに「観光客の呼び水になる」と期待するが、アイヌ民族や専門家には「観光に傾斜しており、アイヌ民族の権利回復などが不十分」との声も根強い。
■人脈幅広く
道内の人脈は幅広い。首相は函館に親類が住んでおり、学生時代には会いに来ていた。知事選出馬を後押しした鈴木直道知事とは、後見役として緊密に連絡を取り合う。自民党道連の吉川貴盛会長や長谷川岳会長代行とも近い。
経済界では、同じ法政大卒の堰八義博北海道銀行会長のほか、北海道空港(札幌)の住吉哲治会長らと交流がある。
首相に道内の実情を訴えてきた道町村会顧問の寺島光一郎前檜山管内乙部町長(76)は「おかしいと思ったことは電光石火で改める人。地方にも思いやりがあるが、首相を頼りにするだけでは助けてくれない。まずは自分たちで産業を興すなどの努力をすべきだ」と、「菅頼み」ではない道内自治体の奮起を求めた。(石井努)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/462839