渡辺愛梨 会員限定記事
北海道新聞2025年1月5日 19:35(1月5日 23:57更新)
アイヌ神謡集の中国語訳を完成させた北大大学院の研究員馬長城さん
北大大学院の中国人研究員馬長城(まちょうじょう)さん(38)が、アイヌ文化の伝承者、知里幸恵(1903~22年)がつづった「アイヌ神謡集」の中国語訳を刊行した。中国の少数民族の言語を守りたいと言語学を学ぶ馬さん。「民族の生活や言葉がなくなる悲しみを記した幸恵の思いを、母国につなぎたい」。全文の翻訳に取り組み、5年がかりで念願の出版にこぎつけた。
馬さんは中国河南省で生まれ、現地の大学の日本語学科を卒業後、日本企業の子会社で通訳として勤務。その中で、中国の少数言語が失われつつあることに強い危機感を感じ、アイヌ語を通じて少数言語を研究したいと2015年に来日し、北大大学院で言語学を学んでいる。
研究を進める中でアイヌ神謡集と出合い、アイヌ文化を守る決意をつづった幸恵の序文に強く共感した。故郷の少数言語の現状に通じるものを感じ、19年に翻訳を始めた。
馬さんは日本語で記された序文のほか、アイヌ語をローマ字で記した13編の物語を和訳からではなく、直接中国語に翻訳することに挑戦。・・・・・・
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