つい先日のブログでも触れたとおり、安価な投資で大きな効果を上げるのが「オーディオの楽しみ」の一つ。
取り分け、誰もが参加できるオークションには安値で掘り出し物を見つけたり、市場に出回りにくい稀少品を発掘したりする愉しみがあり、これもネット社会の産物として大いに感謝している。
振り返ってみるともう10年以上もコツコツと利用していて、評価のほうも「良い評価206件」、「悪い評価1件」という状況だが、途中で「パスワード」を取り替えたりしたので実際の取引は300件を越えているはず。
そのうち大半が真空管の取引で、したがって現在、手元にある真空管もほとんどがオークションで手に入れたもの。
その重宝してきたオークションも最近はどうも妙味が薄れてきているというのが実感。
昔は随分と”おおらか”だった。稀少真空管を驚くような低価格で落札できた。
たとえば、およそ60年前に生産されたテスラの真空管で新品だったRD27AS(PX25)。
あえて値段を言うと、たしかペアで75,000円だったが、初めはやたらに音が硬かったもののエージングが済んで2ヶ月ほど経った頃から絶妙の音色を奏で始めた。
繊細な表現力が特徴とされるPX25の場合、独特の色彩感を持つテスラの音楽的表現力はGECやオスラムの銘柄を凌ぐと評価されているが、まさにそれを実感している。
つい先日も、湯布院のAさんとPX25真空管の聴き比べをしたところ微妙な音色の肌合いなどで圧倒的にテスラに軍配が上がった。今となっては大変なお買得品だった。
ほかにも当時はマルコーニの整流管などの古典菅を楽々と(入札)競争無しで、出品価格のまま落札できたものだったが、近年は”鵜の目鷹の目”といった感じで、まず掘り出し物が出てきても、あっという間に入札価格が跳ね上がる。
また別に悪いことではないが、出品時からず~っと音無しの構えで、油断(?)させておいて「落札直前」になってドタバタする例も枚挙にいとまがない。まさに「生き馬の目を抜く世界」。
それに入札者のみならず、出品者のほうも世知辛くなっている。
最近購入する真空管にはどうも雑音がするなどの故障が多い。ノークレーム、ノーリターンが条件とはいえ、真空管の場合、初動時の故障は返品がきくが、それにしてもという感じ。
先日もテレフンケンの電圧増幅管(ミニュチュア管ペア)を購入したものの、うち1本から雑音がしたので返品、残る1本だけの代金で処理したものの1ヵ月後ぐらいからこれも雑音が出だして結局使い物にならなかった。
中には”れっき”とした販売店から購入したものでも初めから雑音がする真空管もあった。この販売店はオークションの説明文に、全ての真空管は「エージング済みです」と記載しており、信頼して購入したのにこの有様。
クレームをつけるとあっさり交換してくれたが、何だか日常茶飯事みたいな調子で「エージング済み」という触れ込みもまったく当てにならない印象を受けた。
なお、この球は真空管の足が金メッキタイプの近代菅で値段も高価だったが、音質は凡庸そのものだった。
もう近代管は”こりごり”でやはり真空管は1960年代以前のものが無難のようだ。
しかし、出品者や入札者の責任ではなく、まったく自分の勘違いによるものもある。
たとえば4月15日に落札したマラードの真空管。
1本500円で出品されたものの誰も入札者が無くて、そのまま落札期日を迎えた。
イギリスの名門マラードの真空管が1本500円だなんて信じられないが、「たまにはこういう掘り出し物もある」、”しめしめ”と落札。
出品者と連絡がつき、6本購入して振り込みも無事完了。自宅に届いた真空管の元箱を見てビックリ。
「ECC81」(12AT7)を購入したつもりが、何と「EBC81」だった!
1字違い、それもBとCはよく似てる。そもそも「EBC」なんて型番の真空管があるなんて夢想だにしなかった。
こういう球は使いようが無いので引き取り手を捜したところ、無事に”とあるところ”にもらわれていったので”メデタシ、メデタシ”。
とにかく目も悪くなったし、カンも悪くなったしでオークションは段々「鬼門」になりつつあるところ。
同じ別府市内でクルマで15分ほどの距離にあり、膨大な真空管のコレクションを誇るMさんによると、「オークションなんて、どうせ要らないものが出されるんだから”いい物”は滅多に出ないよ」という言葉が実感として響いてくる今日この頃。
これからは、少々高価でもこれぞと思う真空管を保証付きで購入することにしようかな~。
このほうが結局は「安上がり」につくようである。