濃淡の差はあるにしても50年近くオーディオをやっていると、一流とされているブランドであってもどうしても「好き・嫌い」が出てくる。
つまり理屈抜きの「嗜好の世界」というわけだが、我が家の場合では体験も加味されて「これさえ使っていればこれ以上音が悪くなりようがない」という「安心と信頼」のブランドが「好き」にあたる。
スピーカーでいえば「グッドマン」「ワーフェデール」(いずれも後期の製品は除く)であり、デジタル機器関係では「dCS」であり、そして真空管でいえば「STC」(ロンドンウェスタン)になる。
いずれも「英国ブランド」というところに一本「筋」が通っていると思いませんかね(笑)。
このうち「STC」(Standard Trephones & Cables Ltd.)について取り上げてみよう。
繰り返すようだが絶対の信頼感を置いているブランドである。
そもそも「STCって何?」
平たく言えば日本の「NHK」みたいなもので、そのNHKが真空管を製造していたと思えばわかりやすい。
アメリカの「ウェスタン社」の技術が導入されているが、そのツクリの緻密さは本家本元を上回るとさえ言われている。
イギリス人とアメリカ人の性格の違いを想起させてくれる一例かもしれない(笑)。
我が家ではプリアンプとパワーアンプを10台以上使っているが、要所要所に「STC」を配置している。
まずは、3台のプリアンプのうち1台には「BRIMAR(工場名)=STC」の「12AX7」(2本)を使用し、もう1台には「13D9=12AT7」(2本)を使っている。
今のところ音質にまったく不満なし!(笑)。
次にパワーアンプ群に移ろう。
「WE300Bシングル」には整流管として「4274A」、「PX25シングル」には前段管として「3A/107B」、「6AR6シングル」には前段管として「ECC35=CV569=6SL7」、「171シングル」には整流管「80A」といった具合。
もちろん「球」によってはスペアを準備している。
さらに付け加えると、この「STC」はもともと通信用管としての性格を帯びているので耐久性を十分考慮されているのが特徴で、体験上これまでSTCの球の寿命が尽きたことは一度もない。あれだけ長時間使ってきたのにびくともしないのだから驚く。
とある古典管販売人から直接伺った話だが「そろそろ気分転換してSTCの球を交換したいのだが、いっさい故障しないので困ってしまう」というおかしな悲鳴を上げるお客さんがいたそう。
性能と耐久性の二つを兼ね備えた「鬼に金棒」の真空管ブランドといえようか。
我が家でも「STC」の球が(期待に)ハズレたことは一度もなく、恩恵を受けてきたこと甚だしい。
ただ一つ「STC」の球で後悔しているのは若年の頃に未熟なせいで十分に使いこなせないまま「4300B」(WE300Bに匹敵する出力管)を手放してしまったこと。
今でも思い出すたびに歯ぎしりするほど悔しい!(笑)
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どういう球かといえば、ずっと以前に「13D9」をオークションで購入したときの解説を再掲しよう。
「英国BRIMARの業務用高信頼電圧増幅双三極管13D9黒プレートの保存状態、程度の良い稀少な未使用新品ペア(2本)です(落札価格の設定は、ペア(2本)での設定です)。
管壁にBRIMARのロゴ、13D9、MADE IN ENGLAND、BVA、ロット等がシルク印刷されています。
この13D9は、一般的にあまり知られていませんが、1950~60年代に英国のBRIMAR(STC)の工場で、主に厳格な品質が求められる産業用途向けに生産され、英国ナンバーのECC81、CV4024、米国ナンバーの12AT7とは、同等規格の真空管としてそのまま差し替えて使用することができます。
通常のECC81等と比較して、プレート電圧が幾分(約10%程度)高耐圧に設計されており、本来、産業規格品ですが、オーディオ用途に使用した場合においても、高信頼管として優れた特性と音質を有する真空管として高い評価がされています。
この真空管は、私が趣味で約20年程前に自作アンプの保守用として複数本購入していたものですが、未使用品の手持ちが少し残っていますので、それを出品いたします。」
以上のとおりだが、音質に大きく影響する「μ(ミュー)=増幅度」の違いは規格表によると「12AX7」が100で、「12AT7」は60となっている。
そして、前述した「12AU7」はかなり低い17となっており、制御しやすくはなるけどちょっと切れ味が鈍くなる感じ。