北海道新聞 2025年2月5日 10:48
イクパスイ(酒をささげる祭具)の収納の様子。劣化原因となる物質が発生しづらい中性紙の箱に入れ、収蔵庫内で保管している
16日まで開催中の収蔵資料展は、資料を巡る博物館の裏側がテーマです。収集する資料は形状や素材、構造、収集地などの情報や活用方法を含めた資料調書を基に、内外の委員による検討を経て受け入れが決まります。受け入れる資料は、その後、どのような過程を経て収蔵庫内で保管されるのでしょうか。今回は収集資料が収蔵庫へ収められるまでの様子を紹介します。
受け入れ資料は、そのまま収蔵庫内で保管することはできません。カビが発生しているものや多くの汚れが付着しているものなど、他の資料に悪影響を及ぼす要因を持つ資料も多いためです。
隔離部屋で一時保管を行い、はじめに状態診断を行います。目視による観察、内部や材質の科学分析など必要な調査で診断し、その結果を踏まえて以降の処置を検討します。
カビや害虫の被害が確認された資料は薬剤燻蒸(くんじょう)による殺菌と殺虫処理、虫害のみの場合は二酸化炭素や凍結環境を利用した殺虫処理を施し、クリーニングで汚れを除去して資料の状態を改善していくのです。
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<大江克己=国立アイヌ民族博物館研究員>