「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

ビゼー作曲「アルルの女」考~前編~

2021年07月31日 | 音楽談義

好きなクラシック音楽を好きな音で聴きたい、その一心でオーディオに精を出しているわけだが、つい日常的に「王様=音楽」と「召使い=オーディオ」の関係が逆転してしまいがち。

つまり、どちらが主役だ?

それほどオーディオは面白いというわけだが(笑)、「初心を忘れないように」と、自戒の意味でときおり音楽記事を差しはさむように心がけている。

今回は思い出深いビゼー作曲「アルルの女」を俎上に載せてみよう。

今から50年ほど前の学生時代にオッテルロー(オランダ)指揮のレコード盤でよく聴いていた「アルルの女」。

この演奏がすっかり耳に馴染んでいるので、後年になってCD盤が欲しくなったがどんなに探しても見つからない。

そこで、やむなくマルケヴィッチ、クリュイタンス、オーマンディ、デュトワなどの指揮のものを購入してお茶を濁していた。

            

周知のとおり、この「アルルの女」は、南フランス・アルル地方で展開される悲恋物語で、「好きになった妖艶な女性が別の男性と駆け落ちすると知り、嫉妬に狂った若者が許嫁を残して飛び降り自殺をする」という衝撃的なラストで終わるストーリー。

南フランスの平和で牧歌的な雰囲気と若者の自殺という形で終わる悲劇のコントラストが音楽的に鮮やかに描かれ、「カルメン」と並んで作曲家ビゼーの代表的な戯曲となっている。

オッテルローの演奏はこの牧歌的、情熱的、情緒性などが実にうまく織り込まれて演奏されているところに特徴があって、感性が瑞々しい若い時分にレコード盤のジャケットの解説文を読みながら何度となく聴いただけに「好きになった女性のために死ねる程の情熱が人間にあるのか」
というショックが当時の初心(うぶ)な自分の胸に刻み込まれてロマンチックな思い出としてずっと記憶の片隅に残っている。

こういった思い出と音楽とが分かちがたく結び付いているため何度も繰り返すようだが結局このオッテルロー盤でなければ「アルルの女」はまるで聴いた気がしないという思いがずっと続いていた。

もちろん、これは演奏の良否は別として最初に聴いた演奏ということで「まっさらの白紙に原画として描きこまれて簡単に消せない」という”刷り込み現象”というべきものかもしれない。

いずれにしても、もうCD盤は手に入らないものと諦めていたところ、
何とオッテルロー指揮の「アルルの女」がオークションに出品されているのを発見した。

ケーゲル指揮の「アルルの女」(これも廃盤)の評判があまりにもいいために探していたところ偶然引っ掛かって網にかかったもの。

付属の説明文を読んでみると、フィリップス・レーベルがオランダ国内のみで発売するために制作した「Dutch Masters 」シリーズでのCDであり、既に廃盤のため現在では入手が絶望的とあった。もちろん
国内では販売されていない輸入盤である。

「やっと見つけたぞ!」と小躍りして喜び、「よし、絶対に手に入れてやる!」と決意を新たにしてさっそく入札に参加した。

長くなるので次回へ続く。



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