「おい、やっぱりタンノイにはツィーター(高域専用のユニット)がいるなあ。安くていいものがあったら買うから教えてくれ。」
つい先日、久しぶりにやって来た長兄(福岡在住)が言う。
20年ほど前に知人から譲ってもらったとかで国産の箱に38cm口径の同軸ユニットを容れたものを後生大事に愛用しているが、ときどき、高域の伸びに不満を感じることがあるそうだ。
ユニットは我が家の第二システムであるウェストミンスターの「HPD385」とたしか同じはずでその悩みはよく分かる。
これまで、我が家のHPD385もときどきツィーターを加えたりしたことがあるものの、当座はレンジが広くなって耳当たりがよくなるが、1週間もすると何だか不自然な響きで聴き疲れしてくるので結局、外してしまうということの繰り返し。
(ツィーターがJBLの「075」なので相性が悪いのかもしれないが。)
しかし、高域専用のアンプにPX25真空管アンプを使い出してから一切ツィーターが必要とは思わなくなった。
原因はアンプにあった!
同じような悩みを経験しているので「タンノイに安易にツィーターを付け加えるのは考え物だと思うよ~」と返答した。
ツィーターの扱い方は「駄耳」のせいもあっていまだに明快な解答が見出せないでいる。しかも周波数をカットするために使うコンデンサーの種類によっても音質が”さま変わり”する複雑な世界。
オイルやフィルムなどいろんな材質のものがあるが、最近、マイカ・コンデンサーの評判をよく聞く。
また、オーディオ仲間のMさんによると、システムを聴いていて高域の伸びが物足りず、ツィーターが欲しくなるときはむしろ中域の「立ち上がり」に原因がある場合が多いとの説もある。
こういうときにツィーターを加えると無駄遣いになるし、その上、収まりがつかなくなって果てしない泥沼に陥るという。
これも充分、頷ける話。
たしか長兄の使用中のアンプは、自分が以前使っていて譲ってあげたサンスイのトランジスターアンプ(AUー707)のはず。
「ツィーターを付け加えるよりもむしろアンプに原因がある。アンプを2台使って、低域用にサンスイを使い、安物でいいから真空管アンプを購入して高域専用に使うと、この悩みは見事に解決すると思うよ。」
とはいえ、ことはそう簡単には運ばない。
以下ちょっと専門的な話になるが。
タンノイは低域ユニットと高域ユニットが1000ヘルツ前後でクロスしているのでそれなりのネットワークを作らなければならない。
まずSPボックスの裏蓋を開けて、低域用ユニットと高域用ユニットの線を区分し、前者にはコイルを挿入し、後者にはコンデンサーを挿入してうまい具合に1000ヘルツ前後でクロスさせなければいけない。
そのやり方もこれまでの経験では低域の上限を肩落ち12dbにして、高域の下限は肩落ち6dbでやるとうまくいく。
こういうときにコイルとコンデンサーのストックがものをいう。
この話をしたところ、長兄は「タンノイの裏蓋を開けてネットワークをいじるなんてとんでもない、メーカーのオリジナルが一番いいに決まってる」と強引に言い張る。
それに「オーディオにお金を突っ込むのはもったいないし、最小限にとどめたい」という現実派なので、どうも話がうまくかみ合わない。
やはり「縁なき衆生」である。
総じてタンノイの愛好家は「改造」という冒険を好まない保守派が圧倒的に多いが、タンノイといえども営利企業には間違いない。
いろんなところでコスト面での妥協をしているはずでそれが端的に現われているのがオリジナルのネットワーク。
これはずっと以前から「問題あり」と秘かに思っているが、自分の知っている範囲で改造している方は皆無である。
本人さえ良ければそれでいいのだが、もし音質に不満があって手放される方があれば、念のためネットワークをいじってみたりアンプの2台使用とかを試してみるといいと思うのだが。